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今夏のトレード市場で一番人気の投手を、予想外の球団が獲得。その狙いはどこにある?

宇根夏樹ベースボール・ライター
マーカス・ストローマン Jul 24, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7月28日、ニューヨーク・メッツとトロント・ブルージェイズがトレードを成立させ、メッツはマーカス・ストローマンと金銭、ブルージェイズはマイナーリーガーの2投手を手に入れた。

 先日、「今夏のトレード市場で一番人気はこの選手。獲得に動く球団は二桁に上る!?」で書いたように、ストローマンを欲しがる球団は多かった。けれども、この時点で、メッツの名前は浮かんでいなかった。

 それもそのはず。オールスター・ブレイクを迎えた時、メッツは借金10を抱え、地区首位とは13.5ゲーム差の4位にいて、ワイルドカードの2番手にも7ゲーム離されていた。後半戦はここまで10勝5敗を記録し、借金を半分に減らしたものの、地区4位は変わることなく、首位までは11.5ゲーム差、ワイルドカードの2番手までも6ゲームの差がある。地区優勝にはミラクルが必要で、ワイルドカードによるポストシーズン進出も難しい状況だ。トレード市場では「売り手」に回り、先発投手のザック・ウィーラーノア・シンダーガード、クローザーのエドウィン・ディアズを放出するという噂が出ていた。

 にもかかわらず、メッツは、先発投手のストローマンを獲得した。

 まさか、月末のトレード・デッドラインまでにストローマンを放出し、彼を獲得する際に手放した若手以上の見返りを得ようと考えているわけではあるまい。メッツの狙いは、来シーズンのポストシーズン進出にあると思われる。ストローマンがFAになるのは、来シーズンの終了後だ。

 メッツはここから、ウィーラーとシンダーガードのいずれか一方を放出するのではないか。ウィーラーのFAは今オフ、シンダーガードは2021年のオフという点からすると、ウィーラーを売る可能性が高そうだが、逆もあり得る。シンダーガードを手放した場合は、シーズンが終わるまでにウィーラーと延長契約を交わすかもしれない。この2パターンなら、どちらであっても、来シーズンのローテーションには4人が揃う。ジェイコブ・デグローム、ストローマン、スティーブン・マッツ、そして、シンダーガードかウィーラーだ。

 ストローマンを獲得しなくても、シンダーガードもウィーラーも放出せず、ウィーラーとの契約を延長すれば、来シーズンも今シーズンと同じ4人で臨めたが、メッツは、ストローマンの方が2人よりも上と判断したのだろう。また、メッツがストローマンを手に入れ、今夏のトレード市場から一番人気の先発投手が姿を消したことで、ウィーラーとシンダーガードのトレード・バリューは、相対的に上がっている。

 ディアズのトレードに関しては、ストローマンの獲得とは関係なく、あくまでも交換の人員次第か。2022年のオフまでFAにならないので、放出は急がなくてもいいが、手放したとしても、今オフに新たなクローザーを見つけるのは、先発投手の補強と比べると容易だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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