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キンブレルがわざとボークをしでかして走者を進める。その理由は…

宇根夏樹ベースボール・ライター
J.T.リアルミュート(手前)とクレイグ・キンブレル Oct 3, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 10月3日、クレイグ・キンブレル(フィラデルフィア・フィリーズ)は、9回表のマウンドに上がった。この時点で、フィリーズは、4対1とリードしていた。

 先頭打者のジョシュ・ベル(マイアミ・マーリンズ)に二塁打を打たれ、続く2人をアウトに仕留め、2死二塁となったところで、キンブレルは、いつものポーズから身体を起こし、モーションに入る前に、ボールを落とした。ボークが宣告され、ベルは三塁へ進んだ。

 下のXの映像を観てもらえればわかるように、手が滑ったのではない。

 インテンショナル・ウォーク(敬遠四球)ならぬ、インテンショナル・ボークだ。

 なぜ、無死二塁や1死二塁ではなく、2死二塁となってからそうしたのかは不明だが、どうやら、二塁走者にサインを盗まれることを嫌ったらしい。キンブレルは、無線によってサインを伝達する「ピッチコム」を使用していない。

 また、ベルに生還されても、フィリーズはまだ2点リードしている。

 キンブレルのインテンショナル・ボークは、これが初めてのことではない。確か、2度目でもないはずだ。

 2死三塁とした後、キンブレルは、ブライアン・デラクルーズを三塁ゴロに討ち取り、ワイルドカード・シリーズの第1戦を締めくくった。

 もしかすると、あと1アウトでワールドシリーズ優勝が決まるという場面でも、キンブレルのインテンショナル・ボークが見られるかもしれない。

 キンブレルは、ボストン・レッドソックス時代の2018年に、ワールドシリーズ優勝を経験している。この時は、ワールドシリーズ第1戦から第4戦まで続けて登板したが、最後の第5戦はマウンドに上がっていない。デビッド・プライスが7.0イニングを投げた後、ジョー・ケリー(現ロサンゼルス・ドジャース)を挟み、9回裏は、現在もレッドソックスにいるクリス・セールが登板した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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