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この一杯が日本のラーメンを変えた! 原点にして史上最強の豚骨ラーメンとは?

山路力也フードジャーナリスト
『博多一風堂1994』(新横浜)で提供されている「原点のラーメン」。

ラーメンの常識を変えた『博多一風堂』

福岡大名の路地裏に佇む『博多一風堂 大名本店』。
福岡大名の路地裏に佇む『博多一風堂 大名本店』。

 1985年、福岡大名の路地裏に小さなラーメン店が出来た。店の名前は『博多一風堂』(本店:福岡県福岡市中央区大名1-13-14)。現在では国内約150店舗、海外を合わせると約300店舗を展開する人気ラーメン店となっている。

 かつてラーメン店はどこか薄汚くて、女性一人では入れないような雰囲気の場所だった。また博多ラーメンは臭くて油っぽくクセがあるラーメンだった。しかし、一風堂の登場によってそのすべてはアップデートされた。

 木の質感を生かした清潔感のある店内。ジャズも流れるお洒落な雰囲気。物腰柔らかで丁寧な接客。臭みがなく油よりも骨の質感を重視した豚骨ラーメン。今までになかったラーメン店として、一風堂は瞬く間に大人気店となった。

一風堂の登場によってラーメン店のイメージは一新された。
一風堂の登場によってラーメン店のイメージは一新された。

 さらに1994年には『新横浜ラーメン博物館』(神奈川県横浜市港北区新横浜2-14-21)開業と共に出店し、一風堂と博多ラーメンの知名度は一気に全国区へ。日本国内の展開を進める中で海外にもいち早く進出し、世界にラーメン文化を広めて後進の道を拓いた。

 「おしゃれ」「カッコイイ」「スタイリッシュ」「クール」。一風堂の登場によってラーメン店のイメージは一新された。さらに日本を代表する料理として世界が熱狂した。一風堂は常にラーメン界をリードし続けているトップランナーなのだ。

23年振りに新横浜ラーメン博物館へ凱旋出店

『博多一風堂』が再びラーメン博物館へ帰ってきた。
『博多一風堂』が再びラーメン博物館へ帰ってきた。

 そんな一風堂が2月9日より『新横浜ラーメン博物館』に期間限定(5月12日まで)で凱旋出店している。1994年に開業した新横浜ラーメン博物館は、今年創業30周年を迎える。その記念企画として、これまでラーメン博物館に出店して来た店が入れ替わりで期間限定出店するプロジェクト「あの銘店をもう一度」を展開中。これまで多くのラーメン店が再びラーメン博物館に帰ってきた。

 そして1994年のラーメン博物館開業時から2001年まで、7年の間出店していた一風堂も『博多一風堂 1994』として23年振りにラーメン博物館に暖簾を掲げた。5月まで3ヶ月の出店期間中は、創業者の河原成美さん自らほぼ毎日厨房に立つのだという。なぜ河原さんは再びラーメン博物館の厨房に立つと決めたのだろうか。

ラーメン業界を牽引し続けている『博多一風堂』創業者の河原成美さん。
ラーメン業界を牽引し続けている『博多一風堂』創業者の河原成美さん。

 「コロナ禍で世の中の価値観が変わって、自分自身も色々と考え方が変わったんだよ。もう一度ラーメン屋としての原点に立ち返ろうと、『第二の創業の地』でもあるこのラーメン博物館の厨房に立つことを決めた。僕がここに出店したのは今から30年前、41歳の時なんだけど、71歳になった自分がどう考えてどう感じるのか、今一度自分としっかり向き合いたいなと思ってね。

 30年って月日は大きいよ。まだまだ若い人たちには負ける気がしないけれど、30年前には軽々と駆け上がっていたラーメン博物館の階段も今は辛くてさ(笑)。体力はもちろんだけど気力もね。知らないうちに色んな錆とかガラクタがこびりついているのよ。そういうのをすべて取り払って、あの頃の感性を再び甦らせたいなと思って、またこの場所に戻って来たんだ」(博多一風堂 創業者 河原成美さん)

ここでしか食べられない「原点のラーメン」とは

新横浜ラーメン博物館出店当時、1994年の味をブラッシュアップした「原点のラーメン」。
新横浜ラーメン博物館出店当時、1994年の味をブラッシュアップした「原点のラーメン」。

 一風堂と言えば「白丸元味」「赤丸新味」の2つのラーメンが看板メニューだが、今回の凱旋出店では新横浜ラーメン博物館出店当時、1994年の味をブラッシュアップしたラーメンが提供される。博多ラーメンに馴染みがなかった当時の横浜で衝撃を与えた一杯、その名も「原点のラーメン」だ。

 良質な豚頭骨だけを使用してラーメン博物館の厨房でじっくり丁寧に炊いた、フレッシュな豚骨スープが圧倒的な存在感。豚骨のまろやかなコクと深い骨味が口いっぱいに広がるスープは、30年前のラーメンとは思えないほど今の時代に味わっても実に革新的だ。

 「基本的なレシピや作り方は当時のままで。一風堂を始めた頃の福岡の豚骨ラーメンって、ベースのスープはどこも薄くて軽かったんだよ。濃厚にするにはラードを足したりして、スープそのものが濃いラーメンってなかった。だから豚骨をじっくり炊いて詰めていって、スープ自体が濃厚なものを作ったんだ。どこにもない、どこの真似でもないラーメン屋を作りたかったからね」(河原さん)

原点であり最先端の一風堂が味わえる

期間中は毎日厨房に立つ(一部日程を除く)という河原さん。
期間中は毎日厨房に立つ(一部日程を除く)という河原さん。

 たとえレシピが同じであっても、39年ラーメンを作り続けてきた一風堂が蓄積した経験と技術が重なることによって、当時のラーメンよりも美味しくなっていくのは当然のことだ。変わらないために変わり続ける。ラーメン博物館でしか食べられない「原点のラーメン」は、一風堂の原点の味であると同時に、最新かつ最先端の一風堂になっているのだ。

 「一風堂のラーメンもたくさんの人に食べて貰えるようになって、時代によって味も変えていっている。でも『全ての始まりは一人のお客様と一杯のラーメンから』という思いは変わらない。今はスープを残す時代になった気がするけれど、美味しいスープはやっぱり飲み干したくなるよね。もちろん今のラーメンも美味しいけれど、今回のラーメンはそんな一杯になっているんじゃないかな」(河原さん)

 3ヶ月の出店期間中には、この「原点のラーメン」以外にも一風堂の歴史の中で出されてきた限定ラーメンの数々や、独立した店主とのコラボレーションラーメンなど、スペシャルなラーメンも次々と登場するという。食べ損なうことのないように、そして河原さんに会いに何度も新横浜ラーメン博物館に足を運んで欲しい。

※写真は筆者によるものです。

【参考記事:新横浜ラーメン博物館 ニュースリリース(2024年2月5日)
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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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