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首都圏混雑路線がコロナ禍で乗車率低下。反比例でマンション人気が上昇している場所とは

櫻井幸雄住宅評論家
テレワークの広がりで、ラッシュ時の混雑度は軒並み緩和。それに伴って……(写真:イメージマート)

 コロナ禍でテレワークやリモート授業が増えたおかげで、鉄道会社の収益が悪化している。お気の毒な状況ではあるが、一方で利用者には「通勤ラッシュ時の混雑度緩和」という恩恵をもたらしている。

 その結果、以前ならば、「朝の電車が混む」ことで敬遠されがちだった路線で、新築マンションの人気が上がり、中古マンション価格が上昇する、という動きが出ている。

 ちなみに、首都圏で朝のラッシュ時、混雑度が高い路線として有名だったのは、東京メトロ東西線やJR埼京線、そして東急田園都市線など。それらの路線では、コロナ禍が続く今、混雑度がどれくらい下がったのか。そして、マンション市況にどのような影響を及ぼしているのか。

 数字を挙げて検証した。

首都圏の混雑度は軒並みダウンで、余裕の通勤に

 2020年以降、ラッシュ時の混雑が緩和されていることは、国土交通省が毎年発表している「都市鉄道の混雑度調査」でも明らかだ。

 まず、コロナ禍が起きる前はどれくらい混雑していたのか。2019年7月に国土交通省が発表した「都市鉄道の混雑度調査2018年度」を調べてみた。

 データによると、首都圏で混雑度がひどかったワースト10路線は200パーセント近い混雑度を記録していた。

1位東京メトロ東西線(木場→門前仲町)199パーセント

2位JR横須賀線(武蔵小杉→西大井)197パーセント

3位JR総武線緩行(錦糸町→両国)196パーセント

4位JR東海道線(川崎→品川)191パーセント

5位日暮里・舎人ライナー(赤土小学校前→西日暮里)189パーセント

6位JR京浜東北線(大井町→品川)185パーセント

7位JR南武線(武蔵中原→武蔵小杉)184パーセント

8位JR埼京線(板橋→池袋)183パーセント

9位JR中央線快速(中野→新宿)182パーセント

9位東急田園都市線(池尻大橋→渋谷)182パーセント

 ちなみに、混雑度180パーセントというのは、「席に座れず立っている人の体がふれあう程度だが、新聞は読める」ような状況とされる。

 それが200パーセントになると、「体が触れあい、相当に圧迫感があるが、週刊誌程度ならなんと読める」状態に。さらに、混雑度250パーセントになると、「電車が揺れるたびに体が斜めになり、身動きができず、手も動かせない」状態……混雑度250パーセントの混雑度はいくつかの路線で起きていたという気がするのだが、国土交通省の調査では200パーセント近くまでで収まっていた。

 それでも、十分に過酷といえるだろう。

 その混雑度は、コロナ禍でどのように変わったのか。

 今年7月、国土交通省から発表された「都市鉄道の混雑度調査2021年度」の数字は驚くべきものだった。

混雑率が大きく下がった路線では、ほぼ半減状態

 2021年度の混雑率は首都圏全域で大きく下がり、混雑率が130パーセントを超えたのは次の4路線のみとなった。

1位日暮里・舎人ライナー(赤土小学校前→西日暮里)144パーセント

2位JR武蔵野線(東浦和→南浦和)137パーセント

3位JR埼京線(板橋→池袋)132パーセント

4位都営三田線(西巣鴨→巣鴨)131パーセント

 2018年度は200パーセント近い乗車率だったのが、最高でも144パーセントで収まっている。

 かつて上位の常連だった東京メトロ東西線、JRの総武線、東海道線、京浜東北線、埼京線も軒並み混雑度が低下していた。

 たとえば、コロナ禍が起きる前、混雑度199パーセントだった東京メトロ東西線は128パーセントに、混雑度183パーセントだったJR埼京線は132パーセントに、混雑度182パーセントだった東急田園都市線は112パーセントまで下がった。JR東海道線にいたっては、2018年度に混雑度191パーセントだったのが104パーセントまで低下。87ポイントもダウンし、乗客数は2018年度のほぼ半分という状況である。

 混雑度150パーセントは「立っている人の肩が触れあう程度で、新聞は楽に読める」程度とされる。混雑度100パーセントになると、ほぼすべての人が座るか、つり革・手すりにつかまることができる状態となり、首都圏全域で、朝のラッシュ時、混雑度は大幅に低減されたことが分かる。

 この程度の混雑度ならば、地下鉄東西線や埼京線、東急田園都市線沿線に暮らす際の懸念点が1つなくなる。そうなると、路線によっては「意外に都心に近く、それでいてマンション価格が抑えられている」という特徴が際立つことになる。

 実際、コロナ禍が起きた後、地下鉄東西線沿線の西葛西駅や葛西駅最寄りで、売れ行き好調の新築マンションが続発している。

具体的なマンション名を挙げると……

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住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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