■マーケティングのニーズ志向とは何か? シーズ志向とは何か?

「お客様のニーズを聞いてこい」

営業の世界では、使い古された表現だ。いまだに上司が部下に対して、このように檄を飛ばすことはあるだろう。しかし上司に「ニーズを聞いてこい」と言われて、

「ニーズはありますか?」

とお客様のところへ伺う部下はいない。「ニーズはあるか」と聞いて「ニーズはある」と答えるお客様は皆無だし、もしニーズがあるならすでにこの部下はわかっているはずだからだ。

だから営業はお客様の問題発見に努めなければならなくなった。お客様に気づきを誘発し、

「ああ、そうそう。当社にもそういうものが必要だ」

と言っていただくことだ。

しかし、それが営業パーソン個人のスキルで可能だろうか。お客様の「あるべき姿」と「現状」を理解していただき、その差分である問題に意識を向けさせる。お客様が心を許している営業であれば、辛抱強く付き合ってくれるかもしれない。しかしそうでなければ、営業パーソン個人のヒアリングテクニックでお客様の問題を顕在化させるのは簡単ではない。

■なぜ時代はシーズ志向へ?

マーケティング用語で「ニーズ志向」と「シーズ志向」という言葉がある。ニーズ志向は、お客様のニーズに従って商品開発すること。自社の技術やアイデアをもとに商品開発することは、シーズ志向と呼ぶ。

シーズ志向の代表例はiPhoneだ。iPhoneやiPadは消費者視点に立って開発されたのではなく、スティーブ・ジョブズが持つ独創的なアイデアによって創造されたデバイスだ。

シーズ(seeds)とは「種」であり、企業が持つ技術やアイデアのことを指す。では、そのような「種」のない企業はシーズ志向には向かないのか。

私はもっと広義なシーズ志向があってもいいと考えている。たとえば私が23年前から関わっているSFA/CRMのソリューションはもう新しい技術ではない。独創的なソリューションでもない。しかし、いまだに正しく理解できている経営者、営業マネジャーは少ない。

多くの企業は「営業の生産性を上げたい」というニーズを抱えている。しかしそれをSFA/CRMで実現したいと、どれぐらいの企業が考えているだろうか。

「SFA/CRMの存在は知っているが、当社の文化には合わない」

「昔、導入したことがあるが、失敗に終わった」

などと言って後ろ向きになっている営業組織も多いだろう。ということは、そういった企業にSFA/CRMのニーズはあるかというと、ないのである。いっぽうで、iPhoneのように商材そのもののアイデアではなく、気づきを誘発させるコンテンツを用意し、そこに独創性を持たせたらどうか。

「SFAを導入して営業の生産性をアップさせたい。このようなニーズはございますか?」

と質問しても、決して「ある」とは言わないお客様が、

「今までSFAを勘違いしていたようだ。たしかに、当社の問題はSFAをうまく活用することで解決できる」

と言うようになったらどうか。

その手法の一つがコンテンツマーケティングなのである。コンテンツマーケティングとは、お客様にとって価値ある情報を発信し、お客様の気付きを誘発し、ファン化し、購買へと繋げるマーケティング手法である。企業が伝えたいことではなく、お客様が「価値がある」と認識される情報を発信することに重点が置かれる。

※参考情報

Content Marketing Instituteでは、コンテンツマーケティングを以下のように定義している。

コンテンツマーケティングは、価値、関連性、一貫性のあるコンテンツを作成して配信することに重点を置いた戦略的マーケティングアプローチ。明確に定義されたユーザーを引きつけて維持し、最終的には収益性の高い顧客行動を促進する手法。

現在は、TwitterやYouTubeといった各種SNS、ブログ、WEBサイト、ホワイトペーパー、メルマガやウェビナーといった、コンテンツを発信するツール、プラットフォームが存在している。

デジタル化が進んだことや新型コロナウイルスの影響もあって、近年コンテンツマーケティングは大きく普及した。成果を上げている企業も増えている。人々の価値観が多様化し、商談プロセスも以前と比べて長期化するようになった現代、企業が営業活動をしていくうえで、いまや不可欠なマーケティング活動になったと言っても過言ではない。

そのコンテンツマーケティングを営業の視点で理解してもらいたい。そのために今回は「OATHの法則」など、いくつかのフレームワークや型を使いながら解説しよう。

※今回は、7500字を超える大作記事である。企業でも個人でも、現代のマーケティングを考えるうえで不可欠な知識だ。ぜひ最後まで読んでもらいたい。

<目次>

1.ニーズ志向とは何か? シーズ志向とは何か?

2.なぜ時代はシーズ志向へ?

3.問題意識の醸成プロセス「OATHの法則」とは?

4.お客様の「意識ステータス」を分解する

5.「OATHの法則」に沿ったコンテンツの作り方

6.メディアの種類を考察する

7.カスタマージャーニーと導線設計

8.SNSなのかnoteなのか? メディアは何を選んだらいいのか

9.ストック型とフロー型のメディアとは?

10.オープン型とクローズ型のメディアとは?

11.メディア(SNSやnote、ホワイトペーパー)の組合せ方

■問題意識の醸成プロセス「OATHの法則」とは?

OATHの法則とは、マイケル・フォーティンが提唱した、お客様の問題意識レベルのこと。商談のステータス管理をする営業は多いが、お客様個人の「意識ステータス」を管理できている人は、そう多くないだろう。B2Cのみならず、B2B営業でも重要な概念である。

それぞれ4つの意識レベルについて簡単に解説していく。