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元・乃木坂オーラを消した伊藤万理華、地味女子役の存在感 不作の冬ドラで異彩を放つ『トキコイ』

武井保之ライター, 編集者
天野りおん役の伊藤万理華。『時をかけるな、恋人たち』カンテレ公式サイトより

 前期の豊作ぶりとは打って変わり、今ひとつ話題性に欠ける感のある冬ドラマだが、そんななかで異彩を放っているのが『時をかけるな、恋人たち』(カンテレ/フジテレビ系)。過去を変えないタイムリープものであり、何事も起きないけど当事者の心には救いが残る。心がほっこり温まる小さなお話がおもしろい。

 本作は、劇団・ヨーロッパ企画を主宰する上田誠氏が脚本を手がけたオリジナルドラマ。上田氏といえばタイムリープ映画の名作『サマータイムマシン・ブルース』(2005年)のほか、最近では2分間のタイムループから抜け出せなくなった老舗旅館の混乱を描く『リバー、流れないでよ』(2023年)が口コミで話題になり、スマッシュヒットしていたばかり。タイムリープコメディの第一人者的な存在として活躍の場を広げる奇才クリエイターの注目の最新作でもある。

 本作の主人公は、時空を移動する違法タイムトラベラーを取り締まる、未来から来たタイムパトロール隊員の井浦翔(永山瑛太)。広告代理店で働くアートディレクターで現代人の常盤廻(吉岡里帆)は、運命なのか、たまたまなのか、タイムパトロール基地に迎え入れられ、任務を手伝うことになる。

 パトロール隊は、過去の失敗をやり直すために未来から訪れる違法タイムトラベラーを捕らえ、歴史の改ざんを防ごうとする。しかし、さまざまな事情を抱える彼らに感情移入する翔と廻は、当事者の心の傷だけを取り除き、起こってしまう事象自体は変ないよう、タイムリープを駆使したつじつま合わせに奔走する。

 シリアスコメディに定評のある、光と影を併せ持つ永山瑛太のよさと、ポジティブなオーラを発しつつ清濁併せ呑むキャラクターが映える吉岡里帆の共演が見事にハマっている。そんな2人の“動”に対して、“静”となる存在で個性をにじませているのが、タイムパトロール隊員オペレーター・天野りおん役の伊藤万理華だ。

(関連記事「女子高生役の27歳インスタフォロワー610万人超え女優、高校生にしか見えないと話題」)

 永山瑛太と吉岡里帆の2人がテンションの高い“陽”のキャラクターであるのに対して、伊藤万理華は“陰”となる物静かで地味な女子キャラクターを演じる。正義感が強く融通が利かなそうだが、ときおり見せる2人にシンパシーを感じる瞬間など、ふとしたときの姿に、愛らしさと切なさが混濁した独特のオーラがにじみ、ぐっと刺さるような印象を残している。

 伊藤万理華は1996年生まれの27歳。アイドルグループ・乃木坂46の1期生としてデビューし、2017年12月に卒業。女優業を本格的にスタートし、主演作『サマーフィルムにのって』(2021年)は複数の国内映画賞で評価され、2021年7月期ドラマ『お耳に合いましたら。』(テレビ東京)で地上波連続ドラマ初主演。今期は『時をかけるな、恋人たち』のほか、NHK夜ドラ『ミワさんなりすます』にも出演し、役の幅を広げている。

『時をかけるな、恋人たち』の好演からは、フォトジェニックな容姿を抑えた端役のポジションで、メインキャラクターを光らせながら自身の存在感も強く放つ、若手女優としての稀有なポジションを掴みつつあることを感じさせる。これからの躍進の予感がある注目女優だ。

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ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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