『366日』月9らしくない?非キラキラ系ラブストーリー “叶わぬ恋の歌”解釈を覆すのか
フジテレビ月9ドラマ『366日』の第2話。高校時代から誤解とすれ違いを繰り返してきた雪平明日香(広瀬アリス)と水野遥斗(眞栄田郷敦)は、12年越しの思いがようやく通じて付き合いはじめる。しかし、初デートの日に遥斗は事故に遭う。
第2話で描かれたのは、脳に損傷を受けた遥斗が、昏睡状態から一生目覚めない可能性が高いという過酷な事実。気持ちの整理がつかない明日香は、仕事が手につかない。その後の一生がかかった人生の選択を、突然目の前に突きつけられた。
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突然迫られた人生最大の選択を取り巻くリアル
遥斗の妹・花音(中田青渚)は、毎日のように病室にお見舞いに訪れる明日香に向かって「もうここには来ないで。これから長い闘いがはじまる。この苦しさをわかちあえるのは家族だけ。よその人に中途半端に関わってほしくない」と切り出す。
花音を止めようとする母にも「他人の明日香さんに甘えるのはやめなよ」とし、明日香へ「ここに来てもお兄ちゃんとは話せない。来てもらってもどうにもならない」と厳しい現実を家族としてしっかり伝えた。
その言葉の裏には、同じ年代の女性としての花音の優しさと気遣い、そして家族の過酷な人生に向き合っていく決意がある。
遥斗の幼なじみで親友の下田莉子(長濱ねる)は、明日香へ「この状況を彼女として背負っていく覚悟がある? きっとめちゃくちゃしんどいし、人生が変わる。いろいろなものを犠牲にしないといけなくなる。もし途中で無理ってなったときには、遥斗も家族も傷つけることになる」。いっときの感情だけでなく、先の人生にまで目と気持ちを向けさせる。
29歳の女性にとって、自身の人生を決める大きな決断になる。
明日香は「どうしたらいいのか、わからない。どうすべきなのか、わからない」。
悩みに悩んだ彼女は、人の意見も聞き、自分がどうしたいかで結論を出した。病室を訪れ、遥斗の家族に「話せなくても、笑えなくても遥斗は遥斗だから。諦めたくない。そばにいたい」と苦しい気持ちも含めて正直に話した。
そんな明日香へ遥斗の両親は「そんなふうに思ってくれてありがとう」「明日香ちゃんがいてくれたら遥斗もきっと喜ぶと思う」と優しい言葉をかける。
生きる道を決めた女性のラブストーリーへ高まる共感
『366日』が描くラブストーリーに、三角関係や不倫はないし、恋敵や悪人も出てこない。しかしそこには、突然訪れた人生の転機に向き合い、とてつもないつらさ、苦しさ、悲しさにさらされる苦悩と葛藤を経て、自身の生きる道を決めた女性のラブストーリーがある。
明日香のような状況を生きる恋人や夫婦、家族は、決して少なくないだろう。明日香と同じ選択をした人もいるかもしれないし、別の道を歩んだ人もいるだろう。明日香は、当事者にしかわからない気持ちを視聴者に染み入るように伝えてくれた。同じ世界に実際に起きていることであり、身の回りに明日香のような選択をした人がいることに思いを馳せさせてくれた。
現実の当事者にも、そうでない人にも、ある選択をした29歳の女性・明日香の人生に寄り添い、その行く末を、ひとつの人生のあり方を、一緒に見守りたいと思わせているのではないだろうか。
本作は、いわゆる月9っぽくない非キラキラ系のラブストーリーかもしれない。しかし、リアルに向き合う誠実なストーリーと明日香の心情に共感し、エンディングの「366日」を聴いて涙させられる視聴者は少なくないだろう。
第2話は「366日」の歌詞にある「恋がこんなに苦しいなんて 恋がこんなに悲しいなんて」が切々と描かれた。この先の歌詞とのリンクも気になるところだが、叶わぬ恋の歌であるはずの同曲の解釈を覆すストーリーになることへの期待も高まっていきそうだ。
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