プーチンに弄ばれトランプに脅され習近平に足元みられる安倍総理

フーテン老人世直し録(392)

長月某日

 9月10日にウラジオストクで行われた日ロ首脳会談後の共同記者会見を生中継で見て安倍総理とプーチン大統領の「落差」を強く感じた。プーチン大統領は早口で文章を読み上げ、日ロが経済、文化など多方面にわたって協力を進展させていることを強調する一方、領土問題について「容易に解決できないことは分かっている。両国の国民に受け入れ可能な解決方向を探る意味で南クリルでの共同経済活動に着手した」と述べ、進展の道は遠いという認識を示した。

 これに対し安倍総理は「日本とロシアの間には70年以上、平和条約が結ばれていないという異常な戦後がある。その戦後を私とプーチン大統領の手で終わらせる意思を共有してから着実に一歩一歩日ロ関係を前進させてきた」と、プーチン大統領の認識とは逆に能天気とも思える楽観論を述べた。

 外交は「怒ったら負け、惚れたら負け」と言われる。怒れば理性より感情が前面に立つ。だから外交巧者はわざと相手を怒らせて理性を失わせ、そこに付け込んで外交的勝利を収める。惚れさせるのも同じことで、惚れさせる要諦は気を引いて逃げる事にある。逃げられると追いかける心理が働き、ますます惚れて理性的な判断を失う。

 2人の「落差」を見てフーテンは安倍総理がプーチンの術中にはまり弄ばれているように感じた。安倍総理が「自分とプーチン大統領で異常な戦後を終わらせる」と意気込めば意気込むほどプーチンはじらせて日本からの経済的果実を得ようとする。日本はまるで悪い男に惚れて貢がされる女のようだ。

 安倍総理がどれほどのめり込んでいるかと言えば、北方4島を「固有の領土」として「返還」を要求してきた日本政府の方針を覆し、「2島返還論」を主張してきた鈴木宗男氏の助力を得て、領土返還ではなく、ロシアの領土である2島を「引き渡す」という条件でもロシアの極東開発に日本が協力する姿勢を見せたことである。

 ウラジオストクの市場に行くと中国や北朝鮮から来た人間が物を売っていたりする。ロシアの極東の国境がどうなっているのか分からないが、内陸でつながっている国同士は普通に行き来があるのだ。だから北朝鮮に対する経済制裁など徹底できるはずがないとフーテンは思うのだが、プーチンにとってロシア極東に中国人がどんどん進出していることは脅威でもあったはずである。

 中国をけん制する意味で日本の経済協力は望ましい。それが平和条約締結と2島引き渡しの条件でできるなら願ったりかなったりだ。しかも先に経済協力があるのだから何も言うことはない。成果を見届けてから考えればよい話になる。

 ロシアとしてはそれまでの間に北方4島の軍事基地化を強固にして簡単には譲れない既成事実化を図る。現に択捉、国後の両島には地対艦ミサイルが配備された。仮にロシアが「返還」を認めれば、日米安保条約に基づいて米国は日本領である北方領土に軍事基地を作る。日本政府は条約上それを拒否できない。

 従って「返還」を認めることはロシアの安全保障上ありえない。2島が引き渡されてもそこに日本の主権は認めないのがロシア側の考えだ。もし北方領土が本当に返還される日が来るとすれば日米安保条約が廃棄され日本が真に独立を果たした時になる。

 安倍総理は2年前に山口県長門市で行われた日ロ首脳会談でこの道を歩み出した。そのころフーテンは北方領土返還交渉はアベノミクスと同じで国民の鼻先にぶら下げられたニンジンだとブログに書いた。期待だけで絶対に口にできぬニンジンである。そして10日の共同記者会見はそれを証明する形になった。

 ところがさらに11日に開かれた「東方経済フォーラム」でプーチン大統領は、安倍総理が「平和条約のない異常な状態を終わらせよう」と聴衆に拍手を求めたのに対し、「前提条件なしで今年中に平和条約を締結しよう」と提案して聴衆から拍手された。問題は突然の提案を受けた安倍総理の「表情」が国際社会に発信されたことだ。

 能面のように表情一つ変えずに無視するか、あるいはやんわりと切り返して日本側の立場を聴衆に認めさせたのなら良かった。しかし現実は戸惑ったような表情を見せたあとに薄笑いを浮かべた。これを見て世界中の外交当局者が困った時に薄笑いを浮かべた安倍総理の性格分析を行ったことだろう。

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「フーテン老人は定職を持たず、組織に縛られない自由人。しかし社会の裏表を取材した長い経験があります。世の中には支配する者とされる者とがおり、支配の手段は情報操作による世論誘導です。権力を取材すればするほどメディアは情報操作に操られ、メディアには日々洗脳情報が流れます。その嘘を見抜いてみんなでこの国を学び直す。そこから世直しが始まる。それがフーテン老人の願いで、これはその実録ドキュメントです」

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1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。89年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■「田中塾のお知らせ」9月25日(火)19時~■場所:東京都千代田区神田神保町2-7芳賀書店ビル5F神保町駅前会議室(地下鉄神保町駅A1出口徒歩1分)■会費:1500円■申し込み先http://bit.ly/129Kwbp

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