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日米地位協定の壁、米軍オスプレイ墜落事故で改めて浮き彫り #専門家のまとめ

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
米空軍CV22オスプレイ(写真:米空軍)

搭乗員8人を乗せた米空軍のCV22オスプレイが11月29日、鹿児島県屋久島沖の海に墜落した。米軍は日米地位協定に基づき、海上保安庁の巡視船や漁船などが回収した残骸を順次引き取っている。今回のようにたとえ日本の領土・領海で起きた重大事故であっても、過去の米軍機墜落事故と同様、日米地位協定の壁に阻まれ、海上保安庁などによる事情聴取や物的証拠の機体の捜査が尽くされずに終結されそうだ。

▼日本の捜査権を制限する地位協定を根拠に、最大の物証である機体の残骸を米軍に手放すことで日本側による原因究明は不可能に

▼地位協定合意議事録は「日本の当局は合衆国軍隊の財産について捜索、差し押さえまたは検証を行う権利を行使しない」と定める

▼米軍の法的な特権を認めた日米地位協定の壁を背景に第10管区海上保安本部も調査や捜索などの面で手探りの対応を迫られている

▼陸奥宗光の生き様は辺野古問題や「現代の不平等条約」とも言える地位協定問題が長年解決できずにいる今の日本へのヒントを与える

日米地位協定に基づき、在日米軍基地の外で米軍機の事故が起きた際、米軍機などは米軍の「財産」とされ、米側の同意がなければ日本側は捜索や差し押さえができない。たとえ重大事故が民有地で起きて住民が危険性を訴えても、米軍機の飛行を止められず、事故原因の究明さえできない。このため、地位協定の見直しを求める声は依然として強い。

オスプレイは近年、米国以外でもノルウェーやオーストラリアで重大事故を相次いで起こしている。陸上自衛隊V22の配備計画が進む佐賀県をはじめ、全国各地でオスプレイの安全性への不安が強まっている中、政府には米国にもっと情報を公開するよう毅然たる姿勢で対応していくことが求められている。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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