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全打席の約40%で三振を喫した打者が、来シーズンは新たなチームで主砲になる!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジョーイ・ギャロ Oct 2, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 3年前、ミネソタ・ツインズは、ホームランのシーズン記録を塗り替えた。41本塁打のネルソン・クルーズ(現FA)を筆頭に、8人が20本以上のホームランを打ち――こちらの人数も新記録――チーム全体の本数は307本に達した。

 その後の2シーズンも、ツインズのホームランは少なくなかった。2020年の91本はア・リーグ3位、2021年の228本は2位だ。だが、今シーズンは、リーグ7位の178本にとどまった。20本塁打以上は、28本のバイロン・バクストンと22本のカルロス・コレイアの2人だけ。今オフ、コレイアは、契約をオプト・アウトしてFAになり、サンフランシスコ・ジャイアンツと13年3億5000万ドルの契約を交わした(「1億ドル以上の契約が2度の選手たち。この遊撃手は昨オフが1億530万ドル、今オフは3億5000万ドル」)。

 一方、ツインズは、パワーに関してはコレイアを上回る選手を手に入れた。ESPNのジェフ・パッサンらが、ジョーイ・ギャロと1年1100万ドルで合意、と報じている。

 2017年以降の6シーズンに、ギャロは、170本のホームランを打っている。この本数は、ジャンカルロ・スタントン(現ニューヨーク・ヤンキース)と並び、12番目に多い。2017~18年は2シーズン続けて40本塁打以上を記録し、昨シーズンも40本まで2本に迫った。コレイアのシーズン最多は、昨シーズンの26本塁打だ。

 にもかかわらず、ギャロが1年1100万ドルの契約しか得られなかった理由は、昨夏以降の不振にある。昨シーズン、テキサス・レンジャーズでは、95試合で25本のホームランを打ち、出塁率.379とOPS.869を記録していた。ヤンキースへ移ってからも、58試合で13本塁打とパワーは発揮したが、出塁率とOPSは.303と.707に終わった。今シーズンも復調はできず、それどころか、さらに沈んだ。ヤンキースとロサンゼルス・ドジャースの計126試合で、出塁率.280とOPS.638。ホームランは、20本に1本届かなかった。

 また、それまでも30%を超えていた三振率は、39.8%に達した。ファングラフスによると、1シーズンに400打席以上で三振率39%以上は、今シーズンのギャロしかいない。

 不振の技術的な理由は定かではないが、ギャロは、精神的にも参っていたようだ。今夏のトレード直前には、NJアドバンス・メディアの記者に、ニューヨークの生活について訊ねられ、「外出はしていない」「あまり人前に出たくないんだ」と答えている。ギャロは、ヤンキー・スタジアムでブーイングを浴びていた。

 ミネアポリスとセント・ポールのツイン・シティは、ニューヨークやロサンゼルスほどの大都市ではない。ギャロが再スタートを切るには、悪くない環境に思える。2015年のメジャーデビューから昨夏の移籍まで、ギャロは、テキサス州アーリントンに本拠を置く、レンジャーズでプレーしていた。

 三振が減らなくても、ホームランが再び増えれば、ツインズにとっては安い買い物になる。しかも、ギャロは、ホームランと三振だけが特徴の選手ではない。選球眼に優れていて、通算の四球率は15%近い。不振を極めた今シーズンも、四球率は13%を超えていた。外野の守備もうまく、2017年以降の39補殺は、このスパンの6位に位置する。年齢は、先月中旬に29歳となったところだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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