NISA口座数が急増 SBI証券が楽天証券を猛追へ
1月に始まった新NISAにあわせて金融機関が口座獲得を競い合う中、SBI証券の伸びが目立っています。
これまでNISA口座数では楽天証券がトップを維持してきたものの、SBI証券との差は徐々に埋まりつつあります。何が起きているのでしょうか。
SBI証券のNISA口座数が急増
国内の証券会社における総合口座数としては、楽天証券が単体の会社として1位、SBI証券はグループ全体で1位をうたっており、「2強」といえる状態が続いています。
一方、NISA口座数については楽天証券が1位の状態が続いてきましたが、ここ最近はSBI証券が追い上げてきており、特に2024年1月に大きな動きがありました。
SBI証券の発表によれば、2024年1月にはNISA口座数として過去最高となる44.6万件の開設があったとのこと。これは新NISA開始前の駆け込み需要があった10〜12月の3か月間の合計(36万件)を上回る数字です。
楽天証券とSBI証券のNISA口座数の推移を見ていくと、約1年前の2022年12月末には94万件の差があったのに対し、2024年1月末には41万件にまで縮まっていることが分かります。
興味深い点として、SBI証券には他社からNISA口座を移管する人が急増しており、その約半数を楽天証券からの移管が占めているとのこと。2023年10〜12月には48.9%が楽天証券からの移管だったとしています。
背景として、SBI証券は新NISAに関するクイズに答えると現金2000円がもらえるキャンペーンの存在を挙げており、すでにSBI証券に総合口座を持っている人でも他社からNISA口座を移管すれば対象になることが好評を博したようです。
SBI証券の広報によれば、2024年1月に起きた急増についても、楽天証券からの移管が最も多い割合を占めたとのこと。この点について楽天証券側に問い合わせてみると、「他社の開示についてのコメントは差し控える」(広報)との回答がありました。
直接的な言及はなかったものの、数字やカウント方法が間違っているといった指摘もなかったことから、SBI証券の発表内容は大筋で合っているものと筆者は認識しています。
楽天証券の対抗策は?
楽天証券はこの状況をどう見ているのでしょうか。2月9日の決算説明会に登壇した楠雄治社長は、「SBI証券と口座数などの比較をされると思うが、他社を意識することなく我々の道を行きたい」として、ライバルではなく顧客に向き合う方針を示しています。
その中で、楽天証券の対抗策と思われる動きとしては、総合口座の開設にあたってクイズに答えると2000円相当の「株ギフト」がもらえるプログラムを12月28日から恒久化しています。
楽天証券が開示した資料によると、総合口座数は12月末の1020万口座から1月末には1048万口座へ28万件増えているものの、同期間のNISA口座数は515万件から524万件へ9万件の増加にとどまっています。
年末年始に楽天証券でNISAを始めた人や、他の金融機関から楽天証券にNISA口座を移管した人も一定数いるとは思われるものの、それ以上にSBI証券へ移管する人が多かったことを物語る数字といえそうです。
1月9日からは楽天カードによる新たなキャンペーンが始まり、楽天証券に総合口座を持っている人が他社からNISA口座を移管する場合も対象にしつつ、5000ポイントを還元する施策を始めています。
楽天証券によれば、NISA口座の開設には税務署による確認に時間を要するとのことから、こうしたキャンペーンの効果が出てくるのは2月以降になると見ているようです。
NISA口座数「1位」はどうなる
楽天カードのキャンペーンでは、一定額のカード投信積立をすることがポイント還元の条件になっていることから、単に口座を開くだけでなく、実際に投資を始める人を支援したいという意向が感じられます。
そういう意味では、SBI証券の口座開設キャンペーンからは「現金」目当ての人が一定数いると予想されるものの、とにかくNISA口座数で1位を目指すという強い意気込みが感じられます。
本質的には投資を続けることが重要であり、どこの証券会社を使っても大差はないと筆者は考えているものの、これからNISAを始める人にとっては、より多くの人が使っている会社のほうが安心できるといった心理が働くのかもしれません。
すでにNISAを始めた人にとっては、引き続き各社が競い合うことで、手数料やポイント還元、アプリやサービスの使い勝手向上を期待したいところです。