Yahoo!ニュース

アンバランスなトレード!? ブレーブスが控え内野手と交換に、Dバックスからベテランと有望な若手を獲得

宇根夏樹ベースボール・ライター

6月20日、アトランタ・ブレーブスとアリゾナ・ダイヤモンドバックスの間でトレードが成立した。ブレーブスがブロンソン・アローヨトゥキ・トゥーサントを獲得し、Dバックスはフィル・グースリンを手に入れた。

アローヨは38歳の右投手。メジャーリーグ15年間で145勝131敗1セーブ、防御率4.19を記録している。2005~13年には9年続けて199イニング以上を投げた。昨年7月にトミー・ジョン手術を受け、現在はリハビリ中。復帰は8月以降になりそうだ。

トゥーサントも右投手だが、こちらは若く、トレード当日に19歳となった。プロ入りは昨年のドラフト。全体16位でDバックスに指名され、トレードのちょうど1年前に入団した。契約金は270万ドル。快速球とカーブ、チェンジアップを投げる本格派だ。

グースリンは26歳の内野手。2010年のドラフト5巡目・全体164位指名で、メジャーリーグ3年目の今シーズンは控えとして三塁と二塁を守っていたが、5月半ばに左手の親指を剥離骨折し、復帰は後半戦になると見られている。

また、6月20日時点のブレーブスは34勝35敗で、ナ・リーグ東地区の首位を走るワシントン・ナショナルズと2.0ゲーム差の3位だった。ナ・リーグ西地区にいるDバックスも、33勝35敗とほぼ同じ。地区首位のロサンゼルス・ドジャースからは4.5ゲーム差の3位にいた。

選手の動きを見る限り、このトレードはブレーブスに分があるように思える。トゥーサントのプロ入りから1年後に成立したことからもわかるように、ブレーブスはこのプロスペクト右腕を欲していた(ドラフト入団後のトレード禁止期間については、こちらに書いた)。その交換にブレーブスが手放したのは、控え内野手に過ぎない。

ただ、ブレーブスが支払う対価はそれだけではない。トゥーサントと同時に獲得したアローヨの年俸は950万ドル。来シーズンは1300万ドルの球団オプション(Dバックスと契約した時点では1100万ドルだったが、トレードされた場合は200万ドルアップするという条項が含まれていた)で、これを破棄するには450万ドルがかかる。今シーズンの残り年俸と来シーズンのオプション破棄に必要な金額を合わせると、約1000万ドルになる。

トミー・ジョン手術明けのアローヨは、今シーズンの戦力としては計算できない。まったく投げられないままシーズンを終える可能性もある。来シーズンに関しても、ブレーブスが球団オプションを行使し、残留させることはないだろう。ブレーブスがアローヨに払う1000万ドルは、トゥーサント獲得の見返りということになる。Dバックスはトゥーサントを失ったものの、1000万ドルのコスト削減に成功した。

このトレードの前日に、ブレーブスはトレバー・ケイヒルを解雇した。ケイヒルは27歳の右投手。今シーズンの開幕直前にDバックスからブレーブスへ移った。その際、ブレーブスは交換要員として24歳の外野手、ジョシュ・イーランダーを放出し、ケイヒルの年俸1200万ドルのうち、半分強はDバックスが負担することになった。ケイヒルは最初の3先発で防御率8点台と結果を残せず、ブルペンへ回されてからの防御率も7点台だった。一方、Dバックス傘下のAでプレーしていたイーランダーは、ケイヒルより早く、5月下旬に解雇されている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事