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トレードで放出した投手に、ヤンキースが封じられる。交換に獲得した外野手は欠場

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジョーダン・モンゴメリー(セントルイス・カーディナルス)Aug 6, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 8月6日、ニューヨーク・ヤンキースは、0対1でセントルイス・カーディナルスに敗れた。

 先発マウンドに上がり、5イニングを投げたカーディナルスの投手、ジョーダン・モンゴメリーは、4日前にヤンキースからカーディナルスへ移籍した。トレードは1対1。交換相手のハリソン・ベイダーは、右の足裏を痛め、6月下旬から離脱している。復帰は、来月になる見込みだ。

 移籍するまで、モンゴメリーは21試合に登板し、114.2イニングを投げて防御率3.69を記録していた。昨シーズンは、30登板の157.1イニングで防御率3.83だった。一方、ベイダーは、打率.256と出塁率.303、5本塁打と15盗塁、OPS.673。昨シーズンは、打率.267と出塁率.324、16本塁打と9盗塁、OPS.785だ。センターを守り、ゴールドグラブを受賞した。ともに、今シーズンはメジャーリーグ6年目。どちらも、来シーズンの終了後にFAとなる。

 今のところ、ヤンキースの外野には、左から、アンドルー・ベニンテンディアーロン・ヒックスアーロン・ジャッジの3人が並んでいる。「ヤンキースがトレードを成立させ、これから対戦するチームの外野手を獲得する」で書いたとおり、ベニンテンディは、先月下旬にカンザスシティ・ロイヤルズから移籍した。ちなみに、ベニンテンディを手に入れたヤンキースは、同じ外野手のジョーイ・ギャロをロサンゼルス・ドジャースへ放出した。

 9月以降の外野は、ベニンテンディ、ベイダー、ジャッジの3人が基本となるだろう。ベイダーは、ゴールドグラバーというだけでなく、守備に関してはエリート・クラスのセンターだ。ヤンキースがベイダーを手に入れた理由は、ここにある。

 その見返りにモンゴメリーを放出しても、ローテーションに穴は生じない。モンゴメリーとベイダーのトレード前日に、ヤンキースは、オークランド・アスレティックスからフランキー・モンタスを獲得した。ローテーションには、ゲリット・コールネスター・コーテズ、モンタス、ジェイムソン・タイオンドミンゴ・ハーマンの5人が並ぶ。

 コール、コーテズ、モンタスの3人は、今シーズン、いずれも100イニング以上を投げ、防御率はモンゴメリーより低い。タイオンも、113.2イニングで防御率3.96なので、モンゴメリーとそう変わらない。7月下旬にシーズン初登板のハーマンは、4登板で防御率5.09ながら、モンゴメリーと投げ合った8月6日は、同じく5イニングを投げ、初回の1失点に抑えた。シーズン終盤には、ルイス・セベリーノも戻ってくる予定だ。セベリーノは、前半戦に16登板で86.0イニングを投げ、防御率3.45を記録している。

 また、ヤンキースは、地区2位以下に10ゲーム以上の差をつけていて、シーズン進出はまず間違いない。ポストシーズンに必要な先発投手は4人だ。コール、コーテズ、モンタスに、あと1枠は、セベリーノ、タイオン、ハーマンのいずれか。モンゴメリーがいなくても、候補は多い。同様に、ベイダーについても、復帰が多少遅れたとしても、万全の状態でポストシーズンを迎えることができれば、問題にはならない。

 ポストシーズンへ進出するためのトレードではなく、ポストシーズンで勝ち進むためのトレード、と形容してもいいかもしれない。

 つけ加えると、モンゴメリーがヤンキースを相手に再び投げるのは、ヤンキースとカーディナルスがワールドシリーズで対戦しない限り、来シーズン以降となる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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