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史上最も「ワイルド」なデビュー!? 初登板の初回に3暴投

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジャクソン・コワー(カンザスシティ・ロイヤルズ)Jun 7, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ジャクソン・コワー(カンザスシティ・ロイヤルズ)のメジャーデビューは、散々な結果に終わった。6月7日、エンジェル・スタジアムのマウンドに上がったコワーは、1回裏に4点を取られ、3アウト目を記録できずに降板した。打者7人に対して計39球を投げ、被安打はすべて単打ながら3本、与四球は2。ワイルド・ピッチ(暴投)は3球を数えた。この試合には、大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)も出場していたので、リアルタイムで観た人もいると思う。

 初登板で早々にKOされた投手は、コワーが最初ではない。最後でもないだろう。1アウトも記録できなかった投手もいるし、打者4人に続けてホームランを喫した投手もいる。後者については「史上最悪のメジャーデビュー!? 初登板で4本続けてホームランを打たれる」で書いた。

 また、初登板で3暴投以上は、ベースボール・リファレンスによると、1901年以降、コワーが14人目だという。そのうち、1965年8月3日にデビューしたスティーブ・ハーガンは、4暴投を記録している。

 ただ、14人中、1イニング未満は、1人目のジミー・マカリアー(1901年7月13日)とコワーだけだ。マカリアーは外野手。1889年にメジャーデビューし、マウンドに上がったのは、リリーフとして0.1イニングを投げた、この1試合しかない。

 一方、コワーは投手。24歳のプロスペクトだ。3年前にドラフト1巡目・全体33位で指名され、プロ入りした。快速球とチェンジアップに、カーブも時折交える。今シーズンは、昇格前にAAAで6試合に先発し、5勝0敗、防御率0.85を記録した。31.2イニングで41三振を奪い、与四球は10。暴投は5球あるものの、被本塁打はなく、3点しか取られなかった。昇格の5日前には、AAA東地区の月間最優秀投手(5月に5登板)に選ばれ、その日の試合でも好投した。

 なお、初登板で3登板暴投以上を記録した投手のなかには、通算200勝以上が3人いる。239勝のデビッド・ウェルズ、207勝のハル・ニューハウザー、200勝のティム・ウェイクフィールドだ。ウェルズは完全試合を達成し、ニューハウザーは殿堂入りした。ウェイクフィールドはナックルボーラーだった。

 コワーの2登板目は、6月12日となる見込みだ。次は、オークランド・アスレティックスに対して投げる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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