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旧統一教会は果たして宗教団体なのか、その実態解明を望む

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(672)

神無月某日

 支持率の急落が止まらない岸田総理は、それに歯止めをかけるかのように、衆議院予算委員会の初日に合わせ、宗教法人法に基づいて旧統一教会の実態を調査するため「質問権」の行使を永岡文科大臣に指示した。

 これまで宗教法人法にある「質問権」は使われたことがなく、初めてのケースとなるが、それが使われた調査の結果次第では、旧統一教会に宗教法人として解散命令が出される可能性がある。

 岸田総理はこれまで「信教の自由」などを理由に、旧統一教会の解散命令に慎重な姿勢を示してきた。しかし「質問権」の行使に踏み切ったことで、本当に旧統一教会の実態が明らかになるならば、解散命令が出される可能性はあるとフーテンは思う。

 全国霊感商法対策弁護士連絡会(全弁連)によれば、高額な商品を買わされたり、献金を強要された相談件数は3万件を上回り、被害金額は1200億円以上に上っている。その日本から吸い上げられた資金は韓国と米国の政界に流れていると言われる。

 また旧統一教会の勧誘方法が、日本国憲法の「信教の自由」に反する違法なものだと元信者が訴えた裁判では、裁判所が元信者の主張を認め、最高裁は2001年に「入信方法と献金の説得について組織的不正が認められる」と判断し、初めて旧統一教会側の敗訴が確定した。

 それなら「信教の自由」に反する違法な伝道を行っている団体を、「信教の自由」を理由に守る必要はない。むしろこの団体が本当に宗教団体であるのかを徹底して調査していくことが望まれる。

 旧統一教会が文鮮明によって設立されたのは、朝鮮戦争が休戦した翌年の1954年である。朝鮮戦争によって韓国経済が破綻に瀕した一方、日本は米国の再軍備要求を憲法9条を盾に拒み、出兵する代わりに軍需産業を復活させて戦争特需にありついた。それを契機に日本は工業国として高度経済成長に突き進む。

 冷戦構造の中で日本と韓国を「反共の砦」として統治しなければならない米国は、反米感情を抱かれることを恐れた。怒りの矛先を米国ではなく、韓国は日本に、日本には韓国への怒りに変えなければならない。

 韓国の初代大統領李承晩の強烈な反日姿勢の後ろには米国があった。李大統領は「李承晩ライン」を一方的に宣言して竹島を韓国領とし、日本の漁船を次々に拿捕していく。こうして日韓関係は冷却化し、それぞれが米国だけを頼るようになった。

 そこで米国は朝鮮戦争で潤った日本に韓国経済復興のための資金を提供させることにする。それが米国に後押しされた1965年の日韓基本条約締結である。当時日本が保有していた10億ドルの外貨のうち、8億ドルを援助資金として韓国に提供した。一方で竹島問題は「解決せざるを持って解決する」ということで対立関係は永続された。

 この時の韓国大統領は朴正熙で、韓国経済はこれで奇跡の復興を成し遂げるが、民間レベルで日本から金を吸い上げる装置になったのが旧統一教会だった。1961年に朴正熙政権が誕生すると、金鍾泌KCIA長官は旧統一教会を再組織して、日本の民間から金を吸い上げ、それを韓国と米国の政界に流す組織にする。 

 そのために作られた教義がアダムとイヴの話だと思う。韓国はアダム国家だと言う。それを表すように朝鮮半島は男性性器の形をしている。一方の日本列島は女性性器の形をしていると言い、イヴはアダムに尽くさなければならないと金の吸い上げを正当化する。

 また日本には朝鮮半島を植民地支配してきた過去があり、それを問題にすることで、日本人の贖罪意識をえぐり、過去の罪を清算するため献金することが必要だと思い込ませた。旧統一教会がこれほど信者から金を吸い上げた背景にはそれがある。

 旧統一教会が日本で伝道を始めたのは1958年だが、64年に岸信介元総理と関係ができた。旧統一教会の本部が岸元総理の自宅の隣にあったからだ。反共主義という共通のイデオロギーのため関係は深まり、68年には笹川良一、児玉誉士夫らと「国際勝共連合」が結成され政治活動を活発化させていった。

 岸元総理の娘婿である安倍晋太郎氏は、旧統一教会と自民党政治家の関係を深めさせた。自民党政治家の秘書に旧統一教会の信者を送り込むよう奨励したのである。こうして自民党政治家の選挙に信者が協力するようになる。

 その一方で旧統一教会の狙いは米国の政界に影響力を持つことだった。旧統一教会の狙いというより朴正熙大統領とKCIAが、旧統一教会を使って米国政治を動かそうとしたのだ。そこに朴東宣というロビイストが絡む。

 朴東宣は実業家だが、ワシントンDCに邸宅を構え、夜な夜な米国議員をパーティに招いて政治工作を行った。この朴東宣と文鮮明は協力関係にある。フーテンはかつて米国のコメ作りを取材したことがあるが、米国が韓国に輸出するコメ代金の一部を着服したとして問題になったのが朴東宣だった。

 彼はその後もイラクの人道支援事業に絡んで国連職員に違法な工作を仕掛け逮捕されたいわくつきの人物である。安倍晋太郎外務大臣は朴東宣を利用して対米工作を行ったと言われ、息子の安倍晋三氏が大学時代に米国に留学した時には、朴東宣が生活の面倒を見た。

 ともかく旧統一教会とKCIAと朴東宣は協力して対米工作を行い、KCIAは米国のCIAとも協力関係があるのだから、裏の世界は複雑だ。そこに日本の岸信介、安倍晋太郎、安倍晋三の3代の家系が絡まるのである。

 そして最近フーテンが知ったのは、1987年に朝日新聞阪神支局に押し入った目出し帽の男が、散弾銃で2人の記者を銃撃し、1人が死亡、1人に重傷を負わせた「赤報隊事件」と旧統一教会との関りである。

 「赤報隊」を名乗る犯人は合わせて8件のテロ事件を起こしている。死傷者が出たのは阪神支局の事件だけだが、それ以外に建物への銃撃や爆破未遂、そして中曽根康弘、竹下登両総理に対する脅迫文の送付がある。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■「田中塾@兎」のお知らせ 日時:4月28日(日)16時から17時半。場所:東京都大田区上池台1丁目のスナック「兎」(03-3727-2806)池上線長原駅から徒歩5分。会費:1500円。お申し込みはmaruyamase@securo-japan.com。

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