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日本人が初めてフランスの料理部門「人間国宝」に! 厳しい審査の詳細、次の“ある目標”

東龍グルメジャーナリスト
関谷健一朗氏 (C) 東龍

M.O.F.をもつ料理人

M.O.F.(エムオーエフ)はMeilleur Ouvrier de Franceの略称であり、フランス国家最優秀職人章を意味します。日本でいえば人間国宝にあたる、フランスで極めて大きな栄誉です。

2019年、ホテルニューオータニ「トゥールダルジャン 東京」でエグゼクティブシェフを務めるルノー・オージエ(Renaud Augier)氏が、日本在住の料理人として37年ぶりにM.O.F.を受章したことが大きな話題となりました。

知った気になっているM.O.F.って本当は何? 日本で起きた37年ぶりの快挙(東龍)/Yahoo!ニュース

4年後の2023年に、日本人の料理人が、料理分野で初めてM.O.F.を受章したということで、飲食業界の内外から耳目を集めています。

「ガストロノミー “ジョエル・ロブション”」総料理長の関谷健一朗氏

シャトーレストラン ジョエル・ロブション (C) 東龍
シャトーレストラン ジョエル・ロブション (C) 東龍

この日本人の料理人とは、「ガストロノミー “ジョエル・ロブション”」で総料理長(エグゼクティブシェフ)を務める関谷健一朗氏です。

逝去の報道で激震を与えた料理界の巨匠ジョエル・ロブション氏は何がすごいのか?(東龍)/Yahoo!ニュース

「ガストロノミー “ジョエル・ロブション”」は料理界の巨匠であるジョエル・ロブション氏(故人)が世界に展開するガストロノミーレストラン。日本では、2007年に刊行されたミシュランガイドからずっと三つ星として掲載されています。

関谷氏の経歴は実に輝かしいです。弱冠26歳の若さでロブション氏に推挙され、パリにある「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」のスーシェフに抜擢されました。2010年からは東京・六本木の「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」のシェフを務め、同店はずっと星を獲得しています。「ガストロノミー “ジョエル・ロブション”」総料理長に就任したのも日本人で初めてという出来事でした。

現在では、旗艦店の「ガストロノミー “ジョエル・ロブション”」をはじめとして、日本国内で展開するロブショングループのレストラン、ブランジュリーやパティスリー、カフェで提供される全てのメニューを統括するという、極めて重要な立場にあります。

M.O.F.への挑戦

「ガストロノミー “ジョエル・ロブション”」総料理長の関谷健一朗氏 (C) フォーシーズ
「ガストロノミー “ジョエル・ロブション”」総料理長の関谷健一朗氏 (C) フォーシーズ

関谷氏が「ガストロノミー “ジョエル・ロブション”」の総料理長に就任した際にインタビューしました。

日本人が初めて15年連続の三つ星レストランで総料理長に! 関谷健一朗氏のインタビュー全文を大公開(東龍)/Yahoo!ニュース

日本人初の総料理長に就任したことに決して満足せず、「近いところで大きな目標は、フランス人も認めるフランス料理をつくる職人としての頂点を目指したい」と述べていたのが印象に残っています。

この大きな目標こそが、M.O.F.への挑戦だったのです。2022年のM.O.F.では、500名以上の応募者の中から、料理部門で受章したのはわずか8名という非常に狭き門でした。

前人未到の快挙を果たした関谷氏に改めてインタビューしたので、全文を紹介しましょう。

関谷氏へのインタビュー

Q:M.O.F.への挑戦はいつから考えていましたか?

関谷氏:2018年秋に行われた「第52回 <ル・テタンジェ>国際料理賞コンクール・インターナショナル(パリ)」で優勝した後に、次は何にチャレンジしようかと考えていました。今度は最も難しいM.O.F.に挑戦しようと決めて、2019年末にエントリーしました。

Q:挑戦するにあたって、どのように準備してきましたか?

