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『おっパン』最終話で性的マイノリティへの偏見に正論 “昭和おじさん”友情と家族愛の物語だった

武井保之ライター, 編集者
『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』公式サイトより

昭和のおじさんが令和社会に自身をアップデートさせていく『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(東海テレビ・フジテレビ系)の最終話。今期の話題作『不適切にもほどがある!』(TBS系)と主人公は同じ“昭和おじさん”だが、自分を変えようとする意思を持つほうの『おっパン』は、ラストまで心温まる感動に包まれた。

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息子の男性同士の恋愛に反対する父親の正論

『おっパン』の昭和おじさん・沖田誠(原田泰造)は、令和の常識にあわせて自分を変えようとする意思を持ち、ときにつまづきながら少しずつアップデートを遂げる。

その過程で沖田は、健気な努力と小さな発見から成長していく。その変化は、引きこもりで性自認に悩む高校生の息子、2次元オタクで人との付き合いが苦手な大学生の娘、年甲斐もなくK-POP推し活に励む妻など、家族をはじめとする好きなことのために悩める周囲の人たちの救いになり、毎話が心温まる家族愛と友情の物語になっていた。

最終話では、すっかり家族とお互いを理解するようになった沖田が、年の離れた友人の大地(中島颯太)の男性同士の恋愛を認めない父・真一郎(相島一之)と対決した。

冷静で頭がキレる常識人だが頑固者の真一郎が沖田にぶつけるのは、「(男性同士の恋愛を応援して)大地を苦悩の道に押しやるのはやめてくれ。あなたが大地の人生に責任を取れるわけではない」という正論。

沖田も「彼が彼らしく生きることに賛成であり、応援したい」と返すが、真一郎は「(性的マイノリティが)自分らしくと唱えて生きようとした人間が世間ではつらい目にあっている。賛成や応援というのは簡単だが、そのあとに責任を取れないなら息子に関わるのはやめてほしい」と彼なりの息子への愛情を説く。

父親としては、息子が傷ついて苦労して生きる道を選ぶのを止めたい気持ちは当然あるだろう。誰も間違ってはいないが、性自認に悩む息子の気持ちを尊重する沖田は、その正解を「大地にとっての幸せ」と示した。

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好きなことをつらぬき自分らしくいることが幸せ

自分らしくいるために、世間の目を顧みずに好きなことをつらぬくのは、容易いことではない。でも、たとえつらいことがあっても、それが本人にとって幸せであれば、それがその人の人生であり、そこに悔いはない。

最終話のメッセージは「好きなことは止められない。幸せな生き方は人それぞれ。それは本人が決めること」と伝えていた。

当たり前のことであり、きれいごとでもあるかもしれないが、そこにはこれまでのストーリーを経た重みがあった。

ラストの結婚式のシーンでは、人目もはばからず号泣していた沖田。それまでに培った、年の差、性別、社会的属性を超えた友情を背に、男気を見せた沖田のアップデートされた勇姿に、目頭が熱くなった。

沖田のアップデートはまだ終わっていないようだ。これまで通り、毎話に小さな感動がある続編を楽しみに待ちたい。

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ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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