アナログな学び、つながりも楽しもう 【休校が長引くなか学校にできること(2)】

(好きな本を読んでレポートなどにしてみるのも立派な学びだ)(写真:アフロ)

 5月に入り、新型コロナウイルスの感染者が少ない青森県や鳥取県などでは、7日から学校が再開した。一方で「特定警戒都道府県」に指定された東京都などの13都道府県、加えて群馬、静岡、富山、広島などは、今月いっぱいの休校(臨時休業)を決めている(教育新聞5/7)。

 3月の全国一斉休校からカウントすると、5月中まで休校が延期されたところは、約3ヶ月に及ぶ。通常の夏休みの3倍近い長さだ。保護者としては、なにかと不安やストレスを抱えていることだろう。

(写真素材:photoAC)
(写真素材:photoAC)

 「宿題プリントをやっておくように」という連絡だけで、あとはほとんど学校から連絡はない(あっても電話一本くらい)、というケースもある。全国各地で対応はさまざまなので、十把一絡げにそう断じるつもりはないが、前回の記事で書いたように、公立も、私立も、休校中の子どもたちの学びをどう継続するか苦慮している(データから示唆される)。

 いわゆる”オンライン授業”が注目されているが、特効薬でも魔法の杖というわけでもない。オリジナルで配信する効果と負担の見合いで、やったほうがよいことはどんどん進めたらよいと思うが、どんな方法にも限界はあるし、子どもたちの学びはオンラインというかたちにとどまるものでもない。

■子どもたちの学びは、5教科だけじゃない

 さて、休校が長引く地域では、「学習の遅れが心配」、「家庭によって教育格差が広がるのでは」、「学校再開したところと比べて、勉強が遅れるのは不公平だ」といった声をよく聞く(わたしも何度もそう述べてきた)。だが、こうした議論でこれまで曖昧だったのは、「”学習”とか”学び”って、何を指しているの?」という点ではないだろうか。

 わたしは学習理論や心理学は専門外なので、粗削りであるとは思うが、きょうは、視点の整理のための、たたき台のひとつとしてお話ししたい。次の図をご覧いただきたい(図は筆者作成、以下特に断りがないかぎり同様)。

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 タテに4つ箱を用意した。子どもたちに学習してほしいこと、あるいは経験しながら育んでほしいことはたくさんあるが、ここではいったん、4つに整理する。

(1)基礎的な知識を習得する

  • たとえば、九九や漢字を習得する。
  • 教科書に載っている基礎となる知識を身につけること。

(2)探究的な学びを進める

  • 探究の定義は論者によってもやや異なるが、ここでは、解決の道筋がすぐには明らかにならない課題や、唯一の正解が存在しない課題に対して、最適解や納得解を見いだしていくことを重視する(高校の探究の時間に関する学習指導要領解説を参照した)。
  • ただし、(1)の知識を活用して、思考力などを高めていく活動全般として、探究を広めに捉える。
  • たとえば、なにか生物を飼って観察して、「どうしてこの生き物はこの色になったのだろう」という問いを立てて、子どもたちが自ら主体的に調べたり、考えたりしながら、答えを探っていく。あるいは、歴史上の興味のある出来事について、なぜそうなったのか考えてみる(たとえば、信長はどうしてあれほど領土を広げられたのだろう)。

(3)体を動かす、文化・芸術活動を行う

  • スポーツやトレーニングをしたり、絵を描いたり、作品をつくったり、鑑賞したりすること。

(4)関係性、つながりを保つ

  • 子どもたちは、なにかの教科を勉強しているだけではなく、他の生徒や先生と人間関係をつくり、そこからコミュニケーションなどのソーシャルスキルを学び、また、他人を思いやる気持ちなどを育んでいる。
  • 休校中は、教室のような人間関係は構築しづらい、リモートな場であるので、徳育までとはせず、つながりを保つという表現にした。

 この4つは一部重なり合うところもある。知識ゼロで探究的に学べと言われても、深いものにはならないだろうし、スポーツや芸術的な活動が探究的な学びになることも多々ある。

 わたしが問題提起したいのは、「学習の遅れが心配だ」といった、これまでのメディアなどでの論説、それから保護者の心配ごとは、(1)に少々偏っていたのではないだろうか、という点だ。