関谷氏:筆記試験では食に関する全てのことが対象になっていて、料理やワインはもちろんのこと、法律、歴史、地域性から、飲食店の経営、原価、減価償却など食に関して幅広く問われます。たとえば、2018年の問題では「バベットの晩餐会」という映画の中でつくられた料理は何かという問題まであり、どれも難しいと感じました。

実技については、2週間前に課題が発表されるので、食材や機材を揃えて、精度を高めていきました。まずは納得のいくレベルまで料理を完成させて、そこからさらに試作を重ねていきました。2週間はあっという間に過ぎていきました。

Q:誰かに相談しましたか?

関谷氏:M.O.F.の経験者に相談しました。エリック・ブシュノワールさんはもちろん、ルノー・オージエさんにも相談しました。2018年の審査で最終審査に残った日本人の方がフランスにいるのですが、3回も会いに行きました。テタンジェ料理コンクールの審査員にもM.O.F.の方が多いので、アドバイスをいただきました。

みなさんには「こんな感じだよ」と具体的な進行を教えていただいて、とても参考になりました。ただ、口を揃えていわれたのは、1回目で受章するのは無理なので、まずは体感してみて、2回目、3回目でとれるといいねということでした。

Q:1回目で受章できたのは、どうしてだと思いますか?

関谷氏:運やタイミング、健康状態やモチベーションがよかったからだと思います。全ての点と点が結ばれたという感じでしょうか。2019年は体調が優れない時期だったので、もしもその頃に審査があれば、難しかったかもしれません。

Q:審査について教えてもらえますか?

関谷氏:一次審査は筆記と簡単な実技があり、そこから二次審査、最終審査へと進みます。

一次審査では最初に、4択60問で60分の筆記試験がありました。「活け締め」に関する問題があったのは、日本人の私にとってラッキーでした。ワインの問題が多かったので、ソムリエ資格をとったのも役に立ったと思います。何問解けると合格になるのかわかりませんが、自己採点したら43問くらいが正解でした。

筆記試験のすぐ後に、基礎的な実技試験もあります。その場で渡されたレシピを5分で理解して12分で一皿をつくるという課題です。順調につくり終えて、3分くらい残っていましたが、何か抜けていることはないかと思い、よく見直しました。厳格な審査により、500人エントリーしていたのが160人ほどに絞られました。

Q:二次審査はどうでしたか?

関谷氏:4時間にもおよぶ二次審査では、前菜1品4皿を開始から3時間半後に、メインディッシュ1品4皿を4時間後に提出しました。

前菜は、燻製した魚介類と卵、フルーツ、野菜、2種のビネグレットなどを使って、メインディッシュは豚肉が課題食材でした。提出時間は厳しく、5分以上ずれてしまうと失格になり、3分から5分未満ずれてしまうとペナルティが与えられました。

Q:最終審査はどう進みましたか?

関谷氏:最終審査には30人残っていて、2日間に分けて15人ずつ審査が行われました。

前菜2品16皿、メインディッシュ1品8皿、デザート1品8皿を5時間でつくりました。こちらも提出する時間が厳格に決められていて、開始から4時間後に前菜、4時間30分後にメインディッシュ、5時間後にデザートという流れです。M.O.F.の過去の審査では大皿料理が多かったので、個々盛りだったのは予想していませんでした。

2品の前菜はオマール海老と帆立貝の一皿と、秋野菜、魚介類、フルーツのタルティーヌです。メインディッシュは鹿の料理で、1.2キロぴったりの鹿肉を持って行かなければなりませんでした。分量が厳格なのは、多めに持って行くと、材料が多い分だけおいしいソースがつくれてしまって、不公平になるからです。

デザートはウフ・ア・ラ・ネージュでした。白いソースでコーティングと記載されていましたが、通常は黄色のアングレーズソースを使うことが多いので悩みました。サブレの厚さも、ちょうど5ミリと指定されていて慎重を要しました。

Q:デザートの出来栄えは?

関谷氏:私は料理人なので、料理を優先して考えていて、正直なところデザートはあまり対策していませんでした。

有名パティシエのクリストフ・フェルデールさんが、すぐ側で審査していたので、ドキっとしました。受章後にお会いしたら、「おめでとう」と声を掛けていただけたので嬉しかったです。

Q:受章後すぐにしたことは何ですか?

