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関西で始まった「QRコード乗車券」使い勝手はどう? さっそく乗ってみた

山口健太ITジャーナリスト
「スルッとQRtto」オープニングイベントのデモの様子(筆者撮影)

関西エリアで、QRコードを用いた鉄道やバスのデジタル乗車券サービスが6月17日に始まりました。

磁気乗車券からの移行先としてQRコード乗車券が注目される中、関西で一足先に始まった形になります。さっそく乗ってみました。

QRコードで乗車可能、コピー対策も

QRコード改札自体は那覇の「ゆいレール」などですでに導入されているものの、今回始まった「スルッとQRtto(クルット)」は、Osaka Metro、大阪シティバス、近鉄、京阪、南海、阪急、阪神の7社が対応するという規模の大きさが特徴といえます。

関西エリアの交通機関7社がQRコードに対応した(筆者撮影)
関西エリアの交通機関7社がQRコードに対応した(筆者撮影)

サービス開始時点では各鉄道会社の乗車券を自由に買えるわけではなく、乗り放題のような企画乗車券が中心です。国内はもちろん、海外からの訪日客の利用も見込んでいるといいます。

筆者が買ってみたのは、Osaka Metroと大阪シティバスが1日乗り放題となるデジタル乗車券です。料金は平日用が820円と、従来の1日乗車券と同じ設定になっています。

スマホのWebブラウザーからアカウントを登録すればクレジットカードで購入、QRコードを表示して地下鉄やバスに乗れるところまで1台のスマホで完結します。

購入後に利用開始ボタンを押すと、その日の終電にも対応できる深夜の時間帯まで乗り放題になります。午後や夕方に利用を始めると、使える時間が短いので損をするかもしれません。

スマホで発行したQRコードは60秒間有効なので、改札機の手前で操作するとよさそうです。60秒が経過すると消えてしまいますが、何度でも再発行できるので焦る必要はありません。

QRコードは発行から60秒間有効(筆者撮影)
QRコードは発行から60秒間有効(筆者撮影)

QRコードの読み取り機はICカードリーダーの手前に設置されている(筆者撮影)
QRコードの読み取り機はICカードリーダーの手前に設置されている(筆者撮影)

この仕組み上、利用時にはスマホ側のデータ通信が必要です。画面をスクショして他の人に渡すとか、紙に印刷するといった使い方は想定していないとのこと。これはQRコードをコピーして使う不正利用対策にもなっています。

バスにも乗ってみました。大阪シティバスでは降車時に運賃を支払う仕組みなので、乗車時には何もする必要はありません。

車内には複数のQRコードが貼られているので、降りたい停留所が近づいてきたら、画面を「大阪シティバス」タブに切り替えてQRコードを読み取ります(Osaka Metro用のタブのまま読み取るとQR異常のエラーになりました)。

画面に表示されるチケットは15分間有効となっており、これを降車時に運転手さんに見せればOK。画面にはアニメーションが表示されており、スクショ対策としているようです。

なお、運賃箱の近くには交通系ICカード用の読み取り機が設置されています。ここにSuicaなどを設定したスマホを近づけすぎると、料金を引き落とされてしまうので注意が必要です。

大阪シティバスの運賃箱。交通系ICカードの読み取り機の位置に注意(筆者撮影)
大阪シティバスの運賃箱。交通系ICカードの読み取り機の位置に注意(筆者撮影)

将来的には磁気乗車券からの移行も検討

今回は取材ということで、あえてQRコードを使ってみましたが、関西エリアでも交通系ICカードは広く普及しています。交通系ICを使い慣れた人がQRコードに移行するといった事態にはならないでしょう。

一方、磁気乗車券については、コストの問題から廃止を検討する事業者が話題になっています。関西エリアにおいても、券売機で買える切符は磁気乗車券のままですが、将来的にはQRコード乗車券への移行を検討していくようです。

磁気乗車券からの移行先としては、クレカのタッチ決済も気になるところですが、大阪駅や新大阪駅では複数の改札機がQRコードに対応しており、タッチ決済を上回る規模という印象を受けました。

阪神電鉄の大阪梅田駅の改札。QRコード対応の改札機が並ぶ(筆者撮影)
阪神電鉄の大阪梅田駅の改札。QRコード対応の改札機が並ぶ(筆者撮影)

Osaka Metroでも複数の改札機が対応していた(筆者撮影)
Osaka Metroでも複数の改札機が対応していた(筆者撮影)

こうした改札機がない場合は窓口で、また無人駅ではカメラ越しに対応できるとのこと。これはQRコードならではの使い方であると同時に、交通系ICカードが導入されていない地域への展開も期待できる方式といえそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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