ドラフト入団後のトレード禁止期間は「ピート・インカビリア・ルール」から「トリー・ターナー・ルール」へ
6月14日、トリー・ターナーがサンディエゴ・パドレスからワシントン・ナショナルズへ移籍した。これは、昨年12月19日にタンパベイ・レイズを含めた3球団の間で成立したトレードの一環で、当時、パドレスからナショナルズへ移る2選手のうち1人は、PTBNL(後日指名選手)となっていた。
ただ、PTBNLがターナーであることは、最初から決まっていた。ターナーは2014年のドラフトで全体13位指名を受けてパドレスに入団しており、ルール上、ドラフトで指名されて入団した選手は1年間トレードが禁じられているため、PTBNLとしていたに過ぎない。一方、PTBNLを誰にするのかは、トレードから6ヵ月以内に決める必要がある。昨年12月のトレードは、これら2つのルールに対応すべく、計算されていた。
1年間のトレード禁止は「ピート・インカビリア・ルール」と呼ばれている。その由来は、1995年に千葉ロッテ・マリーンズでプレーした、あのインカビリアにある。
日本へやってくる10年前、1985年のことだ。オクラホマ州立大の選手だったインカビリアは、ドラフト全体8位でモントリオール・エクスポズ(現ワシントン・ナショナルズ)に指名された。インカビリアがマイナーリーグを経ずにメジャーデビューしたいと要求したこともあって、交渉は暗礁に乗り上げる。契約は11月に成立したものの、エクスポズは同日にインカビリアをテキサス・レンジャーズへトレードした。
当然ながら、インカビリアのエクスポズ入団は、トレードありきだった。インカビリアは翌年の開幕戦で、レンジャーズの「4番ライト」としてメジャーデビューした。この一件を受け、「ピート・インカビリア・ルール」が定められた。
ターナーはナショナルズへ移ることが決まっていながら、今シーズンはパドレス傘下のAAでプレーしていた。ターナーほど待たされはしなかったが、ドルー・ポメランツ(現オークランド・アスレティックス)の場合も同様だった。
2011年7月30日のトレードにより、ポメランツはクリーブランド・インディアンスからコロラド・ロッキーズへ移籍することになった。だが、ドラフト全体5位で指名され、インディアンスへ入団したのは8月16日。そこから1年間には、半月ばかり足りなかった。オフィシャルにはPTBNLだったポメランツは、インディアンス傘下のAAで練習を続けたものの試合には登板せず、8月16日にロッキーズへ移り、その翌日に傘下のAAでマウンドに立った。
なお、「ピート・インカビリア・ルール」は今年5月に改定され、トレード禁止は1年間ではなく、ドラフト指名で入団した年のワールドシリーズが終了するまでとなった。また、禁止期間中はPTBNLとしておいて、後日移籍させることも禁じられた。これらはすでに、「トリー・ターナー・ルール」と呼ばれている。