関谷氏:サポートしてくれた方々に御礼の連絡をしました。日本では朝の早い時間でしたが、みなさんとても喜んでくださっていました。ただ実際のところ、疲れていたこともあって、受章後すぐのことはあまり細かく覚えていません。

Q:受章してから、自身の中で何か変わったことはありますか?

関谷氏:特に変わったことはありません。日々仕事をしっかりとこなしていくだけです。ただ、ロブション氏をはじめとして、憧れていた方たちが着用していたトリコロールのコックコートを着る時には、これに恥じない仕事をしていかなければならないと思い、気持ちが引き締まります。

Q:M.O.F.を目指す人に向けてアドバイスはありますか?

関谷氏:私は幸いにして、ジョエル・ロブションの本店がフランスにあり、会社を含めて多くのサポートをいただけたので、よい環境でM.O.F.にチャレンジできました。日本にいながら挑戦するのは非常にハードルが高いと思いますが、もしも挑戦したいと思う人がいれば、できる限りサポートしたいです。

Q:料理コンクールにもまた挑戦したいですか?

関谷氏:料理コンクールにはもう挑戦することはないと思います。ただ、料理コンクールに挑戦する人たちを、サポートしたいですね。たとえば、2年毎に開催される「ボキューズ・ドール」は、関係者にM.O.F.が多いですし、チーム力が重要なので、何か力になれたらと思います。

Q:今後は何をしたいですか?

関谷氏:ロブション氏のフィロソフィーをしっかりと継承・伝承していくことが、大きな責務だと考えています。調理学校からも、多くのオファーをいただいているので、学生たちにフランス料理の素晴らしさを伝えていき、次世代の料理人育成にも励みたいです。いつか生徒の中からM.O.F.受章者が誕生したら、とても嬉しいです。

関谷氏の料理

関谷氏が総料理長を務める「ガストロノミー “ジョエル・ロブション”」ではどのような料理が食べられるでしょうか。

スペシャリテを思う存分堪能できる「MENU SPÉCIALITÉ(ムニュ スペシャリテ)」(66,000円)やそのエッセンスを味わえる「MENU DÉGUSTATION(ムニュ デギュスタシオン)」(55,000円)、さらにはプリフィクスコース(25,000円~)まで、さすがグランメゾンだけあって、幅広いコースが用意されています。

代表的な料理をいくつか紹介していきましょう。

キャビア・アンペリアル ロブションスタイル

キャビア・アンペリアル ロブションスタイル (C) 東龍
キャビア・アンペリアル ロブションスタイル (C) 東龍

非常に美しい幾何学的な模様が印象的な冷前菜で、非常に有名です。たっぷりのキャビアの下にはたっぷりの蟹。周りには滋味に溢れた甲殻類のジュレがあります。ジュレの上には敷き詰められたカリフラワーのクリームとパセリのソース。一度食べれば、決して忘れることのない芸術的な逸品です。

オマール海老のナージュ

オマール海老のナージュ (C) 東龍
オマール海老のナージュ (C) 東龍

関谷氏が2018年に行われた「第52回 <ル・テタンジェ>国際料理賞コンクール・インターナショナル(パリ)」で優勝した作品のソースを用いた一品。シトラスとオマール海老のソースが絶品で、金箔を用いた華やかな見た目も印象的です。丸くくり抜いたズッキーニやジャガイモがよいテクスチャで、花ズッキーニのチップも添えられています。途中でスダチを絞ると“味変”となり、より爽やかになるでしょう。

ブレス産小鳩胸肉とフォアグラのキャベツ包み キュイスのコンフィとラビオリを浮かべたブイヨンを添えて

ブレス産小鳩胸肉とフォアグラのキャベツ包み (C) 東龍
ブレス産小鳩胸肉とフォアグラのキャベツ包み (C) 東龍

関谷氏が好きな小鳩料理で、2品構成となっています。

最初はキャベツ包みです。小鳩の胸肉にフォアグラを同じ分量で重ねて、キャベツで包んでベーコンで巻きました。小鳩の繊細な味わいが閉じ込められており、ジューシーで非常にやわらかです。付け合せのマッシュポテトも代表的なガルニチュール。ジャガイモとバターで非常にクリーミーです。

