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米国ニュージャージー州の町で「歩きスマホ」禁止の法案提出『歩行者も安全に気をつける責任がある』

佐藤仁学術研究員・著述家
(Maplewood, New Jersey)

ホノルルでの「歩きスマホ」禁止に感化されて

 日本だけでなく、アメリカのあらゆる所でも多くの人が「歩きスマホ」をしており、交通事故やトラブルが絶えない。日本だけでなく、世界中で「歩きスマホ」による事故やトラブルは問題になっている。アメリカでは2016年には、歩行中の事故で死亡した人が5,997人で、1990年以来最高の人数だった。原因の1つが「歩きスマホ」だ。

 ニュージャージー州のメープルウッドという小さな町で、道路横断中の「歩きスマホ」を禁止する法案が2018年1月に提出された。まだ法案は可決していないが、違反した場合は、罰金が科せられる内容になっている。具体的な罰金額などはまだ決まっていない。

 ニュージャージー州のメープルウッドで「歩きスマホ」禁止の法案を提出した議員のNancy Abbott氏はハワイのホノルル市で2017年10月に「歩きスマホ」禁止の条例が施行されたことに影響を受けたと述べている。ホノルルでは道路横断中に「歩きスマホ」を禁止しており、違反すると罰金を科される。

「特にZ世代は気をつけて」

 Abbott氏は「自動車の運転手だけが安全に気をつけるのではいけない。道路を歩く時には、歩行者にも安全に気をつける責任がある。歩行者と自動車の運転手がアイコンタクトをしながら、お互いが安全を確認しながら道路を横断すべきだ」と注意喚起を促している。

 自動車を運転している人にとって「歩きスマホ」をしている人は非常に怖い存在だ。「スマホばかり見ているが、ちゃんと自動車の存在に気が付いているのだろうか」と心配になる。そして「歩きスマホ」をしている人はスマホに神経も目も集中しているにもかかわらず「自分だけは大丈夫。ちゃんと周りも見えている」と思い込んでいる。そして神経がスマホに集中しているため、車と遭遇した際に咄嗟の判断と瞬時の行動ができずに、事故に巻き込まれてしまう。しかも最近ではイヤホンをしながら「歩きスマホ」をしている人も多い。耳から聞こえる音は、周囲の危険を察知するのにとても重要なため、イヤホンをしてさらにスマホを見ながら歩くことは非常に危険だ。

 また、Abbott氏は「自動車運転中のスマホ利用は既に禁止されている。今回の『歩きスマホ』禁止の法案は、特に『Z世代』と呼ばれる若い世代(1990年代から2000年代に生まれた世代)に、安全のためにも道路を歩く時にちゃんと上を見て歩いてほしい」とコメントしている。もちろん「歩きスマホ」が禁止の対象となるのは、Z世代だけでなく全ての人々である。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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