日米韓の「北の対露武器供与」非難の翌日に北朝鮮が新型240mmロケット砲弾の検収試験射撃
祖父・金日成(キム・イルソン)主席の4月15日の誕生日に恒例となっていた宮殿参拝を欠かした金正恩(キム・ジョンウン)総書記が昨日(25日)第2経済委員会の傘下にある国防企業所で生産された新型240mmロケット(放射砲)砲弾の検収試験射撃に立ち会っていた。
第2経済委員会とは地下経済、即ち軍需産業を統括する機関で、軍需製品の企画から生産、貿易まで管轄している。
第2経済委員会には7つの総局があり、第1総局は個人携帯用火器と弾薬生産、第2総局は機械装備生産、第3総局は大砲生産、第4総局はミサイル及びロケット生産、第5総局は化学兵器生産、第6総局は通信装備生産、そして第7局総局は航空機生産及び導入を担当している。
軍需部門の党の責任者は2022年6月に軍需工業部長に就任し、政治局員候補から政治局員に昇格した趙春龍(チョ・チュンリョン)氏だが、実務部署の第2経済委員会は高炳賢(コ・ビョンホン)委員長が統括している。
金総書記の立ち会いの下、行われた試射では240mm砲の飛行特性と命中率、集中性の指標が評価され、どれも合格し、金総書記は「240mmロケット兵器システムは我が軍隊の砲兵力量を強化するうえで戦略的変化をもたらすであろう」と誇り、国防企業所に対して課せられた今年の軍需生産計画を間違いなく、質的に進めていくよう訓示していた。
北朝鮮は今年2月に「国防科学院が操縦ロケット砲弾と弾道操縦システムを新しく開発することに成功した」と発表していた。
北朝鮮の発表では、国防科学院が2月11日に実施した240mm操縦ロケット砲弾の弾道操縦射撃試験で命中性に対する評価と優越性の検証が行われた。その結果、国防科学院は「240mmロケット砲の戦略的価値と効用性が再評価されることになり、戦場で240mmロケット砲の役割が増大するであろうと確信した」としていた。今回、それを金総書記の前でテストし、最終的にゴーサインを得たことになる。
北朝鮮の240mm放射砲の射程距離は60~65kmである。軍事境界線(DMZ)から韓国の首都、ソウルまでの距離が60kmなのでソウル攻撃用であることは明らかだ。
北朝鮮は有事の際の戦争準備の一環として砲弾の開発、生産に拍車を掛けているが、同時に今では、それよりもロシアへの供与にウェイトを置いているようだ。
趙春龍・軍需工業部長は昨年9月の金総書記の訪露にも同行し、また今年1月の崔善姫(チェ・ソンヒ)外相の訪露にも随行し、プーチン大統領との会談では崔外相の右隣に座っていた。崔外相が北朝鮮代表団の団長だが、趙部長は党の位では政治局員候補の崔外相よりも格上の政治局員であり、金総書記を含め8人しかいない党書記でもある。
軍需産業の責任者の2度に亘る訪露は北朝鮮もロシアも否定しているが、対露武器供与を含む露朝軍事協力が目的であることは言うまでもない。
日米韓の3カ国は24日に定例の防衛実務者協議(DTT)をテレビ会議形式で開き、「北朝鮮の対露武器支援は国連安保理の制裁決議に違反する」と口を揃えて強く非難していたが、その翌日に北朝鮮が新型240mmロケット砲弾の検収試験射撃を行っているところを見ると、北朝鮮には「馬に念仏」のようだ。