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山本由伸を逃した場合の「プランB」にはどんな投手がいるのか。サイ・ヤング賞投手も1人ではなく…

宇根夏樹ベースボール・ライター
山本由伸 MARCH 12,2023(写真:CTK Photo/アフロ)

 山本由伸を欲しがっている球団は多いが、契約を交わし、ローテーションに加えることができるのは、1球団しかない。それ以外の球団は、在籍している投手でローテーションを構成するか、別の投手を手に入れようとするはずだ。

 ここ3シーズンに400イニング以上を投げ、防御率とFIPのどちらも4.00未満の投手は、28人を数える。

筆者作成
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 彼らのうち、FA市場に出ているのは、フリオ・ウリーアスブレイク・スネルマーカス・ストローマンジョーダン・モンゴメリーの4人だ。大谷翔平ソニー・グレイも、今オフにFAとなったが、すでに球団は決まっている。大谷はロサンゼルス・ドジャースと10年7億ドル、グレイはセントルイス・カーディナルスと3年7500万ドルの契約を交わした。ウリーアスは、9月にDV容疑で逮捕された。迎え入れようとする球団はないだろう。

 スネルは、今シーズン、5年ぶり2度目のサイ・ヤング賞を受賞した。ここ3シーズンの奪三振率11.85は、400イニング以上の57人のなかで最も高い。ただ、与四球率4.51も最も高く、球数は嵩む。今シーズンの32登板中、7イニング目のマウンドに上がったのは3試合だけだ。8イニング目はなく、5イニング以下は12試合を数える。また、サイ・ヤング賞とサイ・ヤング賞の間、2019~22年の4シーズンは、いずれも130イニング未満。短縮シーズンの2020年も、50.0イニングなので、規定投球回に10イニング足りなかった。

 ストローマンは、ゴロを打たせるグラウンドボーラーだ。ここ3シーズンとも防御率は3点台だが、直近の2シーズンは140イニングに届いていない。

 モンゴメリーは、2021年こそ157.1イニングながら、ここ2シーズンは175イニング以上。防御率は、3.83→3.48→3.20と推移している。FIPも、3.69→3.61→3.56だ。FIPは、フィールディング・インディペンデント・ピッチングの略。ざっくり説明すると、守備の要素をできる限り排除した防御率だ。サイ・ヤング賞の候補に挙がるほどの投球はできないかもしれないが――これまでの得票は皆無――期待外れに終わる可能性は、スネルとストローマンよりも低い気がする。

 他には、トレードで投手を獲得する方法もある。コービン・バーンズ(ミルウォーキー・ブルワーズ)とシェーン・ビーバー(クリーブランド・ガーディアンズ)は、来オフにFAとなる。ブルワーズもガーディアンズも、延長契約でつなぎ止めるほどの資金はない。彼らと違い、ディラン・シース(シカゴ・ホワイトソックス)はFAまであと2年だが、今年の夏から、ホワイトソックスは売りモードに入っている。

 バーンズは、2年前にサイ・ヤング賞を手にした。ここ3シーズンとも規定投球回以上を投げていて、このスパンの防御率2.94とFIP2.92は、4位と3位に位置する。両方とも3.00未満は、他に皆無だ。かなりのプロスペクトを手放す必要がありそうだが、獲得すれば、紛れもないエースがローテーションに加わる。

 ビーバーは、短縮シーズンの2020年にサイ・ヤング賞を受賞している。こちらも、実力はあるものの、ここ3シーズンのイニングは、96.2→200.0→128.0。奪三振率が12.48→8.91→7.52と下降している点も、少し懸念される。

 シースは、スネルと共通点がある。ここ3シーズンに記録した奪三振率11.40と与四球率3.84は、どちらも、スネルに次いで高い。3シーズンとも規定投球回以上ながら、防御率は3.91→2.20→4.58だ。

 ちなみに、ドジャースがタンパベイ・レイズから獲得したタイラー・グラスナウは、ここ3シーズンに214.2イニングを投げ、奪三振率12.37と与四球率2.77、防御率3.10とFIP2.86を記録している。グラスナウについては、こちらで書いた。

「ドジャースが先発投手のグラスナウを獲得したのはわかるが、延長契約はハイリスク!?」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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