晴天域のゴールデンウィーク後半 気圧が高いと晴れることが多く、急に低くなると嵐
晴天域のゴールデンウィーク後半
令和6年(2024年)5月4日のみどりの日は、大きな移動性高気圧におおわれて気圧が高くなり、南西諸島や九州南部で曇りや雨の所がありましたが、広い範囲で晴れて気温が上昇しました(タイトル画像)。
朝方は少し冷え込んだため、最低気温が0度未満の冬日が33地点(気温を観測している914地点の約4パーセント)ありましたが、日中の日射によって気温が上昇し、最高気温が30度以上の真夏日が22地点(約2パーセント)、25度以上の夏日が488地点(約53パーセント)もありました(図1)。
5月5日のこどもの日は、東シナ海で低気圧が発生し、西日本では次第に雲が広がってくる見込みです(図2)。
しかし、関東から東北南部では暖気の流入と強い日射により真夏日の所が多くなり、全国では85地点位(約9パーセント)で真夏日となる見込みです(図3)。
この真夏日が85地点というのは、今年最多です。
ただ、西日本では平年並みの気温にとどまることなどから、夏日については、5月4日と同じく、4月28日の521地点(約57パーセント)には、わずかに届かないと思われます。
とはいえ、今年のゴールデンウィークは、記録的な暑さで始まり、記録的な暑さで終わったといえそうです。
今年の気温の変化傾向
今年の東京の最高気温と最低気温の変化傾向を見たのが、図4です。
最高気温は、1月は平年より高い日が多く、下がってほぼ平年並みでした。2月は、20日に23.7度という記録的な暖かさとなったあと、23日には4.0度まで一気に寒くなるなど、寒暖差が大きくなっています。
寒暖差が大きい傾向は3月以降も続き、3月31日には最高気温が28.1度と、あとわずかで最高気温が30度以上の真夏日となるところでした。
最低気温も、最高気温と同様に、平年より高い日が多く、下がってほぼ平年並みとなっています。
最高気温・最低気温ともに、5月1日から2日は平年並みでしたが、3日以降は平年より高くなる見込みです。
ゴールデンウィーク明けの5月7日は、低気圧が発達しながら通過し、気圧が低くなって雨の日が続き、5月9日の最高気温が20度と平年より低くなると予想されています(図5)。
ただ、それ以外は気温が平年より高くなり、夏日が続く予報となっています。
降水の有無の信頼度が5段階で1番低いEや2番目に低いDが多い予報ですが、すでに初夏の気温と言えそうです。
気圧が急に低くなると嵐
気圧の観測は、現在は電気式気圧計を使い、大気の静電容量の変化から求めていますが、少し前までは水銀気圧計を使っていました。
これは、片方の口を閉じた長さ1メートルほどのガラス管に水銀をいっぱい入れ、逆さにして下端を水銀槽の中に入れると、水銀柱は、水銀槽の表面から、高さ約76センチのところで静止することを利用したもので、最初に作られたのは、今から約400年前の1643年にイタリアの物理学者、エヴァンジェリスタ・トリチェリによってでした(図6)。
水銀の密度は1立法センチ当たり13.6グラムなので、76センチの水銀柱の重さに相当する力となると、1平方センチ当たり、約1000グラム(13.6と76の積)となります。
手のひらくらいの100平方センチでは、100キロの重さが加わっていることになりますが、私達が重さを感じないのは、人間の体内の圧力が外の気圧と同じからです。
気圧は僅かですが、時々刻々と変わること、気圧が高くなると晴れる傾向があり、逆に低くなると雨の傾向があることは、トリチェリが水銀気圧計を作るとすぐにわかりました。
ただ、このような気圧と天気の関係は、あくまで目安でした。
今年の5月4日から5日も、気圧が高くなるので晴れる所が多くなりますが、気圧が高くなる所が全て晴れるわけではありません。また、6日以降気圧が低くなって雨が降る所が多くなりますが、気圧が低くなる所が全て雨が降るわけではありません。さらに、冬の日本海側の地方のように、シベリア高気圧が強まることで気圧が高くなると雪や雨が降り、シベリア高気圧が弱まることで気圧が低くなると晴れるいう逆の関係まであります。
しかし、気圧が急に低くなると、必ず、すぐに嵐が来ることがわかったことは大きな出来事でした。
直前とはいえ、嵐がくることがわかれば様々な防災対策がとれます。
このため、世界の海を航海する船には気圧計が搭載され、気圧が急に低くなるかどうかを監視することで、航海の安全を支えました。
そして、世界各地で行われた気圧の観測データの蓄積から天気図が作られ、気象学が発展し、嵐の原因が台風や発達した低気圧であることがわかったのです。
現在は、気圧の急変に頼らなくても、嵐の原因となる台風や発達した低気圧の存在が、気象衛星等の観測で直ちにわかり、数値予報というコンピューターを用いた手法で、1週間先までの嵐の予報ができる時代となっています。
このような気象学の大きな発展は、気圧計の誕生と「気圧が急に低くなると嵐」という発見から始まっています。
タイトル画像、図3、図5の出典:ウェザーマップ提供。
図1、図4の出典:ウェザーマップ提供資料を基に筆者作成。
図2の出典:気象庁ホームページ。
図6の出典:饒村曜(平成12年(2000年))、気象のしくみ、日本実業出版社。