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トレード・デッドライン総括。グレインキーを獲得したアストロズが、ワールドチャンピオンの筆頭候補に!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ザック・グレインキー Jul 31, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 この夏も、数多くのトレードが成立した。

 昨シーズンまでは、7月末のトレード・デッドラインが過ぎた後も、ウェーバーを経由したトレードが可能だったため、8月末に「第2のトレード・デッドライン」が存在した。ポストシーズンの出場資格を持つのは、8月末の時点でその球団に在籍している選手だ。この点は、今シーズンも変わらない。

 けれども、今シーズンから、8月以降のトレードはできなくなった。7月末までの補強は、ポストシーズン進出とその先のワールドチャンピオンめざす、コンテンダーの球団にとって、従来以上に大きな意味を持つ。

 今夏の特筆すべき点は、トレードが噂されていた先発投手たちの動向だろう。マーカス・ストローマントレバー・バウアーをそれぞれ獲得したのは、コンテンダーの球団ではなく、いずれも今秋のポストシーズン進出が難しそうな、ニューヨーク・メッツとシンシナティ・レッズだった。これらのトレードについては、「今夏のトレード市場で一番人気の投手を、予想外の球団が獲得。その狙いはどこにある?」「何かとお騒がせの2人を含む計7名が「三角トレード」で移籍。3球団がそれぞれ得た選手とその狙いは…」で書いた。また、2人とともに移籍候補に挙がっていた、マディソン・バムガーナー(サンフランシスコ・ジャイアンツ)、ザック・ウィーラー(メッツ)、ノア・シンダーガード(メッツ)、マイク・マイナー(テキサス・レンジャーズ)といった先発投手は、結局、動かなかった。

筆者作成
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 そのなかで、ヒューストン・アストロズは大物投手を手に入れた。4選手と交換に、アリゾナ・ダイヤモンドバックスからザック・グレインキー(と金銭)を獲得した。これにより、アストロズのローテーションには、防御率2点台の投手が3人揃う。ジャスティン・バーランダー(2.73)とゲリット・コール(2.94)、グレインキー(2.90)だ。他に防御率3.00未満が複数並ぶローテーションは、ヒョンジン・リュ(1.66)とクレイトン・カーショウ(2.85)を擁する、ロサンゼルス・ドジャースしかない。ドジャースではリッチ・ヒルも防御率2.55だが、腕を痛め、6月下旬から欠場している。

 しかも、これまでアストロズの先発3番手だった――ここからは4番手となる――ウェイド・マイリーは、防御率3.06だ。グレインキーだけでなく、アーロン・サンチェスも獲得していることも見逃せない。今シーズンは防御率6.07ながら、サンチェスは3年前にア・リーグ・ベストの防御率3.00を記録している。グレインキーよりもサンチェスのトレードが先だったことからすると、グレインキーを獲得できなかった場合の「保険」という意味合いがあったのかもしれないが、サンチェスが復調すれば、ローテーションにはまったく隙がなくなる。復調できなくても、ポストシーズンに必要な先発投手は4人だ。

 グレインキーの加入は、2年前を彷彿させる。この年の夏、アストロズはバーランダーをデトロイト・タイガースから手に入れ、球団初のワールドチャンピオンに輝いた。

 一方、アストロズとは対照的に、ヤンキースは先発投手を得ることができなかった。こちらも地区首位に立っていて、勝率はアストロズを上回るものの、15先発以上の5投手中4人が防御率4.70以上で、残るドミンゴ・ハーマンも4点台だ。早ければ今月中にルイス・セベリーノが戻ってくるが、そうなったとしても、ポストシーズンで勝ち進めるローテーションとは思えない。

 ヤンキースは、6月にダラス・カイクルも逃している。MLBネットワークのジョン・ヘイマンによると、当時、FAだったカイクルにヤンキースが提示した金額は、彼が入団したアトランタ・ブレーブスよりもわずかに少なかったという。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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