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カタールW杯。突破確率15%ながら日本に追い風が吹いていると考えたくなる理由

杉山茂樹スポーツライター
(写真:ロイター/アフロ)

 横浜F・マリノスのケヴィン・マスカット監督は9月18日、ホームでコンサドーレ札幌に0-0で引き分けると、会見でこう述べた。

「札幌の戦いは私たちがコントロールできる範疇ではありませんが、メディアの皆さんも、あのような(時間を引き延ばすような)プレーが見たくてここに来たわけではないはずです。世界中のサッカーファンは、サッカーそのものが見たいのです。サッカーという競技を純粋に楽しみたいのです。怪我人も出ていないのに7分間もアディショナルタイムがあったことも疑問です。フラストレーションは溜まりますが、我々はコントロールできるところをコントロールしながら、我々のサッカーを表現することに集中していきたい」

 時間稼ぎをした札幌への怨み節以上に、筆者が同意したくなったのは「サッカーファンは、サッカーそのものを楽しみたい」とのくだりだ。

 横浜FMファンのみならず、札幌ファンにも満足してもらいサッカーがしたいと言ったも同然の、まさに正論を、正面切って口にすることができる日本人監督は少ない。森保一日本代表監督が、勝利監督インタビューで口にするお決まりの台詞=「我々を応援してくださる人のために勝利を届けることができて嬉しい」と、つい比較したくなる。

 カタールW杯まで2ヶ月後。しかし、日本代表は世界のサッカーファンを満足させることができるかというコンセプトは忘れられがちだ。W杯はサッカーの品評会であり、スポーツの祭典である。日本のサッカーに関心がない人をこちらに振り向かす、またとない機会である。日本代表監督には、ケヴィン・マスカット的な一言を、さりげなく口にできる人物に就いて欲しいものである。

 W杯が近づくと日本はグループリーグを突破できるか、とか、何勝何敗かとか、話は成績に向きがちだが、サッカーは運が結果の3割を占めるとされる競技だ。日本は1998年フランスW杯これまでにW杯に6度出場し、計21試合戦っている。その一つ一つを振り返ることで、戦前の予想がどれほど無意味なことかを知ることができる。

 まさかの敗戦、すなわち番狂わせを喫したことはない。日本の立ち位置がブックメーカーの予想で2番手以内だったことはない。2002年の日韓共催W杯でも3番手だった。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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