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何かとお騒がせの2人を含む計7名が「三角トレード」で移籍。3球団がそれぞれ得た選手とその狙いは…

宇根夏樹ベースボール・ライター
トレバー・バウアー Apr 10, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7月30日、三角トレードが成立し、7選手が移籍した。正式発表はされていないが、間違いないようだ。ESPNのジェフ・パッサンが最初に報じ、他の記者もそれに続いた。シンシナティ・レッズがトレバー・バウアーを獲得し、クリーブランド・インディアンズはヤシエル・プイーグら5選手を得て、サンディエゴ・パドレスはプロスペクトのテイラー・トラメルを手に入れた。

筆者作成
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 レッズのバウアー獲得は、今シーズンよりも、来シーズンに向けた補強だ。これは、ニューヨーク・メッツがマーカス・ストローマンを手に入れたのと同じ(「今夏のトレード市場で一番人気の投手を、予想外の球団が獲得。その狙いはどこにある?」)。レッズは借金7を抱え、地区首位とワイルドカードの2番手から、それぞれ6ゲーム以上離れている。バウアーもストローマンも、FAになるのは来シーズンの終了後だ。

 レッズと同じく借金7のパドレスは、さらに先を見据えている。3選手と交換に得たことからも窺えるように、トラメルはかなりのプロスペクトだ。すでに発揮しているスピードと選球眼に加え、パワーのポテンシャルもある。うまくいけば、メジャーリーグでシーズン25本以上のホームランを打ち、それを超えて30-30を達成するかもしれない。また、トラメルは左打者だ。パドレスには右打者が多く――このトレードで放出したフランミル・レイエスもそう――左打者は少ない。移籍まで、トラメルはAAでプレーしていた。メジャーデビューは来シーズンだろう。

 残るインディアンズは、地区首位まで3ゲーム差の2位にいて、ワイルドカード・レースではトップに立っている。にもかかわらず、ローテーションの一角を占め、防御率3点台のバウアーを手放した。

 今シーズンに関しては、先発投手を1人失っても、打線の向上が必要と判断し、外野手2人を加えたのだろう。プイーグほどの知名度はないものの、レイエスのパワーは、プイーグに勝るとも劣らない。今シーズンのホームランは、プイーグの22本に対し、レイエスは27本を数える。その上、プイーグは今オフにFAだが、レイエスは2024年まで保有できる。レイエスだけでなく、他の3選手も24歳以下。インディアンズはこのトレードで、現在と未来、その両方を考慮している。ちなみに、6月にメジャーデビューしたローガン・アレンは、錦織圭と知り合いかどうかはわからないが、IMGアカデミーの出身だ。

 バウアーの放出は、年俸も理由だと思われる。今シーズンの年俸は1300万ドルで、来シーズンはさらに上がる。バウアーが抜けたローテーションには、1年半以上も離脱していたダニー・サラザーが、8月1日に復帰する。コリー・クルーバーカルロス・カラスコも、リハビリが順調に進めば、8月中に戻ってくる。

 なお、バウアーとプイーグは、何かとお騒がせの選手だ。これまでも、彼らについては「「血染めのソックス」はワールドチャンピオンをもたらした。「血が滴る小指 byドローン」の結末やいかに」「あの投手が発した、笑えないジョーク」「懸命にプレーするのはFAイヤーだけで、ドジャース時代はそうではなかった!?」などで書いてきた。

 移籍前のラストゲームでは、どちらも「らしさ」を発揮した。7月28日の登板で打ち込まれたバウアーは、怒りに任せ、マウンドの後方からセンターのスタンドへ、大遠投でボールを投げ込んだ。一方、プイーグはトレード当日の試合で、乱闘に参加して退場処分を受けた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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