キュイスのコンフィとラビオリを浮かべたブイヨン (C) 東龍
キュイスのコンフィとラビオリを浮かべたブイヨン (C) 東龍

次は小鳩のもも肉のコンフィとラビオリ。もも肉は香ばしくキャラメリーゼされており、、骨付きなので旨味がたっぷりです。フィンガーボールが添えられているので、もも肉は手に持っていただくといいでしょう。トウモロコシを食べて育った鳩なので、添えられた焼き色の付いたトウモロコシもよく合います。鳩の内蔵をつかったラビオリが入ったコンソメも添えられています。

白桃と赤桃のヴァシュラン 軽やかなヨーグルトのシャンティとフランボワーズのアクセント

白桃と赤桃のヴァシュラン 軽やかなヨーグルトのシャンティとフランボワーズのアクセント (C) 東龍
白桃と赤桃のヴァシュラン 軽やかなヨーグルトのシャンティとフランボワーズのアクセント (C) 東龍

白桃と赤桃の美しいコンビネーションです。下にはソルベとバニラ風味のヨーグルトのクリームがあってさっぱり。ラズベリーやローズの花びらが酸味や香りを添えます。

グランメゾンならではのワゴンサービス

グランメゾンといえば、料理が一流であることは当然のことながら、豊かな空間と洗練されたサービスも白眉。他のレストランでは、やりたくてもできないような、フランス料理の醍醐味であるワゴンサービスが行われています。

パン

パン (C) 東龍
パン (C) 東龍

パンは全部で12種類もあります。他のフランス料理店では、5種類を超えるパンはなかなか体験できません。

料理に合う定番のパンはプティバケットと全粒粉のパン・ド・カンパーニュ。他には、竹炭ミルクパン、エスカルゴ、クロワッサンはプレーンとアンチョビの2種、「麦の穂」を意味するエピは粒マスタードとベーコン入り、チーズパン、青さのり入りの米粉パン、ラタトゥイユのクグロフ、トウモロコシのフォカッチャ、黒オリーブ入りのフーガスがあり、これらは温められて提供されます。

添えられるバターは、フランスのパンプリー社の無塩発酵バター。パンはそのまま食べても十分においしいですが、バターを付けると、より香りが広がります。

フロマージュ

フロマージュ (C) 東龍
フロマージュ (C) 東龍

本格的なフランス料理では、食後のフロマージュ=チーズも楽しみのひとつです。

コンテ、ブリア・サヴァラン、モンドール、ロックフォールなど、食後のフロマージュも14種類と充実。ブルーチーズにはフランス・アピディスの蜂蜜「フルールプランタニエール(春の花々)」を添えてくれました。フルーティな風味とコクのある甘味があり、ブルーチーズの幽香がマイルドに感じられます。

デザート

デザート (C) 東龍
デザート (C) 東龍

メインとなるデセールの後には、追加のワゴンデザートから好きなものを選べます。その数は何と、9種類のケーキと3種類のアイスクリーム&ソルベ、コンポート、フルーツサラダの合計14種。

全て挙げると、レモンクリームとメレンゲのタルト、バニラクリームのミルフィーユ、オペラ、サヴァラン、スペシャリテのビターチョコレートタルト、クラフティ、グレープフルーツタルト、サントノーレ、ルリジューズ、パイナップルのコンポート、フルーツサラダ。アイスクリームはバニラ、ラズベリー、ココナッツと、選ぶのが悩ましいくらいです。

カフェとミニャルディーズ

ミニャルディーズ (C) 東龍
ミニャルディーズ (C) 東龍

グランメゾンでは、最後のミニャルディーズ=お茶菓子が充実しているのは当然。ただ、22種類も用意されているようなレストランは、日本ではなかなか見当たりません。

バラエティに富んでおり、ボンボンショコラ4種、オランジェット、チーズボール、ティグレ、カヌレ、タルト2種、ラズベリーのギモーヴ、生キャラメル、ヌガー、ココナッツムース、マンゴーパッション、ラズベリーのムース、レモンマカロン、アマンドショコラ、ノワゼットショコラ、パートドフリュイ、ピスタチオのムース、パチパチキャンディをのせたミルクチョコレートムースと、非常に充実しています。

