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急降下中のロッキーズは「売り手」に回るのか。あるいは、打者天国のスラッガーに「買い手」はつくのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
チャーリー・ブラックモン(コロラド・ロッキーズ)Apr 24, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 サンフランシスコ・ジャイアンツの急浮上と対を成すかのように、同じナ・リーグ西地区のコロラド・ロッキーズが急降下している。6月30日以降の勝敗は、ジャイアンツが16勝3敗、ロッキーズは3勝13敗だ。両チームはこの間に4試合で顔を合わせ、いずれもジャイアンツが勝利を収めた。

 ジャイアンツについては、3日前に「エースとクローザーの放出は中止!? 夏のトレード市場で売り手に回るはずだった球団が…」で書いた。一方、ロッキーズは6月29日時点の貯金5をすべて吐き出しただけでなく、逆に借金5を抱え込んだ。ワイルドカード・レースでは、ミルウォーキー・ブルワーズと並んで1番手にいたが、今では、2番手のセントルイス・カーディナルスに5ゲーム差をつけられている。

 勝てない最大の原因は、投手陣にある。開幕からの83試合と直近の16試合を比べると、1試合の平均得点も5.7から4.5に減っているが、平均失点は5.4から8.2に激増している。16試合のうち10試合が8失点以上だ。

 ロッキーズは再建中の球団ではない。過去2年とも、ワイルドカードでポストシーズンに進出している。昨年1月には、チャーリー・ブラックモンと6年1億800万ドル(2018~23年)の延長契約を交わし、それに続き、今年2月には、今シーズン終了後にFAとなる予定だったノーラン・アレナードを、8年2億6000万ドル(2019~26年)でいち早くつなぎ止めた。

 にもかかわらず、MLB.comのジョン・モロシは、ブラックモンを獲得したいという球団が出てくれば、ロッキーズは話を聞く用意がある、と報じている。これが本当なら、今夏のトレード市場では、3年連続ポストシーズン進出をめざし「買い手」として補強に動くのではなく、来シーズン以降を見据えて「売り手」に回るつもりでいるということだ。

 今シーズン、ブラックモンは本塁打を21本、三塁打を7本、二塁打を23本打ち、出塁率.365とOPS.967を記録している。過去3シーズンの成績からしても、これは決してまぐれではない。この点からすれば、欲しがる球団は現れそうだ。今夏のトレード市場には、大物の野手が出ていない。

 

 ただ、ブラックモンは7月に33歳を迎えた。今シーズンより、それまでのセンターを離れ、ライトを守っている。打撃も、ここから下降線をたどる可能性がある。それでいながら、2020年と2021年の年俸は2100万ドルずつと安くなく、さらに、2022年と2023年についても、それぞれ2100万ドルと1000万ドルの選手オプションがついている。

 もう一つの懸念材料は、ホームとアウェーの落差だ。今シーズンのOPSは、ホームの1.318に対し、アウェーでは.657に過ぎない。2016年はどちらでも.925以上ながら、過去2シーズンも、今シーズンほどではないとはいえ、かなりの差がある。

 これらを踏まえると、獲得に動く球団があるのかについては、疑問符をつけざるを得ない。

 また、ロッキーズと相手の球団がトレードをまとめても、ブラックモンの契約には、15球団に対するトレード拒否権がついている(対象球団は明らかになっていない)。ブラックモン自身も、ホームとアウェーの打撃成績の違いは知っているはずだ。打者天国のクアーズ・フィールドをホームとし続けるため、トレード拒否権を発動しても、まったくおかしくない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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