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V22オスプレイの米生産工場、ボーイングが2025年にも閉鎖の可能性

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
陸自初導入のオスプレイは2020年7月に木更津駐屯地に到着した(高橋浩祐撮影)

米軍と陸上自衛隊が運用する垂直離着陸輸送機「V22オスプレイ」向けの機体や主要機器を生産する米ボーイング社の工場が早ければ2025年にも閉鎖される可能性が出てきた。

英軍事週刊誌ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーの25日付の記事によると、ボーイングのV22プログラムマネジャーであるシェーン・オープンショー氏は23日、オスプレイの生産・組立ラインの閉鎖についての議論が始まったと述べた。

同氏は「今後の追加注文を条件として、そうした話し合いを始めている」と認め、「おそらくあと2年(で生産ラインの閉鎖)と予想している」と述べた。

同氏によれば、米東部ペンシルベニア州フィラデルフィアにある同社の工場では、V22の能力向上のため、プロセッサーやワイヤーハーネス(組み電線)、電気部品をアップグレードし、同機のブロックB形態をブロックC形態へと改修している。

米海軍は2月、「V22の生産ライン停止をサポートする臨時エンジニアリング」事業の募集を発表した。そして、同機を開発したベル・ボーイングの合弁会社がこの契約を受注することを明らかにした。募集内容には生産ライン閉鎖の期限は公表されていなかった。

オープンショー氏によると、受注済みの36機のオスプレイがいまだ製造されていないほか、25機がブロックCにアップグレードされる予定だという。

V22オスプレイは1989年に初飛行した当時は「革新的な能力を持つ輸送機」との触れ込みでデビューした。ティルトローター(傾斜式回転翼)機として世界で名をはせてきた。しかし、米国以外でオスプレイを運用しているのは日本だけだ。陸上自衛隊が計17機の順次配備を進めている。2020年7月に千葉県の木更津駐屯地で5年間の限定で暫定配備が始まった。防衛省は九州、沖縄の防衛力を強化する自衛隊の「南西シフト」の一環として佐賀空港への最終配備を目指す。同空港の隣接地に佐賀駐屯地(仮称)を新設する計画だ。

防衛省はかねてオスプレイが陸自の従来の輸送ヘリ「CH47」に比べ、「最大速度が約2倍、航続距離と飛行高度が約3倍と高い性能を有する」と強調。「離島防衛や災害救援には速さが重要で、機動展開能力が高い」とアピールし、オスプレイ導入を推し進めてきた。

しかし、インドネシアやイスラエルなど調達に興味を示していた国々も最終的には導入を見送り、海外では買い手がほとんど見つかってこなかったのが実情だ。ネックとなってきたのが輸送機としては割高な価格だ。防衛省によると、2018年度の防衛予算では1機当たり約100億円だった。これに対し、CH47は1機当たり約55億円にとどまっている。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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