 もちろん、多くの学校で出されている、子どもたちの宿題には、美術や家庭科などもあって、必ずしも(1)、それも、いわゆる5教科(国・数・社・理・英)だけのものではない。とはいえ、ウェイトは5教科の(1)にかかっていた学校も多いのではないか、と推測する(調査していないので、断定はできないが)。

 よく指摘されるが、ここまで休校や外出自粛が長引くと、子どもたちの運動不足も心配だ。また、文化芸術的な活動は、家庭環境(家庭の教育力や経済力)によって差を生じやすいことが、教育格差の研究などでも以前から指摘されている。

 図書館など公共施設もずっと閉まっている、公園も遊具の感染が心配で使用禁止。安全は確かに大事だが、なんでも禁止して、シャットアウトする発想では、大人たちが子どもたちの居場所や経験・活躍する場をどんどん奪ってしまっている。

(筆者撮影)
(筆者撮影)

■問題は子どもたちの孤立、SOSが届きにくいこと

 「(4)関係性、つながりを保つ」という項目を起こしたが、心配なのは、学習面だけでなく、子どもたちの「孤立」だ。家族関係が良好なところはよいが、そうではないところでは、子どもの心的負担、居心地の悪さなどは高まっている。しかも、学校がないなかでは、子どもたちのSOSを、だれもキャッチできない状態が続いている可能性もある。

 この点で、家庭学習のケア・支援を保護者に求め過ぎることも、慎重であるべきだ。保護者の役割を大きくすると、親子の関係性が悪くなるケースもあるし、「さっさと宿題をやりなさい」と怒られ続けては、子どもたちの学習意欲にマイナス影響もある。管見のかぎり、文科省や教育委員会、学校で、こうした点への配慮はあまりなされていないように見える。邪推だが、そうした職員のなかには比較的家庭環境がよかった方たちが多いせいかもしれない。

(家庭任せでは、親子関係がぎくしゃくするケースも 写真素材:photoAC)
(家庭任せでは、親子関係がぎくしゃくするケースも 写真素材:photoAC)

 以上、いろいろ述べてきたが、「知・徳・体」とも言われるように、子どもたちのさまざまな点での成長が、家庭任せばかりでは、しんどくなっている可能性が高い

■アナログをバカにしてはいけない

 では、どうするか。先ほどの図でヨコの軸では「オンライン(ICT活用)」と「オフライン(アナログ)」と書いた。インターネットやクラウドサービスなどを活用して便利に進められること(前者)もあるし、昔ながらのアナログな方法で進められる学習等もある。

 次の図は、いくつか、子どもたちの学びを進める方法をリストアップしてみたものだ。もちろん、これ以外も多々あるだろうが、ひとつの目安、参考情報となればと思う。こうして列挙してみると、いわゆる”オンライン授業”だけが学習を進める手段、方法ではないことに気づく。

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 アナログでもできることは多い。たとえば、ある公立小学校では、「運動ビンゴ」というプリントを配っている。あやとび20回、二重とび5回、V字腹筋10秒、ひざつき腕立て15回など、各ミッションをクリアーすると、ビンゴのマスが埋まっていく仕掛けだ。ビンゴを目指してがんばる小学生も多いことだろう。

 こうしたちょっとした働きかけ、動機付けは、教師の役割として、とても重要だと思う。

 こういう事例もある一方で、あなたの知る学校ではどうだろうか?

 ひょっとすると、「プリントを配ってあとはよろしく」という学校では、ここに列挙したことの多くは、やっていないのではないか。

 ただし、勘違いしないでほしいのは、リストアップしたものをすべてやってほしい、と申し上げたいのではない。効果や負担との見合い(わたしは時間対効果が重要とよく申し上げている)、あるいは子どもたちの状況から、取捨選択してほしいし、子どもたち(学習者)自身が選択することがあってもいい。とはいえ、子どもたち、とりわけ家庭環境が厳しい子どもたちにとって、あまりにも選択肢が少ない場合は、問題意識を高めたほうがよいだろう。

