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ドコモ通信障害 返金の対象にはなる?

山口健太ITジャーナリスト
ドコモが10月の通信障害の詳細を説明(NTTドコモの説明会より)

NTTドコモは10月14日から15日にかけて発生した通信障害について、11月10日に説明会を開き、詳細を説明しました。長時間に及んだ障害に対して返金を求める声もありますが、約款に照らし合わせると対象にはならないようです。

ドコモが当初発表していた通信障害の影響範囲は「200万人以上」でした。その後の調査により、利用できなかった時間は2時間20分、影響を受けたのは約100万人。その後に続いた「利用しづらい状況」を含めると、音声は約460万人、データ通信は約830万人以上が影響を受けたとしています。

通信障害の概要(NTTドコモの説明会より)
通信障害の概要(NTTドコモの説明会より)

原因については当初の説明通り、IoT位置情報サーバーでの不具合に伴うものです。問題の起きた新設備から旧設備に戻そうとしたものの、タクシーや自動販売機などに搭載されているIoT端末から大量の位置登録信号が送信され、混雑(輻輳)が発生。分割しながら進めれば問題ないとドコモは認識していたそうですが、その作業手順において社外との認識のずれもあったそうです。

その影響が一般のスマホユーザーにも及んだ理由としては、信号交換機をIoT端末と一般の携帯電話で共用していたからとのこと。信号交換機はメモリーを使い切ったような状態になり、位置情報を登録できない(=利用できない)状況になったといいます。

また、当初から指摘が相次いだように、ドコモによる情報発信に問題があった点についても改めて説明がありました。一部の通信ができるようになった時点でドコモは「回復」と発表したものの、道路にたとえると渋滞によって多くのクルマは動けない状態だったといいます。

「回復」後も利用しづらい状況は続いた (NTTドコモの説明会より)
「回復」後も利用しづらい状況は続いた (NTTドコモの説明会より)

この点についてドコモは「お客様にとって利用しづらい状況は回復していなかった。お客様目線で情報の発信ができなかったことを反省している」と説明しています。

ドコモが発表した再発防止策(NTTドコモの説明会より)
ドコモが発表した再発防止策(NTTドコモの説明会より)

「返金の対象にはならない」理由

今回の通信障害では、3Gサービスを含めて利用しづらかった状況は29時間以上にも及びました。これに対して、影響を受けたユーザーから返金を求める声も上がっています。

ドコモの契約約款によると、24時間以上利用できなかった場合は支払いが不要になり、すでに支払われた料金は返金の対象になると定められています。過去には自然災害などで返金した事例があります。

24時間以上利用できなかった場合、料金は日割りで返金される(NTTドコモ 5Gサービス契約約款より)
24時間以上利用できなかった場合、料金は日割りで返金される(NTTドコモ 5Gサービス契約約款より)

この点をドコモに確認したところ、今回のケースで利用できなかった時間は2時間20分であり、その後に続いた「利用しづらい状況」については、通信自体はできる状態だったことから、約款が定める返金の対象にはならないと判断したとのことです。

また、他社ではポイントやデータ容量を配布した事例もあります。最近ではKDDIが「povo2.0」サービス開始時の混乱のお詫びとして10GBのデータ容量を配布しました。これについてもドコモでは、いまのところ考えていないとしています。

今回の通信障害を受け、ドコモは井伊基之社長など役員8人の報酬を自主返上することを発表したものの、影響を受けたユーザーに対する直接の補償というのはなさそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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