Yahoo!ニュース

対戦チームの内野手2人に温かい拍手を送ったのは、それぞれ違う理由から

宇根夏樹ベースボール・ライター
チェイス・アトリー(ロサンゼルス・ドジャース)Jul 23, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7月23日、シチズンズバンク・パークの観客は、ロサンゼルス・ドジャースの内野手2人を温かく迎えた。この球場は、フィラデルフィア・フィリーズの本拠地だ。

 2人の内野手のうち、チェイス・アトリーに対する喝采の意味はわかりやすい。3年前の夏にドジャースへ移るまで、アトリーは10年以上にわたってフィリーズでプレーしていた。ワールドシリーズ優勝を含む地区5連覇においては、主力としてチームを牽引した。

 この試合の10日前、アトリーは記者会見を開いて、シーズン終了とともに引退することを発表した。ドジャースとフィリーズがポストシーズンで対戦しない限り、アトリーがシチズンズバンク・パークでプレーするのは、7月23~25日の3試合が最後となる。アトリーの打席では、フィリーズ時代と同じように、レッド・ツェッペリンの「カシミール」が流れた。通常、ウォークアップ・ソング(登場曲)がかかるのは、ホーム・チームの選手の打席だけだ。

 一方、マニー・マチャドは過去に一度も、フィリーズのユニフォームに袖を通していない。5日前にトレードされるまでは、ボルティモア・オリオールズにいた。ESPNのバスター・オルニーによると、フィリーズとミルウォーキー・ブルワーズも移籍先の最終候補に残っていたようだが、オリオールズはドジャースへマチャドを放出した。

 ただ、マチャドはシーズン終了後にFAとなる。シチズンズバンク・パークで起きた拍手は、マチャドのフィリーズ入団を期待してのことだと思われる。

「マチャドにとって、ドジャース移籍はいいことだらけ。でも、ドジャースにとっては?」で書いたとおり、ドジャースはマチャドに契約延長を申し出ないだろうし、再契約に動くこともあるまい。ブルワーズはフィリーズと違い、マチャドと契約できるほどの資金はない。この夏に動いたのは、あくまでも「レンタル」としてだ。今オフ、フィリーズ以外にもマチャドを欲しがる球団はあるはずだが、来シーズン、マチャドはフィリーズのユニフォームを着て、シチズンズバンク・パークで喝采を浴びているかもしれない。

 もっとも、そうなっても、喝采がいつまでも続くとは限らないが。マイク・シュミットライアン・ハワードは、フィリーズのスラッガーでありながら(であるがゆえに)、フィラデルフィアの観客からブーイングを浴びたことがある。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事