ワインも充実

ワイン。左から、本文で紹介している順番通り (C) 東龍
ワイン。左から、本文で紹介している順番通り (C) 東龍

フランス料理では、料理に加えてワインも重要です。ソムリエ資格を有している関谷氏だけあって、シェフソムリエである高丸智天氏とのワインペアリングも完璧です。

「ブルーノ・パイヤール ブラン・ド・ブラン グランクリュ 」はロブション氏が惚れ込んだというシャンパーニュ。シャルドネ100%のブラン・ド・ブラン。ドサージュ5g/Lと辛口で、蒸し蒸しとした日本の夏には最適なセレクトです。

香り高いのが「ドメーヌ フランソワ・ヴィラール コンドリュー ル グラン:ヴァロン 2020」。ヴィオニエ100%で、トロピカルフルーツや蜂蜜の風味で非常に上品です。

「ドメーヌ メオ・カミュゼ ヴォーヌ・ロマネ 2014」はピノ・ノワール100%で、繊細なストラクチャーのミディアムボディ。小鳩の胸肉はキャベツに包まれていましたが、食した後にワインを含むことによって、より完成された味わいになります。

デザートワインも素晴らしいです。「シャトー・クーテ 2008」は適度な熟成感があり、ハチミツなどの上品な香り。貴腐ワインならではの甘味が凝縮されています。

目を見張るテーブルウェア

テーブルセット (C) 東龍
テーブルセット (C) 東龍

料理やワイン、サービスや内容だけではなく、テーブルウェアも秀逸です。

ワイングラスはフランスのレーマン、オーストリアのロブマイヤーやザルト、東京の木村硝子店のグラナダシリーズと、どれもワインの佳味をぐんと引き出す高級グラスばかり。

サービスプレートはエレガントなフランスのベルナルドで、カトラリはフランスのクリストフルです。肉料理のナイフは「JOËL ROBUCHON」ロゴ入りの福井県の龍泉刃物。ハンドルはもともと木製でしたが、関谷氏がゴールドに変更して、店内の雰囲気により合うようになりました。

2人目のM.O.F.を育成

「ガストロノミー “ジョエル・ロブション”」内観 (C) 東龍
「ガストロノミー “ジョエル・ロブション”」内観 (C) 東龍

日本および日本人のフランス料理は非常にレベルが高いといわれています。

「ミシュランガイド東京 2023」では、星付きレストランは、日本料理の61店に続いて、フランス料理が50店。本場フランスでも日本人シェフが星を獲得するのはもはや驚きではなく、三つ星にも輝いています。

「ガストロノミー “ジョエル・ロブション”」総料理長の関谷健一朗氏 (C) 東龍
「ガストロノミー “ジョエル・ロブション”」総料理長の関谷健一朗氏 (C) 東龍

一皿の食味に力点を置いたミシュランガイドとは異なり、M.O.F. はフランスの歴史や伝統、文化や技術などを、フランス人以上に理解していなければ到達できない領域。日本人である関谷氏が料理部門のM.O.F.を1回目で受章したことは、周囲をあっと驚かせました。しかし、振り返ってみれば、「ガストロノミー “ジョエル・ロブション”」で初めてとなる日本人の総料理長、34年ぶりの「第52回 ル・テタンジェ 国際料理賞コンクール インターナショナル(パリ)」優勝と、前人未到の偉業を成し遂げてきたことを鑑みれば、関谷氏が1回目でM.O.F.を受章したことも納得です。

不可能を可能としてきた関谷氏が今後の目標として思い描くのは、日本人で2人目となる料理部門のM.O.F.の育成。インタビューではいつかと述べていましたが、関谷氏が尽力するのであれば、思いのほか実現が早いのかもしれません。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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