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二塁打を打ち、味方のダグアウトに向かって指を立てる。「ファ××ク・ユー!」という意味ではなく…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ニック・カステヤノス(フィラデルフィア・フィリーズ)Oct 3, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 10月3日、ニック・カステヤノス(フィラデルフィア・フィリーズ)は、4回裏、無死一塁の場面で、ファウル・ライン際のライト前方に落ちるヒットを打つと、一塁で止まることなく、ヘッド・スライディングで二塁に達した。立ち上がったカステヤノスは、塁上から味方のダグアウトに向け、右手の指を立てた。

 この時点で、フィリーズはリードしていたが、スコアは1対0だった。なかなか得点できないチームメイトに怒り、中指を立てたようにも見えた。

 ESPNは、この指にぼかしを入れている。

 けれども、そうではない。この記事のタイトルの下の写真からわかるように、カステヤノスが立てたのは、中指ではなく薬指だ。

 指を間違えたのでもない。試合後のフィールドで、NBCスポーツ・フィラデルフィアのリポーターに薬指を立てた意味を訊かれ、カステヤノスは、こう答えた。

「もちろん、薬指さ。チームメイトに中指を立てるわけがないだろ? 愛してるんだから」

 カステヤノスが薬指を立てたのは、言ってみれば、この指にワールドチャンピオン・リングをはめようぜ、という意味だ。

 過去に3度、カステヤノスはポストシーズンに出場している。デトロイト・タイガース時代の2014年とシンシナティ・レッズ時代の2020年に、フィリーズ1年目の昨年がそうだ。けれども、ワールドシリーズ優勝は一度もない。初めてワールドシリーズでプレーした昨年は、24打数3安打に終わり、フィリーズは2勝4敗でヒューストン・アストロズに敗れた。

 カステヤノスが薬指を立てた直後、フィリーズは連打で2得点を挙げ、3対0とリードを広げた。その後、1点を返されたものの、8回裏にカステヤノスの二塁打で1点を追加し、4対1でワイルドカード・シリーズ第1戦に勝利を収めた。

 カステヤノスとチームメイトがワールドチャンピオン・リングをはめるには、あと12勝が必要だ。

 なお、この試合の最終回には、こんなこともあった。

「キンブレルがわざとボークをしでかして走者を進める。その理由は…」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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