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2015年のMLBを振り返る(4)トリプル・プレー:ベース上の転倒がもたらした三重殺も

宇根夏樹ベースボール・ライター
右からM・ズニーノ、K・ピラー、E・カレーラ Jul 26, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

2015年は4度のトリプル・プレー(三重殺)が発生した。それらのうち、ピッツバーグ・パイレーツのニール・ウォーカーが主役を演じた「4-5-4」と、ヒューストン・アストロズの内野陣が完成させた「5-4-3」は、見事なプレーだった。ウォーカーのトリプル・プレーについては、前に「クレメンテに縁のあるウォーカーがやってのけたトリプル・プレーは、メジャーリーグ史上初の快挙」で書いたとおりだ。アストロズの場合、捕球した三塁手のジョナサン・ビアーが右へステップしてベースを踏み、ビアーの送球を二塁ベース上で受けたホゼ・アルトゥーベが一塁へ転送した。彼らは2人とも、動きにまったく無駄がなかった。打ったイアン・キンズラー(デトロイト・タイガース)は鈍足ではなく、2006年のメジャーデビュー以来10年続けて2ケタ盗塁を決めている。ちなみに、この試合がメジャーリーグ2登板目だったランス・マッカラーズは、このトリプル・プレーにも助けられ、初勝利を挙げた。

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コロラド・ロッキーズの内野陣による「6-4-3」は、アリゾナ・ダイヤモンドバックスにツキがなかった。ラン&ヒットを仕掛けていたため、ポール・ゴールドシュミットが放ったライナーが遊撃手のグラブに収まった時には、一塁走者も二塁走者も次の塁へ達しようとしていた。

残る一つ、シアトル・マリナーズが演じ、トロント・ブルージェイズが喫した「3-6-2-2」は、奇妙なプレーだった。場面は一、三塁。ゴロを捕ってベースを踏んだ一塁手は、三塁走者のエゼキール・カレーラが突入していないのを確認してから遊撃手へ投げ、一塁走者のケビン・ピラーを一、二塁間に挟んだ。カレーラが本塁を窺おうとしているの見た遊撃手は、ボールを持ったまま走り寄ってカレーラを本塁方向へ追い込み、捕手のマイク・ズニーノへ送球した。その間に走っていたピラーと、今度はズニーノに追われたカレーラは、ほぼ同時に三塁ベースへ到達した。ズニーノはカレーラ、ピラー、カレーラの順にタッチ。ピラーがアウトになり、2死三塁となるはずだった。ところが、カレーラは押されたわけではないのにバランスを崩して転び、ズニーノにタッチされた(写真)。「3-6-2-2」のトリプル・プレーは、1955年以来60年ぶりの椿事。そのお返しではないだろうが、カレーラは6回裏に、レフトの守備でズニーノの本塁打をもぎ捕った。

なお、2015年のトリプル・プレーに関わった野手、打者、走者のうち、2度関与した選手はいなかった。トリプル・プレーとなる打球を打たせた投手もかぶっておらず、その投手が打者あるいは走者として他のトリプル・プレーに関与することもなかった。

ただ、ウォーカーとDJ・ラメイヒュー(ロッキーズ)の2人は、前年も二塁を守ってトリプル・プレーに関わった。一方、2年続けてトリプル・プレーでアウトになったのはアンソニー・ゴーズだ。2014年はブルージェイズの三塁走者、2015年はタイガースの一塁走者として、トリプル・プレーに巻き込まれた。また、ホゼ・レイエスジョニー・ペラルタの2人は、2014年と2015年のトリプル・プレーで違う役割を演じた。レイエスは2014年がブルージェイズの二塁走者で、2015年はロッキーズの遊撃手。ペラルタは両年ともセントルイス・カーディナルスでプレーしていたが、トリプル・プレーの時は、それぞれ遊撃手と三塁走者だった。

2013年を含め、ここ3年続けてトリプル・プレーに関与した選手はいなかった。レイエスは「8-2-6-3」のトリプル・プレーに遊撃手として関わった経験を持つが、それは今から5年前、ニューヨーク・メッツ時代の2010年のことだ。

「2015年のMLBを振り返る」

(1)ノーヒッター:「セブンス・ヘブン」に2度関わった投手は2人

(2)サイクルヒット:ベルトレーは史上最多、ケンプは球団初

(3)野手の登板:イチローの防御率はワースト4位タイ

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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