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5点リードからの逆転負けはワールドシリーズ史上6度目。直近の2度に共通するのは…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ダスティ・ベイカー(左から2人目)Oct 28, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ワールドシリーズの第1戦は、フィラデルフィア・フィリーズが勝利を収めた。3回裏が終わった時点では、0対5とヒューストン・アストロズにリードされていたが、4回表に3点、5回表に2点を挙げ、同点に追いついた。そして、10回表にJ.T.リアルミュートのホームランで6対5と逆転し、その裏のピンチを何とか凌いだ。

 ESPNスタッツ&インフォによると、ワールドシリーズで5点以上リードされながら逆転勝利は、この試合のフィリーズが6チーム目だという。いずれも、勝ったのは違うチームだが、直近の2試合とも、逆転されたチームで采配を振っていたのは、ダスティ・ベイカーだった。2002年の第6戦と今年の第1戦だ。

 20年前、ベイカーは、サンフランシスコ・ジャイアンツで監督を務めていた。アナハイム・エンジェルスと対戦したワールドシリーズは、第1戦と第4戦と第5戦に勝ち、第6戦も、7回表を終えて5対0とリードしていた。ワールドシリーズ優勝まで、9アウトに迫っていた。だが、7回裏と8回裏に3点ずつを取られ、こちらも5対6で敗れた。

 監督として、ベイカーがワールドシリーズに臨むのは、今年が3度目だ。2002年と昨年は、いずれも敗退している。

 レギュラーシーズンに2000勝以上を挙げている12監督のうち、ワールドシリーズで優勝していないのは、ベイカーだけだ。また、ポストシーズン進出7度以上の20監督中、ワールドシリーズで優勝していないのは、ベイカーとボブ・メルビン(現サンディエゴ・パドレス監督)の2人。ポストシーズン進出9度以上の8監督に限ると、こちらも、ベイカーだけとなる。

 ベイカーのレギュラーシーズン2093勝は歴代9位、ポストシーズン進出12度は歴代4位に位置する。異なる5チームでポストシーズン進出は、誰よりも多い。ジャイアンツとアストロズの間に指揮を執った、シカゴ・カブス、シンシナティ・レッズ、ワシントン・ナショナルズでも、地区優勝を成し遂げている。

 ちなみに、5点以上のリードから逆転負けを喫しながら、その年のシリーズを制したのは、5チーム中、1956年のニューヨーク・ヤンキースしかない。

 66年前のヤンキースは、第2戦がそうだった。最初の2イニングで6点を挙げ、6対0としたものの、2回裏に6点を取られ、8対13でブルックリン・ドジャースに敗れた。この時点で、ヤンキースは0勝2敗。そこから、3連勝、黒星、白星で、ドジャースを下した。

 6チーム目のアストロズの場合、ワールドシリーズは1試合が終わったところだ。ベイカーが優勝監督となる可能性は、まだ十分にある。5イニングで5失点のジャスティン・バーランダーも、チームがスウィープされなければ、ワールドシリーズ初勝利を挙げる機会は巡ってくるだろう。これまでのワールドシリーズにおけるバーランダーについては、第1戦の前に「この大投手は、ワールドシリーズが苦手!? 通算7登板で0勝6敗、防御率5.68。今年は第1戦に登板」で書いた。

 ベイカーは、ロサンゼルス・ドジャースの外野手として、41年前のワールドシリーズで優勝を味わっている。この時は、3度目のワールドシリーズ出場。1977年と1978年は、優勝できなかった。バーランダーも、ワールドシリーズ優勝メンバーとなったのは、出場3度目だった。デトロイト・タイガース時代の2006年と2012年は敗退、シーズン途中にタイガースからアストロズへ移った2017年が優勝だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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