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数字だけでは分からない。現場取材でみえた2023年のマンション、一戸建ての市況予測

櫻井幸雄住宅評論家
2023年、高騰する都心マンションの価格はどうなるのか。筆者撮影

 新しい年2023年、マンション、一戸建ての売れ行きはどうなるか……新規販売戸数や契約率、在庫数、金利の見通しなどからいろいろな予測が試みられている。

 しかし、数字に裏付けられた「予測」が必ずしも正しいわけではない。

 たとえば、2022年後半、首都圏では中古マンションの成約率が低下してきたことから、2023年にマンション価格全般が下がる、という予測が出ている。

 東日本レインズの調べによると、2022年10月、首都圏の中古マンション成約率は前年同月比で10.7パーセントの下落。比較的下落率の低い東京都区部でも3.1パーセントの下落だ。

 中古マンションの価格はコロナ禍にあっても上昇を続けていた。その売れ行きに陰りが出たので、来年2023年はマンション価格全体が下がるだろうというわけだ。

 本当に、そのようなことが起きるのだろうか。

 じつは、中古住宅取引の現場を歩いて取材すると、「まだまだ売れ行き好調」の声が多い。売り物件が少なく、出せば売れる状況が続いている。

 ただし、一部に売れない物件が出始めているのも事実。だから、成約率が下がっているのだ。

 では、現在の中古市場で「売れない物件」とは、どんなものなのか。

 それは、売値が強気すぎる物件である。「中古マンションが高値で飛ぶように売れている」というニュースが広まったので、相場より高い値段を付けて売り出されてしまう物件が出るようになった。

 たとえば、近くで築10年の中古マンションが4500万円で売れたのを見て、築45年の中古マンション住戸を同じ4500万円で売ろうとする。

 不動産仲介会社が「そんなに古くては住宅ローンを組みにくいので、2000万円くらいが妥当」と説明しても、納得しない。そして、案の定、買い手がつかない。

 強気の価格設定をする中古マンションが出るのは、高く売れないと次のマイホームが買えない、という事情もあるのだろう。

 平成バブルのときは、そんな「無茶な価格設定の中古」も飛ぶように売れた。「とりあえず高めの価格にしておき、内見に来たら、価格を下げよう」と待ち構えていたら、内見もせず(なので、価格も下げず)に成約してしまった、というのがバブル期の出来事だった。

 今は「バブル超え」と表現されることがあるのだが、当時のような市場の狂乱ぶりはない。

 中古マンションが勢いよく売れていても、「どんな物件も」「どんな価格でも」売れているわけではない。その状況下で無茶な価格設定の中古物件が出てきたため、一部に売れない事例が生じた。それが、成約率低下の内情である。

 価格が高すぎる中古物件は、どうしても売りたければ価格を下げる必要がある。しかし、「その価格で売れなければ、買い替えができない」という人の多くは、買い替え計画全体をあきらめてしまう。つまり、売却を取りやめる。

 価格を下げることなく、物件を取り下げるわけで、成約率の低下がそのまま価格下落に結びつくとは限らないわけだ。

 結論として、中古物件の成約率が低下したといって、首都圏のマンションが値下がりするとは言えない。

 以上のように、住宅の販売現場を歩き、そこから得た情報を基に、2023年の住宅市況を予測してみたい。そこには、よい話とわるい話があって……。

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住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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