コロナ禍で打撃を受けている居酒屋業界

サラリーマンの聖地、新橋でも勝ち組と負け組が明確に分かれている。
サラリーマンの聖地、新橋でも勝ち組と負け組が明確に分かれている。

 新型コロナウイルス感染症の大流行による経済への打撃が続いている。10月に「緊急事態宣言」が全面解除となり、全国的にも小康状態が続いていた新型コロナ感染者数であったが、新たに発見された変異株「オミクロン株」が日本にも上陸し、政府は水際対策を徹底強化するなど、いまだ予断を許せない状況であることは変わりがない。

 昨年から続く感染防止策の大半は「行動制限」である。各地方自治体は「緊急事態宣言」「まん延防止等重点措置」などを発出し、それを根拠に不要不急の外出や夜遅い時間の外出を自粛するように要請。それに伴い飲食店や物販店などへも営業時間の短縮や酒類販売の停止などの協力を求めた。一定の基準を満たした飲食店には「協力金」が拠出されたものの、薄利多売の利益構造である飲食業にとっては「焼け石に水」という店も少なくない。

 飲食業の中でも居酒屋やバーなど、夜の営業で酒を提供する業態の苦戦が顕著だ。断続的に続いた行動制限によって、人々のライフスタイルは明らかに変化した。夜遅くまで出歩く人も減り、酒を飲む場所は居酒屋から自宅に変わった。大手居酒屋チェーンはいち早く焼肉店や食堂などに業態転換し、「脱居酒屋」の戦略へと移行している(関連記事:コロナだけではない? 居酒屋業態が苦境に喘ぐ理由とは)。

 そんな中、逆風を嘲笑うかのごとく連日満席となっている居酒屋も存在する。飲み屋街に繰り出せば、閑古鳥が鳴いている店がある一方で、入店待ちで行列が出来ている店もある。外に飲みに出ている人が少なくなっているのだから、今までよりも少ない客の取り合いになるのは必然。結果として「勝ち組」と「負け組」が明確に分かれてしまっているのだ。

新橋で見た居酒屋が大人気の理由

「手作り」「速い」「安い」「美味い」当たり前のことを当たり前にやっている店が強い。
「手作り」「速い」「安い」「美味い」当たり前のことを当たり前にやっている店が強い。

 サラリーマンの聖地、新橋には多くの居酒屋が軒を連ねる。小雨の降る12月の平日夜8時過ぎに、烏森口に広がる飲み屋街へと足を運んでみた。コロナ禍によって閉店してしまい、シャッターが降りたままの店もあるが、煌々と明かりを灯して営業をしている店が多い。

 この時間帯は緊急事態宣言下では営業を終えていた時間だが、本来ならば二軒目のはしご酒が始まるタイミング。コロナ前であればかなりの人が出ていた時間だが、時短営業要請も終わった今でも道を歩いている人は少なく、呼び込みをしている店員の方が多いほどだ。

 客が全く入っていない店が数多くある中で、店の前に入店待ちの人がいる人気店があった。15分ほど外で待って中に入ると、店内は満席で相席となった。狭い店内ではあるが、通常設置されている立ち飲みスペースは休止され、相席の隣客との間には大きなアクリル板のパーテーションが設置されている。また、定期的に換気も成されていた。

 この地に創業して半世紀近く。家族で営む老舗居酒屋のウリは、数多いメニューの全てが手作りで、調理や提供も素早く、価格もすべて一品300円と安価なこと。さらに「ハムカツ」など誰もが頼む名物があり、どのメニューも美味しい。「手作り」「速い」「安い」「美味い」と、ある意味で当たり前のことを当たり前にやれているところが強みだ。

「選ばれる理由」がある居酒屋だけが生き残る

浅草の通称「ホッピー通り」でも、満席の店とそうでない店がある。
浅草の通称「ホッピー通り」でも、満席の店とそうでない店がある。

 観光客も多く訪れる浅草は、コロナ禍によってダメージを受けた街の一つだ。インバウンド(訪日外国人観光)需要の激減と、観光や飲食自粛による国内需要の減少のダブルパンチ。浅草や上野がある台東区を訪れた外国人観光客は、2018年には953万人いたが、2020年は145万人まで減少。しかもその大半は4月より前の実績で、コロナ禍に突入してからは限りなくゼロに近い状態が続いていた。

 しかしながら、2021年10月以降には国内の観光客も戻りつつあり、修学旅行などで訪れる学生も増えている。11月末の金曜12時頃に浅草を訪ねてみたが、浅草寺雷門周辺や仲見世などはコロナ禍前と変わらぬ賑わいをみせており、老舗の和菓子店や食べ歩き出来るスイーツ店などの前には行列も出来ていた。レンタル着物を借りて街を歩いたり、人力車に乗る観光客の姿も多数見られた。

 浅草寺境内の西側にある「公園本通り」は別名「ホッピー通り」「煮込み通り」とも呼ばれ、昭和から続く懐かしい風情の居酒屋が軒を連ねている、地元住民や観光客で賑わう飲み屋街だ。一時期は客足が激減したこの通りも客足が戻りつつあり、この日も金曜とは言え昼間から酒を酌み交わす人たちが多かった。

 通りの名前の通り、どの店にもホッピーがあり、煮込みがありと、メニューにそれほど大差はない。しかしながら、呼び込みに躍起になっている店がある一方で、一切呼び込みなどはしなくても、次から次へと客が吸い込まれていく人気店もある。明らかに勝ち負けが分かれているのだ。

この店でなければ食べられない味がある。そういう店が生き残っていく。
この店でなければ食べられない味がある。そういう店が生き残っていく。

 「勝ち組」の一軒は、ホッピー通りで一番歴史のある老舗。創業以来継ぎ足されているタレによる「牛煮込み」が看板メニュー。お昼のオープン前から店が開くのを待っている客がいるほど。もう一軒も半世紀近く続く老舗で、唯一樽生のホッピーが楽しめるほか、韓国風の煮込みや炒め物を楽しむことが出来る。他の店は客がいない中で、この二軒は12時の時点で満席状態。同じような業態が並んでいる中でも、やはり選ばれる店には何かしらの特徴があるのだ。

 時代が変わり消費行動が変わった今の時代、当然のことながらニーズのない業態や店は淘汰されていく。人々のお酒を飲む量や機会が減る中で居酒屋が生き残るためには、その店でなければ飲めないお酒や食べられないメニューがあったり、どこよりもホスピタリティに長けた接客があったりと、何かしら「選ばれる理由」がある居酒屋でなければならない。コロナ禍によって居酒屋業界も弱肉強食の時代へと突入したことを目の当たりにした。

※写真は筆者によるものです。

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