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第3次世界大戦は始まっている? 朝鮮半島は大丈夫か!?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
韓国紙「ヘラルド経済」からキャプチャー

 今朝、韓国のメディアの記事をチェックしていると、韓国紙「ヘラルド経済」のインターネット版に掲載されたシン・ドンユン記者の署名入りの記事に目が奪われた。「第3次世界大戦は既に始まっている?」の見出しがショッキングだったからだ。

 「第3次世界大戦」については11月の大統領選でカムバックが噂されているトランプ前米大統領が「狂人(ジョー・バイデン米大統領)のせいで『第3次世界大戦』が起きるかもしれない」と度々口にしており、ロシアのプーチン大統領も大統領選挙で5期目を確保した後、ロシア、米国、NATOによるウクライナへの直接的な軍事介入による紛争について「本格的な第3次世界大戦まであと一歩のところまで来ていることは明らかな事実である」と述べていた。

 同紙によると、この衝撃的な言葉は外交専門家で人道対話センター(Center for Humanitarian Dialogue)の上級顧問であるマイケル・バティキオティス氏が米外交専門誌「ザ・ディプロマット」に寄稿したコラムの表題となっている。バティキオティス氏は北京で会ったロシアの外交政策専門家フョードル・ルキャノフ氏からこの言葉を聞いて、引用したようだ。

 ルキャノフ氏はバティキオティス氏に第3次世界大戦は核戦争に直接繋がりかねない単一の大規模戦争ではなく、世界の様々な地域での一連の戦争であると説明した模様だ。

 同紙はまた、国際紛争を分析・監視する多くの専門機関である「紛争地域・事件データプロジェクト(ACLED)」のデーターも載せていたが、それによると、世界の人口の半径5km以内に政治的暴力の現場があり、今年1月の時点で世界の6人に1人が軍事紛争にさらされている。政治的暴力の発生回数は2019年と比べると、22%も増加していた。

 戦争の暗雲が迫っていることから軍産複合体がより多くのお金を稼いでおり、世界の軍拡競争を研究する主要シンクタンクの調査では昨年の軍事費は過去最高を記録しているとのことである。ちなみに軍事費第1位の米国は昨年、前年比2.3%増の9160億ドルを支出したが、これは世界の軍事費の約40%に相当する。続いて、2位が中国(2960億ドル)で3位はロシア(1090億ドル)となっている。

 同紙は関連データーとして国際NGOである国際危機グループ(ICG)が特定した今年最も注目すべき重要紛争(10件)を載せていたが、その10件は以下の通りである。 

(1)ガザ地区戦争(イスラエルとパレスチナ武装勢力ハマスとの戦争)

(2)汎中東戦争(イランとイスラエルの相互本土攻撃、イスラエルと「抵抗枢軸」との軍事衝突)

(3)長期化するロシアによるウクライナへの全面侵攻

(4)ミャンマー軍事政権と反政府軍との内戦

(5)エチオピア内戦

(6)スーダン内戦

(7)西アフリカ・サハラ地域における軍事衝突

(8)ハイチ内戦の恐怖

(9)アゼルバイジャンとアルメニアの領土紛争

(10)米中の覇権争い。

 幸いというか、不思議なことに朝鮮半島はこのリストには含まれていなかった。しかし、同時に引用された紛争の危険にさらされている世界30の地域を1~3段階に区分した外交問題評議会(CFR)傘下の予防行動センター(CPA)の「2024年安全保障脅威優先調査結果」には朝鮮半島は昨年に引き続き、今年も計8つの地域からなる「レベル1リスク地域」に選定されていた。

 「CPA」はその理由として北朝鮮の核・ミサイル開発を上げ、「北朝鮮が核兵器や長距離弾道ミサイルの開発・実験を進めれば、危機が悪化する可能性がある」と指摘し、「緊急事態が発生した場合、軍事条約の下で米国本土とその同盟国を直接脅かす可能性があり、その結果、米国の軍事的対応につながる可能性が高い」と分析していた。

 筆者も韓国で政権が交代し、保守の尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が発足した時点から「戦争勃発に向けて時計の針が動いた」とみているが、今年に入って、米国の専門家の間でも急速に朝鮮半島での軍事衝突、戦争の可能性が論じられ、また主要メディアでも取り上げられ始められている。朝鮮半島で軍事衝突が起きる要素は主に3つである。

 第一に、南北首脳が「金政権を終末させる」、「尹政権を終焉させる」と好戦的発言を繰り返し、軍事演習を強化していることである。

 第二に、南北軍事合意が全面破棄され、NLL(北方限界線)が無効化され、朝鮮半島の安全ピンが外れたことである。

 第三に、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を正常角度で太平洋に向け発射もしくは7度目の核実験があるかもしれないことである。

 米国内で論じられている戦争勃発の可能性について韓国の多くの北朝鮮問題専門家は金正恩(キム・ジョンウン)政権は政権の終末に繋がるリスクを冒すことはしないと口を揃え反論しているが、筆者も含めて誰も紛争や戦争はあって欲しくないと願っている。

(参考資料:軍事衝突の危険を孕む「引いたら負け」の米韓対北朝鮮の「脅し合い」Ⅲ)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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