強い寒気が南下 冬の気象衛星画像は、離岸距離と小渦に注目
強い寒気の南下で日本付近は、「西高東低(冬型)の配置」となっています。現在の寒気の南下は西日本や九州北部で、九州地方では、5日は山地を中心に大雪となるおそれがあります。強い寒気の南下は北日本にも広がり、しばらく続きますので、今週は全国的に寒い一週間になりそうです(表)。
シベリアの寒気
冬のシベリア地方は、太陽光がほとんど当たらず、さらに放射冷却も加わり、冷たいシベリア高気圧が発生します。シベリア高気圧は、地表付近で特に冷たく、東シベリアでは1月の平均気温がー40度以下になるほどの低温をもらたします。これに対し、海が凍っていなければ、海面付近の気温はマイナスにはなりません。
シベリアに比べて暖かい千島近海からアリューシャン列島南部にかけては気圧が低くなりますので、日本付近の等圧線は、ほぼ南北に走り、東側で気圧が低く、西側が高いという「西高東低の気圧配置」になります。
そして、日本付近は北風や北西風が吹き、シベリアからの乾いた寒気が日本海に流れ込んできます。シベリアからの寒気にとっては、表面付近の水温が10度以下の日本海であってもお湯です。
そのため、湯気を上げて日本海を吹き渡り、日本海から熱と水分を吸収して積乱雲ができ、季節風に沿って日本に向かって移動してきます。
この時期の気象衛星画像の注目点は、日本海にある寒気の強さを示す筋状雲の離岸距離と、接近してきたら局地的に大荒れとなる小さな雲の渦の存在です。
離岸距離と小さな渦
シベリアからの寒気が強いほど、日本海に入ってすぐに積乱雲ができますので、筋状の雲の始まりと大陸との距離(離岸距離)が短くなります。
そして、その水分をたっぷり含んだ積乱雲が日本にやってきて、脊梁山脈によって強制的に上昇させられ、日本海側の地方に大雪を降らせます。また、筋状の雲の中に、雲の渦があると、この渦が陸地にかかったときに、陸地で大雪を観測することがあります。図1の中の丸印が、筋状の雲の中にある雲の渦です。
南下している強い寒気により、今週は西日本では平地でも雪の可能性があります。
今後、気象衛星から見た日本海で、発生している筋状雲の離岸距離が短かったり、小さな渦が見えたときは大雪に警戒が必要です。
平成18年豪雪
平成17年(2005年)12月から18年2月にかけて、北極地方の寒気が中緯度に南下しやすくなり、日本付近では強い冬型の気圧配置が断続的に現れています(図2)。
日本付近は昭和62年(1987)年以降、暖冬傾向が続いていましたが、20年ぶりの低温となり、雪雲が山地まで運ばれて山間部や内陸部で大雪となる山雪型の大雪となり、青森県酸ヶ湯で4メートル53センチなど、多いところで4メートルを超えています。
このため、屋根の雪下ろし等除雪中の事故や落雪、また、倒壊した家屋の下敷きになるなど、死者152名(新潟県32名、秋田県24名、北海道18名など)という甚大な人的被害が発生したほか、家屋の損壊や交通障害、電力障害等、多数の被害が発生しました。
このため、気象庁は「平成18年豪雪」と命名していますが、これは、昭和38年1月の豪雪「三八豪雪」以来2回目のことです。
黒潮大蛇行との関係は?
黒潮は、西日本の南海上を北上し、紀伊半島沖から東海沖を通って銚子沖から日本列島を離れて東進しますが、ときどき、紀伊半島から東海沖で大きく離岸し、東海沖で北緯32 度より南まで大きく離岸して流れる状態が続くことがあります。これを、黒潮大蛇行といいます。
「三八豪雪」のときは、黒潮大蛇行が発生中でした(大蛇行期間は昭和34年(1959年)~昭和38年(1963年))。
そして、「平成18年豪雪」のときも黒潮大蛇行(平成16年(2004年)7月~平成17年(2005年)8月)が終わった4ヶ月後から豪雪が始まっていますので、ほぼ黒潮大蛇行期間です。
気象庁と海上保安庁は9月29日に、暮らしを直撃する黒潮大蛇行が12年ぶりに発生したと発表しました。8月下旬から黒潮が紀伊半島から東海沖で大きく離岸し、東海沖で北緯32 度より南まで大きく離岸して流れる状態が続いているので、平成17 年(2005 年)8 月以来12 年ぶりに大蛇行になったという内容です。
そして、現在も続いています。
黒潮大蛇行と豪雪と関係があるかどうかは、はっきりしていませんが、気になります。