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新NISAに影響は? SBIと三井住友「クレカ積立」ポイント改定へ

山口健太ITジャーナリスト
クレカ積立のポイント付与率が改定(筆者撮影)

SBI証券で人気を博している「クレカ積立」は、上限額を3月23日から引き上げるとともに、ポイント還元についても見直しを発表しました。

新しい制度では、カードの利用額によって付与率が変わる仕組みが注目されています。どのような狙いがあるのか、運営会社に聞いてみました。

付与率は一部引き下げ、もらえるポイントは増える場合も

投資信託の積み立てで人気の高いクレジットカード決済では、これまで多くの証券会社では毎月の上限が5万円だったところ、3月8日の内閣府令の改正により10万円への引き上げが実現。新NISAの「つみたて投資枠」をフルに活用できるようになりました。

問題はポイント還元です。多くの証券会社は月5万円の上限を前提にサービスを設計していたとみられることから、月10万円化にあたって条件を見直すか、それとも継続するか、各社の判断が分かれる結果になりました。

SBI証券の場合、いち早く10万円化への対応を表明したものの、ポイント還元の詳細を発表したのは3月22日です。発表が遅れた理由としては、クレカ積立で提携する7社のカード会社との調整に時間を要したためとしています。

その中でも人気とみられるのが三井住友カードです。特に「プラチナプリファード」や「Oliveフレキシブルペイ プラチナプリファード」では、投信積立としては異例の5%還元を実現しており、業界でも注目の存在となっていました。

年会費は3万3000円と安くはないものの、毎月5万円を積み立てると年間3万ポイントを獲得できるため、ほぼ元が取れてしまう計算になります。三井住友カードとSBI証券の戦略的な取り組みとみられていましたが、これが改定されることになりました。

2024年10月買付分までのキャンペーンでは、プラチナプリファードで5%還元などこれまで通りの付与率が続くものの、11月買付分以降はクレジットカードの利用額に応じて付与率が変動する仕組みになっています。

10月買付分までのキャンペーン。最大5%還元が続く(三井住友カードのプレスリリースより)
10月買付分までのキャンペーン。最大5%還元が続く(三井住友カードのプレスリリースより)

11月買付分からはカード利用額に応じた付与率となる(三井住友カードのプレスリリース)
11月買付分からはカード利用額に応じた付与率となる(三井住友カードのプレスリリース)

特にプラチナプリファードでは、年間500万円以上を利用した場合でも3%となり、300万円未満の利用では1%に下がってしまいます。その他のカードでは、投信積立を除くカード利用が年間10万円未満の場合、「0%」(ポイント付与なし)になるといいます。

なぜこのような変更をするに至ったのか、三井住友カードの広報は「資産運用サービスとクレジットカードのどちらもご利用いただき、その収益の一部をクレジットカードおよび資産運用サービスのレベルアップという形でお客さまに還元していきたい」と説明しています。

SBI証券の広報からも同様のコメントがありました。「証券投資サービスのみではなく、クレジットカードサービスもきちんとご利用いただき、消費と投資の好循環を実現することを期待している。得られた収益で、お客さまに今後もより利得性の高いサービスを提供したい」としています。

プラチナプリファードについても、デメリットばかりではなさそうです。獲得できるポイントがこれまでよりも増えるケースとして、年間500万円以上を利用する人なら、月10万円の投信積立に対して最大3万6000ポイントを得られることをSBI証券は強調しています。

利用額が少ない人の場合、投信積立で獲得できるポイントが減ることはたしかです。今後も継続するかどうかは、特約店や海外利用などプラチナプリファード本来の特典とあわせて検討することになりそうです。

なお、楽天プレミアムカードの場合は大幅な特典変更に際して年会費の返金に応じたことがありました。この点について三井住友カードに確認したものの、「現時点で返金の対応を実施する予定はない」としています。

今回の発表直前にプラチナプリファードを契約した人が損することにならないか気になるところですが、10月買付分までのキャンペーンでは条件なしの5%還元で最大3万ポイントを獲得できることから、これを活用できれば大きく損をすることはなさそうです。

一方、同じ三井住友カードでも「ゴールド(NL)」の利用者からは、新しい制度がおおむね好評のようです。もともとこのカードは、投信積立などを除いて年間100万円以上を利用することで、年会費の永年無料や追加のポイントを得られる特典がありました。

この100万円の条件を満たせる場合、11月以降の投信積立でも月10万円の上限まで1%がフルに還元され、年間1万2000ポイントを得られることになります。他社の場合、auカブコム証券が年会費無料のau PAYカードで同じ1%還元を提供しており、突出しておトクというわけではないものの、ゴールドNLの利用者にとっては朗報といえそうです。

SBI証券、Oliveの勢いはどうなる?

新NISAの開始後、相場は上昇傾向にあることもあり、多くの人はカード決済で得られるポイントの何倍にも相当する含み益を得ているのではないでしょうか。

ただ、投資の入り口としてポイントが果たす役割は依然として大きなものがあります。また、もし相場が下落する状況になった場合、確実にもらえるポイントのありがたみが増してくることも予想されます。

SBI証券はNISA口座数で楽天証券を猛追しており、SBI証券と組んだ三井住友銀行のOliveも1年で200万口座を獲得するなど好調に見えるものの、2025年以降を見据えて、今回のポイント改定がどう影響してくるか気になるところです。

追記:
SBI証券によれば、三井住友カードを利用したクレカ積立の設定金額が3月28日に約578億円に達したとのこと。3月21日には約480億円だったとのことから、3月23日から設定可能になった上限10万円化の影響と考えられます。また、上限の10万円に設定している人は約15%を占めるとしています。

https://search.sbisec.co.jp/v2/popwin/info/home/irpress/prestory240329_011600.pdf

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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