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地区首位に立っているのに、オールスター選出のクローザーをトレードで放出する。その理由はどこにある!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジョシュ・ヘイダー Jun 28, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 8月1日、ミルウォーキー・ブルワーズとサンディエゴ・パドレスは、トレードを成立させた。パドレスからブルワーズには4人、テイラー・ロジャースディネルソン・ラメットにマイナーリーガー2人が移籍し、ブルワーズからパドレスにはジョシュ・ヘイダーが移った。

 一般的な夏のトレードは、売り手と買い手によって行われる。ポストシーズンへ進めそうにない球団は、主力を売って若手を手に入れる。ポストシーズン進出、あるいはその先のワールドシリーズ優勝をめざす球団は、そのための選手を買い、交換に若手を手放す。

 しかし、このトレードは違う。ブルワーズは、ナ・リーグ中地区の首位に立っている。パドレスは、ナ・リーグ西地区の2位ながら、ワイルドカードの2番手に位置する。3番手までは、ポストシーズン進出となる。

 また、ロジャースとヘイダーは、どちらもクローザーだ。それぞれ、28セーブと29セーブを挙げている。25セーブ以上の投手は、ア・リーグを含めても、この2人しかいない。左投手という点も、彼らは共通する。年齢は31歳と28歳だ。

 今シーズンの防御率は2人とも高く、ロジャースが4.35、ヘイダーは4.24だが、6月を終えた時点では2.84と1.09だった。実績と打者を封じ込める力は、ヘイダーが勝る。オールスター・ゲーム選出は、ロジャースが2021年の1度、ヘイダーは2018~19年と2021~22年の4度。2020年のオールスター・ゲームはなかったので、実質的には4年連続ということになる。また、今シーズンの奪三振率は、ロジャースの10.45に対し、ヘイダーは15.62だ。通算の奪三振率も、ほぼ変わらない。

 にもかかわらず、ブルワーズがヘイダーを手放した理由は、年俸にある。今シーズンの年俸は1100万ドル。FAになるのは2023年のオフなので、来シーズンも保有できるが、年俸はさらに上がるはずだ。ブルワーズの予算からすると、高すぎる。そこで、放出に踏み切ったというわけだ。ここ数年、トレードの噂は出ていた。

 交換にロジャースを獲得したのは、ヘイダーの穴埋めというよりも、ブルペン全体の弱体化を最小限にとどめ、ポストシーズン進出を5年連続とするためではないだろうか。ロジャースは、今オフにFAとなる。

 ヘイダーに代わるクローザーは、セットアッパーだったデビン・ウィリアムズが務め、ロジャースはセットアッパーとして投げると思われる。ウィリアムズは、2020年の新人王だ。FAになるのは、2025年のオフ。ちなみに、今シーズンの年俸は、ヘイダーの15分の1に満たない。

 なお、ウィリアムズについては、一昨年と昨年にこちらで書いた。

「全打者の50%以上から三振を奪った投手たち。今年の新人王は100人中53人」

「壁パンチで勝利の方程式が崩れる。球団初のワールドシリーズ優勝に暗雲!?」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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