 次の図は、宿題プリントを渡したきりで、あとはほとんどケア・支援がない学校の取り組みをイメージしたものだ。

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 上述したとおり、児童生徒本人任せ、家庭任せで、どこまで進むだろうか。あまり学習意欲がわかない子や直前にまとめて宿題をする子のなかには、ともかく答えを丸写ししておけ、というケースも出てくるかもしれない。また、(1)だけでなく、(2)、(3)、(4)の点でも学びが少ないのは心配だ。こうした危機感や問題意識を、休校が長引く学校はもっているだろうか。

■つながって、「こころの温度」を上げていく

 今回の原稿は、石井英真先生(京都大学准教授)の論考がヒントになっている。「いま学校にできることについて―遠距離恋愛のごとく子どもを想うことから―」から引用させていただく(ぜひ全文をご覧ください)。

今、学校の取り組みとして一番大事なことは、副題のフレーズでまとめられるでしょう。遠距離恋愛のごとく子どもを想うことから始め、心を通わせるために手を尽くす。それで子どもも保護者も教師も「こころの温度」を上げていく。

プリントだけ渡されて音沙汰がなく、保護者からは学校現場の苦労も見えず、不信感だけが募るという状況は一刻も早くなんとかしないといけないと思います。学校、特に公立学校への信頼がもとに戻せなくなるのではと心配しています。

公立学校の強みを本当に生かす上でも、それぞれの学校レベルでむしろアナログに、それぞれの子どもや家庭に丁寧に「安心」を届ける取り組みが大事なのではないでしょうか。たとえば、文通のようなやり取りから始めたり、「あのね帳」的に子どもたちの日記や作文を集めて文集にして、学級通信の紙の上での交流を重ねたりする。通信添削のように、ドリル的な課題も添削して花丸や一言コメントをつけて返したり、数問程度、考える過程を表現する問題に取り組むように促して、その考え方をプリントにまとめて紹介したりする。オンラインでなくても、リアルタイムでなくても、まずは紙の上で、教師と子ども、子どもと子どものつながりも作っていけるのではないかと思います。

 遠距離恋愛のときの文通みたいに、と言われても、携帯・スマホ世代の方にはピンと来ないかもしれないが、うまい喩えだと思う。オンラインだと、たとえば、ロイロノートやGoogleのClassroomなどを使って、効率的にコメントを返したり、花丸を付けたりもできるだろうから、ICTの活用は有効だと思う。だが、アナログでもできる選択肢はたくさんある。

 石井先生があげている例のほかには、妹尾の整理で(3)や(2)に関連する、芸術活動を通じた探究的な学びなどは、アナログのほうがやりやすい部分もある。一例として、新型コロナの影響で、自分にとって「大切なもの」について、再考した方も多いのではないだろうか。絵でも粘土でも彫刻でも、あるいは映像などでもいい、そうしたテーマで、生徒と先生の作品展をやってみたりするのも、おもしろいかもしれない。一度に集まるのは感染リスクが高い場合は、複数の日を設定して、バラバラと学校に来て、展示品を鑑賞していけばよい。

 こうした活動を行うには、休校中は自由な時間が多いわけだから、チャンスでもある。ただし、繰り返すが、教師からの働きかけや支援がないと、厳しい子どもたちもいることには留意しながら。

 また、3密を避けるかたちで、休校中であっても、たまには校庭で接触の少ない運動をするのも、子どもたちの交流にもなるし、よい影響が多いように思う。わたしとしては、ぜひ5教科の先生だけでなく、体育や芸術、技術家庭科等の先生たちからの発信や働きかけが増えてくれるといいな、と思う。既にさまざまな努力をされている方もたくさんいらっしゃるので、そういう事例を共有できるとなおいいと思う。

 付言すると、分散登校ができるかどうかは、地域の感染状況などにもよると思うので一概には言えないが、分散登校をする場合も、(1)~(4)のうち、どこの働きかけや支援、学習を行う時間に使うのか、よく企画したほうがよいと思う。

 ぜひ幅広い視点、視野から、子どもたちの学びの場を増やしてほしい。休校中だからといって、立ち止まってばかりいられない。

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◎妹尾の記事一覧

https://news.yahoo.co.jp/byline/senoomasatoshi/