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なぜ? LINE Pay終了予定の発表と同じ日に連携製品を発表 両社に事情を聞いてみた

山口健太ITジャーナリスト
LINE Payと連携する製品を発表した(OKIのプレスリリースより)

6月13日、スマホ決済「LINE Pay」が日本でのサービス終了予定を発表したのと同じ日に、LINE Payと連携する製品を発表した企業の存在が話題になっています。

LINE Payのサービス終了について、事前に知らなかったのでしょうか。両社に事情を聞いてみました。

サービス終了の事前連絡はなし

LINE Payがサービス終了予定を発表したのと同じ日にLINE Payと連携する製品を発表したのが、沖電気工業(OKI)です。

6月13日付で、「『LINE Pay かんたん送金サービス』と連携できるソフトウェア開発キットを金融機関向けに販売」というプレスリリースを出しています。

この「LINE Pay かんたん送金サービス」とは、企業が個人にLINE Payの残高を送金できるというものです。たとえば「ブックオフ」は、これを利用して買取代金をLINE Payで受け取れるサービスを提供しています。

銀行振込と比べて手数料が1件50円(または月間送金額の5%)と安く、24時間365日いつでも送金できることから、少額の報酬の支払いやポイント交換といったサービスに利用されているようです。

LINE Payの多くのサービスが終わるのは2025年4月ですが、かんたん送金サービスはそれよりも早い2024年12月下旬に終了する予定となっています。

それに先駆けて、6月28日にはサービスへの申し込みが終了するとのこと。まもなく終わる予定のサービスと連携する製品をなぜ発表してしまったのか、SNSでは話題になっていました。

サービス終了に至った経緯について、LINE Payの広報は、「経営情報に係るため、加盟店・パートナーの皆さまには、対外公表をもってご連絡とさせていただきました。ご迷惑、ご不便をお掛けいたしますこと、重ねて深くお詫び申し上げます」と説明しています。

またOKIからの発表については、「当社のサービスを活用したソフトウェアを開発いただいたにも関わらず、このようなことになり大変申し訳なく思っております」(LINE Pay広報)と陳謝しています。

OKIの広報にも確認したところ、LINE Payのサービス終了について「事前にご連絡いただいていませんでした」と回答しています。

OKIが発表したのは、LINE Payの残高送金機能を実装するための開発キットです。金融機関に限らず、これを利用すればプログラムの開発やテストを簡略化できることがメリットとなっており、開発言語はJavaを想定しているといいます。

OKIによれば、すでにこの製品を導入し、安定稼働している事例があることから発表に至ったとのこと。今後の展開については、「(サービス終了により)当該機能が閉塞となりますが、サービスチャネルの拡大は今後も継続し各種チャネルとの連携の強化を進めてまいります」(OKI広報)と語っています。

PayPayとの統合なしに終わるLINE Pay

LINEとヤフーが経営統合で合意したのは2019年11月のこと。そこから2023年10月の「LINEヤフー」発足まで段階的に進んできたこともあり、LINE Payのサービス終了は予想できたのではないか、との指摘もあります。

一方、LINEとPayPayのアカウントは2024年度中に連携が始まる予定でした。この計画は延期が発表されたものの、LINE PayとPayPayは両者の強みを活かす形で統合されるのではないかと筆者は予想していました。

しかし実際には、LINE Payの一部事業をLINEヤフーに継承すること、また希望者に残高移行を提供する以外は、LINE PayをPayPayに事業譲渡することはしないという建て付けになっています。

LINE Pay残高の送金サービスについても、何らかの形でPayPayに移行できないのかと思うところはありますが、「システム仕様やコスト等を総合的に鑑み、移行ではなく、サービス終了とさせていただいております」(LINE Pay広報)と説明しています。

加盟店やパートナーにとっては、メディアの報道などでサービス終了を知ったことになります。OKIの発表は象徴的な事例といえますが、ほかにも水面下で進んでいたプロジェクトが影響を受けている可能性があります。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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