Yahoo!ニュース

朝鮮半島「波乱の3月」 米韓合同軍事演習に北朝鮮の反発必至!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
昨年3月の労働党中央軍事委員会(労働新聞から)

 明日から朝鮮半島で軍事衝突勃発の可能性が取り沙汰されている3月に入る。

 米国やロシア、あるいは中国のみならず韓国でも「戦争が起きる、起きない」「軍事衝突が起きる、起きない」のキナ臭い議論が北朝鮮専門家や軍事問題専門家の間で活発に交わされているが、その最初の引き金が米韓合同軍事演習になりそうだ。

(参考資料:米国内で日々高まる「朝鮮半島クライシス」)

(参考資料:鎮静化しない米国内の「朝鮮半島戦争勃発説」 「軍事衝突は避けられない」が大勢)

 米韓連合軍は昨日(28日)、3月4日から11日間の日程で「フリーダムシールド(自由の盾」という名称の合同軍事演習を実施すると正式に発表した。

 米韓連合軍司令部と韓国軍合同参謀本部が発表した演習スケジュールによると、米韓連合軍は地上、海上、空中で多様な合同野外機動訓練を拡大実施するようだが、その回数は何と、延べ48回。昨年の23回よりも倍も多い。

 今回の訓練には空中強襲訓練、戦術実射撃訓練、空対空射撃・空対地爆撃訓練、サンメ訓練(大隊級空中訓練)などが含まれており、訓練期間中に「B―52」や「B-1B」など戦略爆撃機や原子力空母、さらに巡航ミサイル・トマホークを搭載できる原子力潜水艦など米戦略資産が投入されることが予想されている。

 ちなみに、昨年春の合同演習には「B-1B」と「B52」、原子力空母と原子力潜水艦の他に迎撃ミサイルシステムを備えたイージス艦、ステルス戦闘機「F-22」や「F-35B」、さらにはアフガン戦争に投入された米国が誇る無人攻撃機「グレイイーグル」(MQー1C)などが投入され、大々的に実施された。

 今回の演習はこれまでの1部「防御」、2部「反撃」のシナリオを一本化し、最終日の3月14日まで24時間休まずに進行される。

 米韓合同軍事演習を「侵略戦争」の準備と警戒する北朝鮮は当然、黙ってはいないであろう。

 実際に北朝鮮は昨年の軍事演習(3月13-23日)ではトランプ政権下で中断されていた合同野外機動訓練が5年ぶりに復活したこともあって演習開始6日前には金正恩(キム・ジョンウン)総書記の代理人でもある実妹の金与正(キム・ヨジョン)党副部長が談話を発表し、「米国の管轄権に属しない公海と空域で周辺諸国の安全に全く危害がなく行われる我々の戦略兵器実験に迎撃のような軍事的対応が伴う場合、これは言うまでもなく我が国に対する明白な宣戦布告と見なす」と警告し、9日には早くも6発の短距離ミサイルを人工の島の貯水池から同時発射して見せた。

 さらに妹の談話から4日後の3月11日には金総書記が党軍事委員会拡大会議を緊急招集し、「米国と南朝鮮(韓国)の戦争挑発策動が刻一刻重大な危険ラインへ突っ走っている現在の情勢に対処して国の戦争抑止力をより効果的に行使し、威力的に、攻勢的に活用するための重大な実践的措置を取る」として12日に潜水艦から戦略巡航ミサイル(SLCM)2を日本海に向け発射した。

 そして、米韓合同軍事演習が13日に本格的に始まると、翌14日に西部戦線の人民軍ミサイル部隊が戦術誘導ミサイルを2発発射し、16日には金総書記立ち合いの下、日本海に向けICBM「火星17」を発射した。

 高度6045km、飛行距離1000kmの「火星17」が69分飛行し、北海道の渡島大島の西方約250kmのEEZ外に落下したのはまだ記憶に新しい。

 さらに、北朝鮮は3日後の19日には核爆発制御装置と起爆装置の動作を検証するためとして衛星発射場のある東倉里から日本海に向け弾道ミサイルを1発発射したが、ミサイルには核戦闘部を模擬した試験用戦闘部が裝着されていた。

 合同演習終了前日の22日には巡航ミサイルを4発発射し、演習が終了したその日も新型水中攻撃型兵器(核魚雷)を発射していた。

 昨年の例から、北朝鮮が何もしないことはあり得ない。

 金与正副部長は昨年2月に「太平洋を我々の射撃場に活用する頻度は、米軍の行動の性格にかかっている」と発言していたことを考えると、ICBMの太平洋に向けての発射や軍事偵察衛星の発射、さらには昨年から取り沙汰されている7度目の核実験などもないとは言えない。

(参考資料:「金政権を終焉させる」「尹政権を全滅させる」と好戦的な発言を繰り返す南北首脳は「一卵性双生児」?)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

「辺真一のマル秘レポート」

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌ではなかなか語ることのできない日本を取り巻く国際情勢、特に日中、日露、日韓、日朝関係を軸とするアジア情勢、さらには朝鮮半島の動向に関する知られざる情報を提供し、かつ日本の安全、平和の観点から論じます。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

辺真一の最近の記事