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ヤンキースが獲得したこの外野手の「大当たり」は間違いなし!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ティム・ロカストロ Apr 9, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7月30日のトレード・デッドラインまで、1ヵ月を切った。夏のトレード市場は、すでに始まっている。

 7月1日、ニューヨーク・ヤンキースは、マイナーリーガーの右投手、キーガン・カーティスと交換に、アリゾナ・ダイヤモンドバックスからティム・ロカストロを獲得した。

 ロカストロは、28歳の外野手だ。ここ3年(2019~21年)の出場179試合で、打率.236と出塁率.339、4本塁打と26盗塁を記録している。一番のセールス・ポイントはスピード。4月に「初めて牽制でアウトになった試合で「連続盗塁の最長記録」を樹立する。デビューから失敗なしで28盗塁」で書いたとおり、今シーズンの開幕直後に盗塁の連続記録を打ち立てた(このストリークは、29盗塁でストップした)。

 ヤンキースがロカストロに期待しているのは、スピードを生かした守備だろう。センターのレギュラーだったアーロン・ヒックスは、5月に左手首を痛め、手術を受けた。今シーズン中の復帰は難しいだろう。ヒックスに代わってセンターを守っているブレット・ガードナーは、8月に38歳となる。

 また、現時点の「チーム盗塁王」は、5盗塁のグレイバー・トーレスだ。チーム全体の17盗塁は、ウィット・メリフィールド(カンザスシティ・ロイヤルズ)より5盗塁少ない。

 しかも、アーロン・ジャッジ以外の外野手は、軒並み打てていない。ガードナー、ミゲル・アンドゥーハークリント・フレイジャーの3人とも、OPSは.700未満だ。ロカストロがレギュラーとして起用される可能性は低そうだが、守備固めと代走にとどまらず、先発出場する機会もありそうだ。

 スピードに加え、ロカストロにはもう一つ、際立つ特徴がある。2019年以降の35死球は全選手のなかで4番目に多く、死球率7.5%は、15死球以上の56人中、デレク・ディートリックの7.9%(30死球)に次ぐ。他の54人の死球率は、いずれも4.5%未満だ。今シーズンも、ロカストロは133打席で9死球、死球率6.8%を記録している。ちなみに、2019年以降の四球は28、今シーズンは6だ。

 ロカストロを上回る死球率のディートリックは、今シーズン、メジャーリーグの試合には出場しておらず、ヤンキース傘下のAAAでプレーしている。こちらも、AAAの143打席で9死球、死球率は6.3%と高い。ディートリックは左打者、ロカストロは右打者なので、ディートリックが昇格すれば、ヤンキースのラインナップには、左右の「当たり屋」が並ぶかもしれない。

 なお、ディートリックには、ロカストロのようなスピードはなく、外野両翼を守ったことはあるものの、基本的なポジションは、遊撃を除く内野だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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