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朝鮮半島で本当に戦争が起きるのか? 米韓が憂慮する「3つの不安要因」

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
米韓合同空中演習(米韓連合軍司令部配信)

 朝鮮半島「反乱の3月」の幕が開けた。

 米韓合同軍事演習「フリーダムシールド(自由の盾)」が今日(4日)から11日間の日程で始まる。

 米韓連合軍司令部と韓国軍合同参謀本部が発表した演習日程では昨年に続き、野外機動訓練が地上、海上、空中で多様な形で実施され、その回数も48回と、昨年(23回)よりも約2倍も多い。今年は北朝鮮の巡航ミサイルを探知、攻撃する訓練も含まれている。また、演習は通常の1部(防御)と2部(反撃)に分けず、統合し、最終日の3月14日まで24時間休まずに連続的に行われることになっている。

 昨年は米原子力空母をはじめ、原子力潜水艦、迎撃ミサイルシステムを備えたイージス艦、「B-1B」と「B52」の2種類の核戦略爆撃機、「F-22」や「F-35B」などのステルス戦闘機、アフガン戦争に投入された米国が誇る無人攻撃機「グレイイーグル」(MQー1C)が投入され、大規模で実施された。

 今回、訓練に動員される米韓連合軍の数を含む戦力の詳細はまだ明らかにされていないが、昨年よりも拡充され、空母や戦略爆撃機など戦略資産も投入されるものとみられる。

 今年は年明けから米国の対北核交渉担当官だったロバート・ガルーチ米ジョージタウン大学名誉教授や米ミドルベリー国際研究所のロバート・カーリン研究員とスタンフォード大学のジークフリード・ヘッカー博士、それに米シンクタンク・アジアソサエティのダニエル・ラッセル副会長らが相次いで第2次朝鮮戦争勃発の可能性を指摘し、米紙「ニューヨーク・タイムズ」(NYT)は1月25日付に複数の当局者の話として「北朝鮮、今後数か月内に韓国に致命的な軍事行動の可能性がある」と報じていたが、その第1の関門がこの米韓合同軍事演習期間中である。

(参考資料:鎮静化しない米国内の「朝鮮半島戦争勃発説」 「軍事衝突は避けられない」が大勢)

 北朝鮮は4日午前10時現在、公式反応を出していないが、米韓の軍事作戦には▲北朝鮮のミサイル発射兆候を探知、先制攻撃する▲発射されたミサイルを迎撃する▲攻撃されたら指導部などに報復攻撃を行うなどの3軸体系になっていることから「先制攻撃のための演習」とみなすことは間違いない。当然、反発し、対抗措置を取るであろう。では、軍事的緊張が高まれば、本当に戦争が、軍事衝突が発生するのだろうか?

 これまで米韓で議論されている北朝鮮の挑発による戦争勃発の可能性、あるいは軍事衝突発生の可能性について主な根拠として以下の3点が挙げられている。

第一に、金正恩総書記の度重なる「戦争発言」

 金正恩(キム・ジョンウン)総書記は昨年12月の党中央委総会で「戦争という言葉はすでに我々には抽象的な概念ではなく、現実的な実体として迫っている」と発言したほか、今年1月にも8日から9日にかけて視察した軍需工場で「戦争を避ける考えはまた全くない」と発言し、また最高人民会議の場(15日)でも「朝鮮半島で戦争が起こる場合は、大韓民国を完全に占領、平定、収復し、共和国領域に編入させる問題を反映することが重要である」と好戦的な発言を繰り返していた背景がある。

第二に、南北軍事合意の全面破棄とNLL(北方限界線)の無効化

 南北間で2018年9月に交わされた「地上と海上、空中をはじめ全ての空間で一切の敵対行為を全面中止する」ことや「軍事境界線(MDL)から5km以内で砲兵射撃訓練および連隊級以上の野外機動訓練を全面中止する」ことが盛り込まれた「南北軍事合意」が白紙となり、「海の軍事境界線」と呼ばれていたNLLも無効化されたことだ。

 金総書記は「我が国家の南の国境線が明白に引かれた以上、不法無法の『北方限界線』をはじめとするいかなる境界線も許されず、大韓民国が我々の領土、領空、領海を0.001ミリでも侵犯するならば、それはすなわち戦争挑発と見なす」と宣言したが、NLLでは過去に4度、「海戦」と呼ばれる艦艇の衝突があった。今月から風が南から北に向かって吹くことから韓国の脱北団体は北朝鮮に向けてのビラ散布を計画しており、5月に入ると「海戦」の原因となった渡り蟹のシーズンが到来する。

第三に、北朝鮮のICBMの正常角度での発射と7度目の核実験

 今年は北朝鮮の国防発展5か年計画の4年目となるが、北朝鮮はこれまでにまだ一度も大陸間弾道ミサイル(ICBM)を正常角度で発射したことがない。金与正(キム・ヨジョン)党副部長は一昨年12月に「高角発射(ロフテッド)だけで立証できないと言うならば実際の角度で発射すればわかることだ。(正常角度の発射を)やれば直ぐにわかることだ」と、正常角度の発射を予告していた。現実となれば、米国のレッドラインを越すことになる。

 また、昨年3月27日に金総書記が核兵器研究所を訪れた際に「核兵器保有量を幾何級数的に増やせ」と命じていたことから核実験を行う公算も高い。仮にトランプ前大統領が11月の大統領選選挙で当選し、来年トランプ政権が発足すれば、こうした大量破壊兵器の実験はやりにくいだけにその前に駆け込み的に強行する可能性は十分考えられる。

 しかし、こうした不安要素があるもののその一方で、「戦争にはならない」というのが韓国の世論で、その根拠としては▲過去にも北朝鮮は戦争危機を煽ったが、現実とはならなかった▲北朝鮮が本気で戦争する気ならばロシアに武器を売り渡さない▲戦争すれば、5万世帯の住宅建設など「5か年経済計画」の破綻に繋がる▲全面戦争となれば、金正恩政権にとどまらず娘の「ジュエ後継体制」も地球上から消えることになる等の4点が挙げられている。

参考資料:朝鮮半島「波乱の3月」 米韓合同軍事演習に北朝鮮の反発必至!

参考資料:昨年は北朝鮮のミサイル発射で、今年は韓国の軍事演習で1年が始まった!南北の対立は「最後まで行く」?)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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