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護衛艦「いずも」と「かが」の軽空母化、F35B搭載の改修費36億円を概算要求 「事項要求」で上積みも

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
海上自衛隊史上最大の艦艇であるいずも型護衛艦1番艦「いずも」(写真:海上自衛隊)

防衛省は8月31日、2023年度防衛予算の概算要求を過去最大の5兆5947億円とすることを決めた。予算項目だけで金額を示さない「事項要求」が100項目規模に及び、年末の予算決定では1兆円もの積み増しが予想されている。

防衛費の大幅増額の背景には、中国の著しい軍事拡張がある。中国の2022年度国防予算は、表向きの公表ベースだけで約1兆4500億元(約29兆円)に及び、日本の5倍以上に達した。過去30年では40倍以上に急増した。中国の軍拡を目の当たりにし、防衛省は特に長射程で相手の射程外から発射できるスタンド・オフ・ミサイルの早期配備を目指し、南西諸島周辺の防衛力強化を急ピッチで進めている。

来年度概算要求資料の中で防衛省が示した主なスタンド・オフ・ミサイルのイメージ図一覧。来年度から国産の12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)と島嶼防衛用高速滑空弾(早期装備型)の量産をいよいよ開始する。
来年度概算要求資料の中で防衛省が示した主なスタンド・オフ・ミサイルのイメージ図一覧。来年度から国産の12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)と島嶼防衛用高速滑空弾(早期装備型)の量産をいよいよ開始する。

●いずも型護衛艦の改修に36億円

防衛予算概算要求では、海上自衛隊史上最大の艦艇であるいずも型ヘリコプター搭載護衛艦1番艦「いずも」と2番艦「かが」に、短距離離陸と垂直着陸が可能なステルス戦闘機F35Bを搭載できるよう、改修費全体として36億円が予算要求された。ただし、「事項要求」に絡み、年末の予算編成過程で予算額が上積みされる可能性もある。F35B搭載に向けたいずも型護衛艦改修費としては、これまでに2020年度に31億円、2021年度に203億円、2022年度に61億円がそれぞれ計上されている。

筆者が東京特派員を務める英国の軍事専門誌ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーでは、かねて「いずも」と「かが」を、「ひゅうが」「いせ」と同じ「ヘリコプター空母」とみなしている。「いずも」と「かが」は「ヘリ空母」から、戦闘機搭載の「軽空母」に改修されつつある。軽空母化は中国の太平洋進出を念頭に抑止力を強化する狙いがある。

「いずも」と「かが」の改修は、5年に一度実施される大規模な定期検査を利用して、それぞれ2回にわたって行われている。

●いずも改修

防衛省によると、いずも改修については、来年度は機器を調達する。具体的には航空機格納庫用の静止形電力変換器を取得する。

海自横須賀基地を母港とする「いずも」は2019年度末から、ジャパンマリンユナイテッド横浜事業所磯子工場で1回目の改修工事が実施され、2021年6月末に既に終了した。具体的には、特殊な塗装などによる飛行甲板の耐熱処理工事や誘導灯の設置などが行われた。

横浜市磯子区のジャパンマリンユナイテッド横浜事業所磯子工場で改修工事中の護衛艦「いずも」(2020年7月26日、高橋浩祐撮影)
横浜市磯子区のジャパンマリンユナイテッド横浜事業所磯子工場で改修工事中の護衛艦「いずも」(2020年7月26日、高橋浩祐撮影)

また、2024年度末から始まる2回目の改修に向け、今年度予算では着艦誘導装置を取得するための費用36億円が計上された。この着艦誘導装置は、米海軍と米レイセオン社が共同開発した「ジェイパルス(JPALS:Joint Precision Approach and Landing System)」だ。JPALSはGPS衛星信号と慣性航法システム(INS)を使って、F35Bやオスプレイといった軍用機を自動的に安全かつ正確に着艦誘導する全天候型のシステムだ。

「いずも」は、2回目の改修でF35Bの発着艦を可能にするため、艦首形状を四角形に変更する工事を予定している。

防衛省は「いずも」改修が2026年度中に終了すると見込んでいる。

●かが改修

一方、かが改修については、来年度は着艦誘導装置を取得する。また、飛行甲板にある標識灯火灯を改造するほか、温度計測装置の工事を実施する。

海自呉基地を母港にする「かが」は今年3月24日にジャパンマリンユナイテッド呉事業所の修理ドックに入渠し、軽空母化に向けての1回目の改修工事が始まった。具体的には「いずも」で既に実施された飛行甲板上の耐熱塗装や標識塗装などに加えて、「いずも」に先駆けて艦首形状を四角形に変更する工事が実施されている。

広島県呉市のジャパンマリンユナイテッド呉事業所の修理ドックで改修工事が始まった護衛艦「かが」(2022年3月27日撮影、読者提供)
広島県呉市のジャパンマリンユナイテッド呉事業所の修理ドックで改修工事が始まった護衛艦「かが」(2022年3月27日撮影、読者提供)

防衛省は「かが」の1回目の改修が2021、2022、2023の各年度にわたって行われ、2回目の改修が2026、2027の両年度に実施されるとの見通しを示している。

●2023年度は6機のF35Bを取得へ

防衛省は来年度予算で、金額を明示せずに「いずも」と「かが」に搭載するF35Bの6機の取得費を事項要求した。今年度予算では4機の取得費として510億円を計上した。一方、2021年度予算では2機の取得費として259億円、2020年度予算では6機の取得費として793億円をそれぞれ計上した。航空自衛隊は計42機のF35Bを導入する計画だ。

防衛省は、F35Bの国内配備先としては宮崎県新富町にある航空自衛隊新田原基地を計画している。2024年度からの配備が予定されている。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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