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初登板の5アウトがすべて奪三振は、ほぼ史上初。記録した投手は3年前に外野手から転向

宇根夏樹ベースボール・ライター
デビューした球場は、リグリー・フィールド Mar 24, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 5月17日、AAAから昇格したブランドン・ヒューズ(シカゴ・カブス)は、初めてメジャーリーグの試合に出場した。

 6回表からマウンドに上がったダニエル・ノリスが、1人目の打者を三塁ゴロに討ち取り、2人目に2球を投げたところで、右のアキレス腱を痛めて降板。ノリスと交代したヒューズは、最初の打者を四球で出塁させたものの、続く2人を空振り三振に仕留めた。7回表も続投し、奪三振、奪三振、与四球、奪三振でイニングを終わらせた。1.2イニングを投げ、5奪三振と1与四球、被安打はゼロだ。最初の与四球は、ノリスに記録される。

 スタッツ社のツイートによると、1900年あるいは1901年以降のモダン・エラにおいて、初登板の5アウト以上をすべて奪三振で記録した投手は、ヒューズが初めてだという。おそらく、19世紀には存在したというよりも、当時のことはわからないのだと思われる。史上初かもしれず、その可能性は低くない。

 ヒューズは、2017年のドラフトで、カブスから16巡目・全体495位指名を受けた。そして、外野手としてプレーしていたが、2019年から投手に転向した。MLB.comのジョーダン・バスティアンらによると、ヒューズは、解雇と転向のどちらかを選ぶよう、カブスに告げられたという。

 2017年はA-、2018年はAでプレーし、どちらも打率は.250に届かず、出塁率も.310と.303。ホームランは、計151試合で5本しか打てなかった。

 一方、ミシガン州立大では、投手としても出場していた。もっとも、2015~17年のうち、登板は2015年しかない。それも、7登板の計6.1イニングで自責点5だ。プロ入り後もマウンドに上がったことはあるものの、2018年8月8日の延長11回表に2球を投げただけだ。

 だが、スタットキャストによると、初登板で投げたシンカーは、最速94.0マイルを記録した。5三振はすべてスライダーで奪い、チェンジアップも投げる。今シーズンは、昇格前にAAとAAAでそれぞれ5試合に登板し、計16.2イニングで22奪三振と3与四球。失点はなかった。

 昨年、「セーブ歴代トップ20の5人に1人は、野手から投手に転向。なかには、殿堂入りしたクローザーも」で書いたように、野手から投手に転向して成功した前例はいくつかある。もしかすると、ヒューズも、そこに名を連ねるかもしれない。年齢は、まだ26歳だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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