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なぜ日本人のサッカー監督は、さも当然のように「守備固め」に走るのか。選手より心配な森保采配

杉山茂樹スポーツライター
(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

 4年半前、ハリルホジッチ更迭を受け、新監督に就任した西野朗氏は、ロシアW杯本大会までの間に唯一、国内で行われた親善試合対ガーナ戦を前に「3バックで臨む」と述べた。「これまで(ハリルジャパン時代)ずっと4バックで戦ってきて、3バックをやる機会がなかったので、本番までに1度やっておいた方がいいと思って……」が、その理由である。

 西野ジャパンは、ロシア入りする前にスイス、オーストリアに立ち寄り、スイス、パラグアイと調整を兼ねたスパーリングマッチを行っているので、西野監督に与えられた準備試合は計3試合に過ぎなかった。

 ガーナ戦はまさに貴重な一戦だったのである。代表監督としての初陣を兼ねたこの一戦に、なぜ3バックで臨むのか。大した動機を持ち合わせていないことは、「1度もやっていないからやっておく」という会見での言い回しに見て取れた。深い意味はないけれどやっておきたいもの。とりあえず抑えておきたいもの。試合に臨むに当たって、4バックと3バックの両方を用意しておくことが、西野監督の中では常識になっていた。

 3バックと一口に言っても守備的なものもあれば、攻撃的なものもある。だが、西野監督がガーナ戦で採用した3バック(3-4-2-1と3-4-1-2)は、一般的な日本人監督が好んで採用する5になりやすい守備的な3バックだった。

「4バックは攻撃的で3バックは守備的という認識がある」とは、かつて岡田武史元日本代表監督が口にした台詞だが、これは多くの日本人監督が共有する概念になる。4バックには守備的なものもあると言いたいが、この際、それは置いておくとして、西野監督はなぜ、攻撃的な4バックと守備的な3バックという、コンセプトが真逆な2種類の布陣を用意しようとしたのか。

 先日のアメリカ戦を見れば、おわかりいただけたと思う。森保監督は後半41分、活躍の鎌田大地と交代で原口元気を投入すると、布陣を4-2-3-1から5-2-3に変更。原口をその右ウイングバックとして起用した。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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