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二軍の最優秀防御率はブレイクしているのか。一軍で通算100勝を挙げた後、二軍でタイトル獲得の投手も

宇根夏樹ベースボール・ライター
中田賢一 November 8, 2007(写真:ロイター/アフロ)

 今から11年前、千賀滉大(現ニューヨーク・メッツ)は、ウエスタン・リーグ最多の108.0イニングを投げ、83奪三振は秋山拓巳(阪神タイガース)と13奪三振差の2位ながら、リーグ・ベストの防御率1.33を記録した。

 千賀は、一軍でも最優秀防御率のタイトルを獲得している。防御率2.16の2020年がそうだ。ちなみに、規定投球回に達した5シーズンの防御率は、いずれもパ・リーグのトップ3にランクインした。最多奪三振は2度、最多勝は1度だ。

 2010年以降、二軍でリーグ・ベストの防御率を記録した投手は、以下のとおり。2011年にイースタン・リーグで防御率1.64の吉川光夫(現・栃木ゴールデンブレーブス)は、その翌年にパ・リーグ・ベストの防御率1.71を記録し、タイトルとともにMVPも手にした。吉川も千賀も、一軍で通算1000イニング以上を投げている。

筆者作成
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 また、岩嵜翔(現・中日ドラゴンズ/育成)は、通算100ホールド――現時点の達成者は43人――まで、あと4ホールドに近づいている。なかでも、2017年は、パ・リーグ最多の72登板と40ホールド。どちらも、セ・リーグを含めても、最も多かった。防御率は1.99を記録した。

 二軍で最優秀防御率のタイトルを獲得する前に、一軍で実績を残した投手もいる。2019年に中田賢一が二軍で防御率3.02を記録したのは、一軍で通算1500イニング以上を投げ、通算100勝を挙げてからだ。上園啓史は、阪神時代の2007年に新人王を受賞。山田大樹は、2011~12年に2年続けて100イニング以上&防御率2点台。2012年は規定投球回もクリアした。大竹耕太郎(現・阪神)も、2019年に福岡ソフトバンク・ホークスで17試合に先発し、106.0イニングを投げて防御率3.82を記録している。大竹は、昨年12月の現役ドラフトで阪神へ移り、新たなスタートを切る。

 一方、岩田慎司白仁田寛和は、二軍でリーグ・ベストの防御率を記録した後、ブレイクしそうになった。岩田は、2012年に一軍で108.1イニングを投げて防御率2.74。白仁田は、2014年のオフに阪神からオリックス・バファローズへ移り、移籍1年目に43登板で52.0イニングを投げた。この年の防御率は3.29だった。

 あとの16人は、一軍で75イニング以上のシーズンがなく、20登板以上のシーズンも皆無だ。岸敬祐は、一軍で投げることなく選手生活を終えた。

 ただ、これからブレイクする可能性があるのは、大竹だけではない。2018年以降にイースタン・リーグで最優秀防御率の5人と、過去2年ともウエスタン・リーグで防御率1位の村上頌樹は、いずれも現役投手だ。髙田萌生は東北楽天ゴールデンイーグルスにいて、他の5人は今も同じ球団に在籍している。

 二軍の本塁打王については、こちらで書いた。

「二軍の本塁打王はブレイクしているのか。本塁打王3度の山川穂高は、その前に二軍で2度獲得」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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