7月2日未明に発生したKDDIの通信障害は、3日になっても完全には復旧せず、東日本では夕方まで影響が続く見通しです。長引く背景には「輻輳(ふくそう)」の影響があります。他キャリアの障害と同様に、今回も携帯インフラの課題が露呈したといえそうです。

アクセス集中「輻輳」で障害が長引く

KDDIによれば、障害が発生したのは7月2日午前1時35分。メンテナンスの一環として設備(コアルーター)を新しいものに交換しようとしたところ、障害が発生したとしています。

7月2日午前1時35分に設備障害が発生(KDDI提供資料)
7月2日午前1時35分に設備障害が発生(KDDI提供資料)

その後、午前1時50分には旧設備への切り戻しを実施したものの、午前2時17分には音声通話用の「VoLTE交換機」においてアクセス集中による輻輳が発生したといいます。

午前1時50分には旧設備に切り戻しをしたものの、アクセス集中により輻輳が発生した(KDDI提供資料)
午前1時50分には旧設備に切り戻しをしたものの、アクセス集中により輻輳が発生した(KDDI提供資料)

ここでは、KDDIのネットワークにつながっていた全国の端末が一斉に再接続を試みることで、処理能力を超える渋滞が起きたといえそうです。その数は最大で約3915万回線としています。

深夜ということもあり、携帯電話を使っている人数は比較的少なかったはずですが、VoLTEの仕組みでは50分に1回、位置情報を再登録するとのこと。その再送によって、要求が積み重なっていったと考えられます。

その後、対策としては通信量を制限する「流量制御」をかけたものの、二次的な障害として「加入者データベース」とのデータ不一致が起きたことで、復旧までさらに時間を要する事態になったようです。

機種による挙動の違いとして、iPhoneでは音声が使えなくてもデータが使える状況があったのに対し、Androidでは機種によるものの音声とデータの両方が使えなくなっていたそうです。

筆者のiPhoneでは、povoのアンテナは立っていないように見えるが、データ通信は使えていた(iOSの画面より、筆者作成)
筆者のiPhoneでは、povoのアンテナは立っていないように見えるが、データ通信は使えていた(iOSの画面より、筆者作成)

西日本では7月3日午前11時に復旧作業を終えたものの、輻輳規制として音声通話には50%の制限をかけているなど、「利用しづらい状況」は継続しています。

東日本での復旧作業終了は7月3日の17時半を予定していますが、西日本での状況を見る限り、その後もしばらくは不安定な状態が続く可能性があります。

追記:

7月3日18時の更新で、東日本エリアでの復旧作業は17時半ごろ終了したと発表されました。ただし、「利用しづらい状況」は継続しています。

7月3日22時30分の更新では、「復旧作業終了」との表現が「復旧に向けた作業は終了」に変わっています。

7月3日午前11時から開かれた記者会見は、障害から完全には復旧していない中で、早すぎるのではないかとの指摘はあったものの、技術的な質問にも高橋誠社長が直接受け答えするなど、おおむね高評価だったようです。

携帯インフラの課題が露呈。補償の検討も

詳細な原因は調査中としているものの、全体を俯瞰的に見ると、今回の通信障害は2021年10月に発生したNTTドコモの大規模障害と似ています。

携帯インフラの根幹で障害が発生すると、膨大な数の端末が一斉に再接続を要求することで輻輳が発生し、機能不全に陥ってしまうという構図です。

ドコモの大規模障害を踏まえ、この問題を重く見た総務省は意見書を出しており、KDDIとしても対策をしてきたとのことですが、想定を上回る事態になったようです。

そういう意味では、個々のキャリアの問題というよりは、現在の携帯インフラが抱えている根本的な課題といえるかもしれません。

また、我々の社会も携帯インフラへの依存を高めています。緊急通報ができないことで、コロナや熱中症など、命に関わる連絡に支障をきたしたことが懸念されます。

法人用途では、気象データの収集、コネクテッドカー、一部のATMなどにも影響は及んだといいます。5Gはデジタル化に欠かせない要素技術であるだけに、対策が求められるでしょう。

障害が長時間に及んだことで、補償を求める声も高まっています。KDDIによる5GやLTEのサービス約款によれば、24時間以上全く利用できないか、同程度の状態となった場合、損害賠償(日割りによる料金の返金)を受けられると定められています。

約款には損害賠償(日割りでの返金)についての定めがある(約款のPDFより)
約款には損害賠償(日割りでの返金)についての定めがある(約款のPDFより)

ドコモの障害時にはこうした補償を否定していましたが、KDDIの高橋社長は「検討していく」姿勢を示しています。返金以外にも、ポイントやデータ容量での補償を視野に入れている可能性もあります。

予備回線の需要は高まるか

ユーザーができる自衛策としては、先日のドコモの障害と同じく、異なるキャリアの予備回線を用意しておくということになるでしょう。

その点、povo2.0は2本目の回線として存在価値をアピールしてきたものの、auと同じ回線を使っているために、KDDIの通信障害で使えなくなったのは残念なところです。

ただ、いつどのような通信障害が起きるかは予測できないので、どのキャリアを選ぶかではなく、特定のキャリアに依存しないことが重要になります。

こうした用途には、毎月の基本料金が安く、必要なときにデータを追加して利用できるプランが最適であり、再び注目を浴びることになりそうです。