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飲食店ばかり優遇されている? 飲食店にだけ協力金が払われる理由とは

山路力也フードジャーナリスト
広島、山口、沖縄の飲食店には時短営業要請が出されている。(写真:アフロ)

「まん防」適用に伴い飲食店に協力金が

 年が明けてから急激に増加している、新型コロナウイルス感染者数。全国各地で過去最大の感染者数が出ており、沖縄県、山口県、広島県の3県の特定の地域を対象に、1月9日から31日まで「まん延防止等重点措置(まん防)」が適用されている。この「まん防」は、2021年2月に成立した新型コロナ対策の改正特別措置法で新設されたもので、適用は2021年9月の解除以来となる。

 「まん防」適用となる自治体の知事は、飲食店など措置を講ずる必要がある業態に属する事業者に対し、営業時間の短縮などを要請することが出来る。また、事業者が要請に応じない場合は命令することも可能だ。正当な理由なく命令に応じない事業者や、立ち入り検査などを拒否した事業者に対し、罰則として20万円以下の過料が科される。

 今回、3県の飲食店などに営業時間の短縮や酒類提供の休止を要請。その要請に応じた店に対しては一定の「協力金」が支払われることになっている。「まん防」の適用地域で各自治体が制限をかける場合、認証店は酒類提供の禁止はないが、営業時間は午後9時まで、非認証店は酒類提供は禁止となり、営業時間は午後8時までを基本に、各自治体が判断する。臨時交付金の要綱では、午後9時までには1日2万5千~7万5千円、午後8時までは3万~10万円を支払うことが出来る。

 今回の「協力金」に対して、様々な意見が飛び交っている。認証店に支払われる協力金よりも非認証店に支払われる額の方が高くなることについては、国が改善して是正する動きになっているが、「飲食店ばかりが優遇されている」という批判が止まない。「飲食店に卸している酒販業者や食材業者への補償がない」「飲食店に限らず売上が下がっている業種は多い」などが主たる論旨だが、その指摘は正しいのだろうか。

あくまでも「補償金」ではなく「協力金」

苦しいのは飲食店だけではないのは事実だ。
苦しいのは飲食店だけではないのは事実だ。写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

 今回、飲食店に支払われるのは「まん防」によって、各自治体が飲食店に対して営業時間の短縮や酒類提供の禁止など、一定の制限を要請したことを受けての「協力金」である。自治体からの要請に協力する形で、本来出来るはずの経済活動、営業活動を自粛したことに対しての「協力金」なのだ。コロナ禍によって客足が減り、売り上げが落ちたことに対しての「補償金」「給付金」ではない。

 コロナ禍によって経済活動が停滞し、売り上げなどが下がっている業種は飲食業に限らないのは事実である。飲食店に食材などを卸している酒販業者や食材業者、生産者も売り上げは激減している。しかし、それらの業者に対して自治体が何かしらの要請を出して、それに従っているわけではない。飲食店に「協力金」が支払われているのは、通常の営業活動を制限させられた上で行政からの要請に応じているからだ。

 外出自粛などが喧伝される中で、人々の行動が変わって飲食店の売り上げは減っている。通常の売り上げよりも多くの「協力金」を得たり、実質的には売り上げ補填となっているケースがあるのも事実だが、営業時間の短縮や酒類提供の禁止に従うよりも、通常営業したいという飲食店も少なくない。

「補助金」「助成金」は業種を問わず用意されている

 売り上げ減少に対しての補助という点においては、「緊急事態措置」や「まん防」に伴う飲食店の休業・時短営業又は外出自粛等の影響を受けて、売上が50%以上減少した中小法人や個人事業者に対して、月次支援金や一時支援金の制度がある。これには飲食店だけではなく、小売店やサービス業、医療事業者や旅行事業者、娯楽施設事業者なども含まれ、さらにそれらの業者と取引のある仕入れ業者や関連業者などあらゆる業種が含まれている(参考資料:経済産業省・中小企業庁ホームページ)。

 さらに、業態転換などの事業再構築をする場合には「事業再構築補助金」が、新たなビジネスモデルを模索すべく試作品を開発したり、生産プロセスの改善を行うための設備投資については「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」が、テレワークや非接触サービスなどを導入する場合は「IT導入補助金」など、様々な補助金が業種を問わず用意されている。

 さらに、労働者の雇用維持についても「雇用調整助成金」や「産業雇用安定助成金」などがあり、個人に対しても「子育て世帯への臨時特別給付」や「住居確保給付金」「学生支援緊急給付金」など、様々な支援制度がある。

 なにも飲食店ばかりが優遇されているわけではない。「補助金」や「助成金」「給付金」は業種を問わず様々な人たちに用意されている。繰り返すが、飲食店に支払われる「協力金」は、要請に協力して通常の営業活動を制限させられているからなのだ。

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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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